新規法人や事業向けの採用をしていて思うのだが、いろいろと突っ込んで話を聴いてみると凄いスキルを持ってたりする人がいて、「なんでそれを最初に言ってくれないの?」という機会が多いので。

 ああ、もちろん世渡りだとか、要領の良さってものがあるのは分かっているし、それが本人の能力とは必ずしも連動しないパラメータだから、結果として凄そうな話をされるけど雇ってみたらさっぱり、ということはあるかもしれない。

 しかも、凄いスキルってのは本人の性格や才能に加えて、スキルを磨き研鑽していくための場や機会、良い書物や師匠、友達ってのがあるので、凄い人は凄い人と良く繋がっている、という意味で「凄い人ネットワーク」みたいなものが稀にある。そういうところに突っ込んでいければ、口下手すぎて気づかなかった凄い能力に触れることができたりもするのだろう。
 でも往々にして、そこそこだけど自己アピールが出来る人と、口下手だけど技術が凄い人とはプロジェクトでぶつかる。コストや納期や品質といった要素をどの順番でしっかり満たしていくのか事前に調整し、何度も説明して立ち上げたプロジェクトであっても、あるいは社員と下請けというような立場や身分の違いがあったとしても、ぶつかるもんはぶつかる。

 普通に話を聴いただけじゃ、だいたい口がうまいほうが勝つ。周囲に意見を聴いてもやはり口がうまい人の提案した方針や方法が採用されることがとても多いんだけど、そういう人はその場でうまく説明するだけじゃなくて、いろんな根回しをしたり、それなりの期間で築き上げた人間関係に基づく損得勘定に訴えかけるのがうまいんだ。劣勢のプロジェクトだと、「自分がいかに可哀想な立場にいるのか」という説明をして、周辺の同情と同意を取り付けるのが実にうまい。仮に、その問題が、実は本人の力量不足によるものだったとしても。

 ソフトウェア開発であれ投資事業であれ、そういう対人スキルと業務をこなすスキルは当然連動しないから、組織の中の人たちが良いといっても、そのプロジェクトが満たすべき要素に到達できないようであれば、プロジェクトを管理したり会社を経営する人としては「NO」を言わなくちゃならないことが多い。これは、結構しんどいこどだ。でも、そうしないと利益も出ないしプロジェクトもお客様が満足する形で着地しないことが多いんだよ。

 で、一番困るのは、重要な事案の決定権者である私の首を縦に振らすためのノウハウを、組織なり外注さんなりが蓄えて、それでぶつけてくる機会が増えること。これがまた、うまい具合に低い方向に水が流れるように話を持ってくるんだよなあ。

 確かに、モノを作るには楽なほうが制作者としてはいいんだろうけれども、同じ期間に予算に納期を抱える案件において、うっかりした妥協がどれだけプロジェクトにダメージを与えるのか、投資案件の回収率を下げるのか、そういうことに頭が回らないのかもしれない。予算は5億ですよ、200万ぐらいの追加予算は必要経費じゃないですか、誤差じゃないですか、このぐらいの投資は必要です、というようなもっともらしい理由が必ずついてくる。

 でも結局、プロジェクトの採算を継続的に高く保つ秘訣ってのは、市場動向や技術と誠実に向き合っている、どっちかっていうと静かな人々の話をじっくり聴くことなんだろうなあと。もっというと、ある種のお世辞やおべっかからもっとも縁の遠い、処世にそもそもの関心を持たないような人が、やっぱり組織の中心にいないとだめなんだなあと。

 まあ、私もうまい話にいろいろ過去乗せられて失敗したり、それ相応に嫌な経験をしつつ、でも自分の手のひらを良く見てみると結果として昔から実直に取り組んできたことばかりが芽を出してくれたことでいまの自分がある、というのは良く分かっているので、社会とはそういうものなのだという実感があるんですけれども。

 そういうわけなので早くGREEとDeNAはスマホ時代の波に飲まれて大変なことになっていただきたく、ついでにmixiも巻き込まれて壮絶な消耗戦のうえ壊滅していただきたいと存じます。とりあえずスマホ広告の相場を荒らさないでくれ。頼むから。