というわけで、米国債の格下げが不美人投票の現状に強い拍車をかけております。あんまり本業にかかわることはブログには書くまいと思うものの、さすがにこれは、という感じになってまいりました。

 正直、週明けからどんな話が出てくるのか気になってしょうがないわけですが、事実としてはやはり「またひとつ、タガが外れた」状態であって、過剰流動性が逆流して、長く続いた世界経済の安定的拡大は終わり、盛大なばば抜きタイムに突入するんだろうなあと思うところであります。

 Tailriskと言ってしまえばそれまでなんですが、エネルギーにせよITバブルにせよ、確実な世界的需要の増加を背景に資金を吸い込み続けてきたところは当然大きな調整が起きるでしょうし、大恐慌みたいなビッグクランチになるかどうかは分からないけどただ確実なことはEUも中国もUSももう持たなくて互恵的な関係を維持するための温和な顔はできなくなっているという側面はあるのでしょう。

金融緩和の強化について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf
 いろいろとどうしようもない話が続くわけですけれども、米国債の利下げの話が出ましたので、これは触れずにはおられなかろうと。

 いや、実質的には「いまさら米国債がAAAだと思って取引してる奴らは自分の意志で行動できないIBのマネージャーだけだろ」という話でもあるのですが。

為替介入:政府・日銀、円売り単独 欧州中銀総裁が批判
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110805ddm008020060000c.html

 原文を読んで気が滅入るわけですけれども、介入までにどんだけ下ごしらえしたと思ってるんだよ的側面があるのと、根回ししてなお批判されるんだったらengagementを考え直す局面に来るよねという話でありまして。で、格下げ。

China bluntly tells U.S. to end its ‘addiction to debts’
http://www.washingtonpost.com/world/asia-pacific/china-bluntly-tells-us-to-end-its-addiction-to-debts/2011/08/06/gIQABGJ9xI_story.html?tid=sm_twitter_washingtonpost

 輸出なしに経済の拡大ができないお前が言うなという側面ではあるのですが、アメリカが債券を発行し続けて世界経済というか流動性が増え続けて、それを中国が国策として吸い上げ続けて経済拡大を現実のものとしてきたわけですから、本来的にはアメリカ経済は引き続き借金ジャンキーであり続けて欲しい、ただし破綻しない程度に、というのが本音でありましょう。

 それにしても、国レベルでアクティビストというのは久しぶりに見ました。中国自体は国家としての財務指標を正確には提示していませんから(推測は余裕でできるけど)、お前が言うなと反論されるだけの話だとは思いますけれども。

中国、国債格下げで米を批判 軍事費の削減要求
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819499E2E4E2E2888DE2E4E2EAE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 他の中国政府のstatementを読むに、結局のところ中国でも主導的な通貨政策を行っていく努力を払うつもりはないということで、軍事費など他の要因もセット売りで文句垂れてるんだろうなあと思われるわけですけれども。

 日本の単独介入に不快感を示すECBですらこういう状態であるので、正直もうどうにもならないから微々たるものでも努力し続けて破滅的な結果にならないように頑張ろうということなんだろうなと思います。

Jean-Claude Trichet, President of the ECB, Vítor Constâncio, Vice-President of the ECB, Frankfurt am Main, 4 August 2011
http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110804.en.html

 いやはや何とも。そりゃあ不美人投票になれば、いったん先に痛い目に遭って、鈍牛のように硬直化してても一応は一歩一歩政策課題をクリアしていく日本が相対的に評価されて円が買われるのも当然なんでしょうけどね。

 っていうか、あの雇用状況や、国債発行限度額引き上げに関する論争のドタバタを見てなお、アメリカ国債の格下げが信じられないって人たちは、真の意味で葱カモと思われますので、どんどん市場に参加して蔓延っていただきたいと切に願うところでございます。

(追記 2:59)

 寝ようと思ったら、結構なニュースが。

G7会合開催へ、菅首相に連絡なし 日本は受け身で参加
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E2E4E2E0E58DE2E4E2EAE0E2E3E39797EAE2E2E2

 相場では絶大な人気を誇る日本円の責任者たる日本の菅先生にお声をかけないとは何たる度胸、と言いたいところではありますけれども、あんなの呼んでもしょうがないよね、と思われているのも確かなのでありましょうか。

 外務省もいろいろと人事が動いている端境期だというのも影響しているようではありますが、そんなのとは関係なくわが国の政治が国内だけでなく海外でも地盤沈下している現状に涙するわけであります。

外務省局長にノンキャリア初起用へ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110806-OYT1T00004.htm

 まあ、うっかり呼ばれて支援を約束させられちゃったら、それはそれで大変なんですけどね。