まあ、あんまり事情に詳しくない人が「対米追従は解消しろ! 日本は米国債を売れ!」とか言うのは別にいいんですよ、感情論としては理解できるから。

 でも、間違ってもシンクタンクで飯喰ってる研究者が、仕組みもろくに理解せずに「米国債を売れ!」とか「復興財源に外貨準備を活用せよ」とか書いてるのを見ると、もう少しどうにかならないのかその知能は、と思ってしまいます。根津利三郎って人らしいんですけど。

第1特集:米国債を売れ!
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/summary/news/20110603org00m020076000c.html
 昨日、溜池山王から地下鉄乗るときに売店の軒先に刺さってた「エコノミスト誌」@毎日新聞のヘッドラインに「米国債を売れ!」とか書いてあったので、馬鹿だなあと思っていたわけですよ。まあ、煽りというか釣りなんだろうなあ、雑誌を売るために必死なんだろうなあと思ってたら、上記冒頭記事がウェブに乗っかってて、結構本気で「売れ!」とか思ってて、こいつは本格的な勉強不足だぞと思ったわけであります。

 たぶん、この根津って人は、日本の保有している米国債を純然たる資産だ、と思ってる節があります。外国為替の資金特別会計の仕組みを知らないんだろうと思うわけですね。外貨準備ってのは、別段我が国の金融資産が積み上がってるわけではなく、国債と両建てになってるんだから、米国債を売っても我が国の国債が償還されるだけの話で、しかもそんなことをし始めたら猛烈な円高になって70円とか60円とかになってマジでカーニボーになって凄い規模の為替差損が出てしまうんで、普通の頭の人はそんなことはやらないし、実際に財務省も日銀も馬鹿ではないので当然そういうことは考えないわけです。

 もう冒頭のところだけでお腹一杯なわけですが、我が国の保有している米国債は、負債の裏づけとなってる資産では一応はあるので、米国債に投資せずにもう少し有効に活用する方法ねえのかよという話になって、なので麻生政権時代に外貨準備を一部取り崩してIMFに10兆円出資した事例が出てくるわけであります。

ブッシュ大統領主催夕食会における麻生総理大臣の発言について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_aso/fwe_08/hatsugen.html

 で、なんか知らないけど中川秀直さんが面白いことを書いてるわけですが。

1兆ドルの外貨準備の利権構造の可能性?
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10915758028.html

 なんじゃこりゃ? 元ネタは暗黒卿こと高橋洋一せんせだったようでありまして、これがまた。

変動相場制の国に外貨準備は必要ない
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/pickup/news/20110603org00m020073000c.html

 極論としては分かるんですが、現実には結構ヘンな話ですねえ、いつまでも未来永劫変動相場制であり続ける可能性がどれだけあんのかという話ですから。ちょっとずつ償還すればいいだろ、って5年にしたって一日あたり確実に1,200億円の円高圧力が確定してて、さらに介入したときには「いってこい」になるわけですから手続き論としても政策論としても杜撰です。突っ込みどころはいろいろあるにせよ、まあ金融機関を通して運用をするにあたって取引手数料を支払ってるから癒着だ利権だというのは実に乱暴な話です。国のためだけにサービスしているわけじゃないのですよ。ほかのお客さんと同等の手数料は国にも負担してもらわなければ困りますし、ECBもほかのセントラルバンカーも同じ手続きを取っていて日本だけが利権構造というわけじゃないと思います。

 議論のきっかけとしては良いんですが、もう少し現場や民間のことも考えていただかないと馬鹿しか騙せないと思うんですけどねえ。まあ、中川さんが利権だなんだとお話されるのであれば情報大航海での経緯なども胸に手を当ててよく考えていただきたいものです。外国為替資金の特別会計についての仕組みはこちら。

外国為替資金特別会計
http://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/special_account/gaitame/gaitame.htm

 といったところで置物タイム解消のようなのでこの辺で。