常見陽平氏のブログであれこれ就職活動についての話を読んでいたら、池田信夫が出てきて「学生がバカなことが就職難の原因」と馬鹿そのものの発言をしていたのを観て和んでいました。

池田信夫先生の「学生がバカなことが就職難の原因」発言で考えた、人気企業ランキングの構造
http://blog.livedoor.jp/yoheitsunemi/archives/51269117.html

 でも、昨今の常見氏の本を読んだりしていると、企業の採用のあり方が徐々に変わってきている中でのある種の生みの苦しみなところもあるのかなあと感じるわけですが。


 で、大状況は分かっても自分のところは新卒採用は第二新卒も含めて年間二人程度の採用しかしていないので、じっと手を見るところではあるのですが、新卒で定着して戦力になっている社員を見ていると、インターンのような形で在学中からお仕事を手伝ってくれている人か、こっちの業界に入りたいと強い願望を持って門を叩きに来る人かのどっちか。でも「やる気だけあってもねえ…」というケースも多くて、やはり新卒に求める人材像というのがはっきりとある以上、そのラインに届かないと社員として雇うことはありません。

 一方で、じゃあ新卒時代の自分はどうだったのだろうか、と思い返してみる。まあ、顔が真っ赤になりますわね。あのころは、就職氷河期と言われ始めたころで、バブル入社組の先輩がたがいっぱいいましたけれども、新卒採用というものは文字通り人生を決める最終関門のような言われ方をしておりました。もちろん、いまでもそのような傾向はあるのかと思いますが、いまの学生を採用しようとすると、もっとあっけらかんというか、きちんとスキルをつけられるかや、弊社を通じていかに良い仕事や取引先と巡り合えるか、といった目線で観ている学生が多いように感じます。

 常見氏の本では、「就職活動をする側が受ける格差」にクローズアップがされておりますが、実際のところ「採用活動をする側が受ける格差」というものもかなり厳然とあります。いや、正直新卒採用をしたくても就職活動をしている学生にまで辿り着かない。

 就職フェアとか自治体が開催しているイベントにブースを出しても、必死そうな学生はたくさん来るんだけど、面接にやってくるのは本当に「どこでもいいから、とにかく就職したい」という人で、スキルが求められる職場を提供するにあたってある程度の素養はやはり必要なこちらからすると採用のラインにまでは届きません。そういう採用ラインに届いている人がどこに就職しているのかというと、何故か旅行社に入っていたりするわけですね。その勉強して得たスキルを旅行社でどう活かそうと思っているのだろう。

 なんで、必然的に大企業にそういうスキルフルな学生が流れていってしまうのは仕方がないので、少しでも業界に関心のある学生にバイトやインターンであらかじめ慣れてもらい、仕事のいろはを学んで他の社へ飛び立つなり弊社に残るなりという方法を思い切って使うほうが、変に人材会社にお金を払うよりも私ら企業側も就職活動に悩む学生側も良いのではないかと考えるようになりました。弊社の場合は一度開発部門を売却してしまったので、ノウハウをいちから組み立て直さなければならなかったのですが、いろんな会社から経験者を呼んできて発想を固定化するよりも、全体の年齢構成を考えたチームを作って試行錯誤したことで、より弾力的な組織に出来たと考えています。

 弊社グループの場合は、とにかく定着率が良いので新卒でも中途でも他の会社と随分風通しが違うのかもしれませんが、その目線で感じることは就職難というよりも採用難であって、根本は学生が考える「企業の求める人材」と実際に企業が「採用したい人材」のミスマッチに尽きると思います。

 一部の上位大学と大量採用をする大企業のマッチング機関であるほうが人材会社としては経営効率が良いのでしょう。そこから零れ落ちている、大多数の大卒見込み者からすると、就職難が肌身に沁みて当然です。でも、そういう人を受け入れたい、採用したいと思っている中小企業や中堅企業、職種というのは厳然としてあるのであって、変に就職失敗を受け入れすぎて派遣社員でいいや的な諦観にならないことを祈るのみです。

 余談ですが、企業としては、というか、経営している私としては、いまいる社員にどういうスキルアップをさせるべきかや、事業の将来像から導き出したあるべきステップアップというのは、実際良く分かりません。「会社に頼るな」というより、本当に数年後の動向ってのが読めないのです。なので、給料同様、「この会社で無難に勤めれば何年後にはどのくらいの地位になって」という勤続右肩上がりというのはまずあり得ないと思います。

 まあ、うちは給料が安んですけどね。