木村剛が先日保釈になったそうで。おめでとうございます。

 まさに金融界のTK、素晴らしいです。日本社会の躍進と改革を目指して、また新たなる戦いに身を委ねようということなのでしょうか。腰ががくがくします。

 ところで、良く分からないんですが何故かとばっちりで竹中平蔵氏のところへ不思議な言いがかりが跋扈しているようで、気になるわけです。まあ、微妙な話といえ逮捕されたわけですから、堂々と顔写真を使うわけにもいかんだろうなあというネタを見つつ。

竹中平蔵さん木村剛を切り捨てる
http://zarutoro.livedoor.biz/archives/51490117.html
振興銀破綻、金融庁が検証委設置 竹中元金融相の責任追求へ
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101210/fnc1012101238012-n1.htm

 問題のこれなんですが、比較的この手の人に対しては厳しい見方を自認するこの私ですら、そのまんま検証したら白判定が出て沙汰止みまっしぐらになりそうな物件になっております。この辺は大変難しくて、政官財の癒着がどうのという理想論とは別に、政界と金融界、官僚とアカデミズムの世界の垣根を取り払おうとすると必ずリボルビングドアはどこまで利用者に融通が効くべきかという「べき論」になりがちな部分があります。

 竹中さんの腰巾着で査読論文ひとつまともにないのに社会人大学院で准教授職を得て能書きを垂れている無能もいるのでその辺は早めに処置をお願いするにしても、小泉改革の終着点でもない日本振興銀行の案件ひとつで配慮したといって責任を追求するというのは本来的な意味では無理筋なのかなあと。

 一方で、類似の案件はやはり多く、有力な政治家が特定の銀行の事情などにどのように配慮するべきか、行政としていかな対墺を行うべきかという点については、もう少しシステム論の観点で考えないといけないよねえという話になるわけでもあります。

 要は、個別の問題案件については発生とその経過について詳らかにしたうえで例外処理として粛々と対応を進める、道中、格別の「配慮」があった場合にはこれをどこかの段取りできちんと公表する、例外を認めない行動原則については金融庁の検査のあり方を見直してレベリングする、といったところが具体案になるのかしらと海外の例を見ていると思います。

 同じく産経引用ですけどこんな記事が。

振興銀の木村剛前会長、会見で起訴事実認める方針 グループ内融資「違法性認識せず」 
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101210/fnc1012101238012-n1.htm

 一応、見出し的には穏当にグループ内融資という建て付けになっておりますが、一昔前の街金の流儀で言うところの融通手形も同様であって、このあたりの見立ては警察ではなかなか困難だったのではないかと同情する次第です。摘発の方法によっては検査忌避以外の部分の追及もされうるのかと予想していたものの、他の要因もあって早々の手打ちになるのは致し方のないところでもあります。木村も起訴事実を認めるわけですしね。

 記事中は助け合いの精神という書き方であるものの、スリープロでは面白報告書が上がっており、これはこれで一見の価値のある文学的な第三者機関報告書になっています。

第三者調査委員会の調査報告書の公表と社内対策委員会(仮称)の設置について
http://g2s.skr.jp/140120101214086704/1

 一読すると「ああ、高野研がやりやがったんだな」という話に終わってしまいますが、読み進めるほどに彼がそのような座組みや仕組みを作り上げハンドリングなどできるはずもなく、金融庁的にも国税的にも興味津々な内容が盛りだくさんになっています。何と言うか、上場企業を使った裏金みたいなのの作り方講座みたいなもんで、堀江さんの時代から随分進歩したんだねえ間接金融も組み合わせて所得積み上げるなんてという話です。

 言いたいことはたくさんあるんですが、おそらく似たようなグルグルを日本振興銀行母体とした振興ネットワークで組み上げており、仕組みは迂回融資と融通手形と第三者出資による精巧な支援システムであって、それを支えていたのは高金利に釣られて預金したカネ、それも1,000万以下ならペイオフ可能でござんすよといって制度の穴をついた代物だということです。

 なので、木村を有罪に仕立て上げようとしても警察ではなかなか罪状を捻り出すことができなかっただろうことは外部から経緯を見ていても明白であったし、木村側も無罪を信じていたことでしょう。弁護士はどう思っていたか分からないけど。

 そうなると、たまらんのは木村が代表を退いて会長に棚上がったあとを引き受けた取締役たちであって、社会的には文字通り終わりかねないのですからきっとお怒りでありましょう。

 今回の責任追及にあたっては、竹中さんが顧問に木村を置き、この手のコンプライアンスの整備状況が木村に丸分かりだったにも関わらず、フタをしないまま日本振興銀行がまんまとこれを利用したという点であって、文字通り竹中さんの「人を見る目」の問題だったのかなあという気がします。判決が出るまでは推定無罪ですから、当然いろんな経緯や報道を見る中で金融庁がどうリカバリーをかけて逝くのか、良く見ておきたいところでございます。

 検察が捏造とかやらかさなければ、もう少し違った展開もあったんでしょうけどねえ…。