一般論ですけれども、官邸機密費問題というものがありまして、いろんなジャーナリストが既存メディアの元重鎮らが官邸からカネを貰って世論を誘導しようと試みていたことに対して強い嫌悪感を示し、一時期騒ぎになっていました。

 本来であれば公平中立であるべきメディアが、政府に都合のいいことを垂れ流すことに対する是非というのは極めて重要なことであって、私も一国民として、この問題には深い関心を寄せています。

 一方で、官邸機密費が渡った先という具体的な証拠の話になると、とたんにフェードアウトする部分がありまして、では具体的にどのメディアの誰が、当時の官房長官や副官房などから幾ら貰ったのか、という内容はいまここに至るまで実は良く判然としません。
 週刊誌などで語られている官房機密費が渡った先リストというのも、年代や払われた先、そして具体的にどのような影響が当時の通信社、新聞社、テレビ局などの報道論調に現れたのかという「検証」の部分で、どうしても片手落ちであり良く分からない部分があります。結構古い話も多いので、証言もブレまくってるしリストとやらも信憑性がイマイチ良く分かりません。

 一方で、鳩山内閣では内閣官房報償費を少なくとも数億円使っており、とりわけ「沖縄対策」として当時の平野官房長官が活用した資金について、具体的に追及しているジャーナリストはあまり見かけません。かつて、新聞社やテレビ局に支払われた、20年近く前の機密費について追及しているにも関わらず、つい半年前に起きていた機密費の使途について追及をかけていないというのは少し不思議なことです。

 今回の民主党代表選で、新聞社や雑誌社の論調をちくちくと調べてみると、小沢陣営であれ菅陣営であれ、スピーカー役の特定の幹部からの話をネタ元に、彼らにとって都合の良い記事で誌面を構成している場合が多いことに気がつきます。もっとも、菅陣営は仙谷さんが中心となって仕切っていたのでそれほど露骨な動きはなかったのかもしれませんが、小沢陣営にあってはもう完全にシンパと言える媒体やジャーナリストが鈴なりになっているわけですね。

 政党の代表選とはいえ選挙ですから、当然活動費用というものはかかります。事務所代わりに使っているホテルの部屋代など、党の予算とは別に陣営ごとにお金を捻出していたと思います。当然勝つために戦っているわけですから、それをどうこう言うつもりはありません。

 でも、政府が支払った機密費はもちろん税金ですから私的な目的に使ったら問題ですが、政党助成金も政党の運営のために政府が歳出している費用ですので一定の意味で公的な資金であり、私的なものに流用したら問題です。また、特定の陣営からの情報提供をしてもらうことの見返りに、彼らのために有利な言説をメディアで流すことも、本来のメディアの中立性、客観性という部分から見るに問題を孕むことはあるでしょう。

 今回の代表選は、小沢さんがかなり頑張った、思い切ったという面もあって世間では非常に盛り上がり、同時に実質的に首相公選に近い内容だったために重要な局面でした。最後は菅さん勝利ということで落ち着き、まずは大団円というところではありますが、それに呼応して、今回の題材を取り扱ったメディアの側もそろそろきちんと総括しておいたほうがいいと思うんですけど、どうお考えですか上杉隆さん。