たぶん釣りなんだろうし、アクセスが集まったらそれが批判でも「やったー」という話になりそうなんだが、まあ興味深い話ではあるので軽く。

"交通事故死減少"は真っ赤なウソ!? 軍事国家時代から続く「大本営発表」のカラクリ
http://www.cyzo.com/2010/07/post_5061.html

 この手の議論に「全く意味が無い」というつもりはなく、ある意味で定期的に蒸し返されるものではあるけれども、大本営発表、すなわち公的機関が民衆に向けて情報操作をする行為そのものを指す事例として取り上げられるのは、やはり不本意でありまして。
 もちろん、この「のり・たまみ」なるライターが言う「実は、これらの数字は全くの嘘。あまりにヒドイために、警察庁の発表とは別に厚生労働省も「実際の死者数」を発表しているくらいです」というのは全くの嘘で、24時間以内の死亡者で統計を取ってきた過去からの連続性が必要であるために現在も行っているものです。

 ついでに、24時間というのは「重篤事故」を統計的に考える、すなわち「シートベルトも締めず飲酒して正面衝突して即死しました」という交通ルールを全然守らないようなケースで発生した死者を測定するのに利用する目的で制定されたもので、公的機関か保険会社かを問わず、国や地域全体の交通事故頻度や重篤度を調べる上では国際標準に近いデータになっております。別段、交通死者数をごまかそうと思って24時間限定の数字を警察が発表しているわけでもないし、それが大本営発表、すなわち情報操作をしたくて出しているんじゃないんですよね。

交通事故による死亡者、前年比-10.3%の5155人に
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2009/01/1035155.html

 我が国の交通事故死者や負傷者については、断続的に減少していることは生命保険会社各社の生保・損保の支払い状況から見ても明らかで、むしろ自動車による重篤事故よりも、チャリとかによる事故が伸びてきて、そっちのほうが問題になっています。これらのデータも公表されているんだが有償なので興味ある奴は金払って読め。

 元記事の酷さはちょっとコクがあるので順を追って見ていきたいんですが、例えば「よく問題視されるのは「24時間」です。これは、警察庁が数字を誤魔化すために使用している時間の枠組みです」が馬鹿発言なのは当然として、後述されていた「医療の進歩によって、なんとか1日(24時間)程度なら延命できるようになった。それ以降の死者は頬かむりして、数字に入れない」については、厚生労働省や金融庁、民間だと生保各社が代表社員などに対して発表している数字を元にすると事故翌日没という形で2,000人から3,000人前後毎年亡くなっており、主に事故総数から考えると毎年概ね正相関であることが分かります。なので、警察は事故死者数だけでなく事故発生件数に対してコミットすべき、という主張なら良かったのにね、と思います。

 ついでに、「常に「最悪の年」より、事故は多く起きています。~そう、実は「交通事故は減った」どころか、安全だった昭和50年代と比べて2倍近くにまで事故は増えています」もガセネタなんですが、生保・損保の事故認知件数とカバレッジ率から考えるに、軽微だが怪我をさせてしまった自転車事故は年々増加しているにも関わらず保険でカバーされておらず事故件数にも入らない割合も多いという問題があります。

 「最悪の年より事故は多く起きている」というより、GarbageNewsの主張するとおり、「事故件数は横ばいなのに死者の数が減っている」こと、それは恐らく警察の指導などによりシートベルトの装着率や飲酒運転の傾向減少が複合的に死者が発生するような重篤事故の発生を低減せしめ、結果として死亡率が改善されていると考えるべきです。

 たぶん、書き手は警察不信もあって強く警鐘を鳴らす目的で書いたんでしょうが、結果的にほぼ全面的にガセネタとなって、ありもしない大本営発表にまで持っていってしまうというのは非常に遺憾であり、馬鹿じゃねーのこいつらと思いました。だってしょうがねえよなあ、本当に死者は減ってるんだから。