ご指名があったので、妄想を書きますよ。
● 官邸(内閣官房)機密費って?

 そもそもは「外交機密費(報償費)の首相官邸への上納」であって、その予算の差配権限は実ははっきりしておらず、官房長官のときもあれば、副官房のときも、首相秘書官のときもある。基本的には、国益などに関わる重要な事案に対して、政府方針が遺漏なく国民に速やかに伝えるために有力者に工作を依頼する対価ならびに口止め的に使用されるものだと認識してる。

 先日、ムネオ日記で江田さんの話が出ていたが、彼は当時首相秘書官であり、現在官邸機密費の支払先リストとして出回っている資料自体に支払先がすべて記載されていたわけではなさそうである。

http://www.muneo.gr.jp/html/diary201007.html

 いま江田さんが取り沙汰されているのは、事情をある程度知っていて、知っている人の中で一番小物だと判断されていていじりやすいってのがあるのかも知れない。庇うわけではないけど、個人的にはまともな人の一人だと思っているし、話すにも時期をしっかり見て決断される(またはきちんと黙殺する)と思ってます。

● リストの正確性とか

 現在、出回っているのは野中さんのグループが幾つかのリストをマージして特定のジャーナリストに配布したものが元となっている。何種類かあるらしい。そのリストの正確性についてはまだ実は良く分からないが、ただ何となく野中さんが出してきたものなのだから、きっと正しいのだろう、ということで追及の素材として使っているようだ。

 野中さんのグループが何を目的として官邸機密費のリストを流したのかは不明で、耄碌説とか政界言論で生き残りたい説とか言うことを聞くジャーナリストなのかの踏み絵説とかいろいろある。けど、野中さんは確実に知っていた渡し先だったのに漏れている新聞社、雑誌社やジャーナリストが結構な数含まれているようだ。

 この前編集長に就任して、何か知らんけどひっそり辞任した人についても、入ってるリストと入ってないリストとがある。受け渡しがされたとされる日付とそのとき担当していた編集長時代の誌面とを見比べてみると、まあ確かになるほどねえというところもあるけど、ぶっちゃけ良く分かんない。

 逆に「俺は官邸機密費貰ってねえ」と豪語しているジャーナリストについては、貰わない別の事情があったようなので後述。

● 何で外交機密費なのか?

 これは諸説あるのでどうにも。

 ただ、機能的に一番正しいと私個人が勝手に思っている妄想でいうと、基本的に世論工作というのは日本政府だけが行うものではないから。

 例えば、中国の首脳が来日するにあたっての「地ならし」として、ギョーザ事件をどうにか沈静化しましょうといったときに、露骨に駐日中国大使館詣でをするジャーナリストがいたりする。あるいは、中国外交関係者と全日空ホテルのロビーとかわざと人の目に付くところで会って写真を撮らせる御仁とかがいる。「この問題を気にしていますよ」とプレッシャーをかけるわけですね。

 この辺は、日本政府が機密費を一方的に使って世論工作を仕掛けているのではなくて、日本人にどのような情報をインプットするのか報道にネタを流す、コントロールするという他国の工作に対するカウンター、バランス取りという部分もある。他国も日本をコントロールしたいのだから、一生懸命お金を使うわけでね。

 ところが、外務省という組織はどうも… というところも過去何度もあり、その手のハンドリングは… ということで上納という話で。そのあいだ、大森機関がどうのとか良く分からない批判にも晒されておりましたが、実情は… まあ基本的には日本国内世論を陣地に他国と将棋を打っているようなもんだろうと妄想。

● 貰ってない人について

 貰ってない人は本当に貰っていないと思います。職業倫理的に素晴らしいジャーナリストもたくさんいます。

 で、高名なジャーナリストであるほど影響力も高く、また取り扱うべき問題の範囲も広くなりますので、特にテレビや週刊誌のように定期的に大量の情報を提供しなければならないポジションの人は、必然的にスタッフ制となります。

 問題は、そのスタッフに米中韓EU外交関係者の意を深く汲んだ人が、これらのジャーナリストに喰い込んで彼が取り上げる争点や課題、報じるスタンスなどを「教導」することが多くあるようで。

 また、テレビのコメンテーターになろうとする人というのは、概ね別の野心を持ってます。そのギャラだけが欲しくて活動しているわけでも… というところで。本をもっと売りたい、占いアプリで儲けたい、都知事選に出たい、政党幹部になりたい、などなど、金儲けももちろんあったうえで、影響力をより大きく行使したいと願っている人がたくさんいます。

 全員が全員、腹芸ができるわけもないので、当然、思想や背景の調査なんかをするんだと思いますけれども、まったく政治的なポジションが皆無だ、誰からもバイアスのかかった情報を受け取ることはない、という著名人はほとんどいないと思っていいのかなあと。

● 落としどころは

 もう野中さんが喋ったのでいままでどおりってわけにもいかないんでしょうが、別の仕組みを新たに講じるだけで、昔のことは適当に処分出して、いままでどおり影響力要員を作るための活動を続けることになるんじゃないかと。知らないけど。

 逆に、今回の件で口を割る人割らない人がはっきりしたという意味で、紅組か白組かが判別ついて良かったねという向きもありますし、旧来の手法に拘泥する老害の皆さんが使っていたツールがこれで死んだので、次の世代が新しいカウンターインテリジェンス的な手法をこっそり生み出すソサエティができやすくなったかなあ、とは思ってます。

 なので、まあ… 名前を売りたい人は、旧来ジャーナリストやマスコミ相手にじゃんじゃか騒いでもらって、勝ち星を稼ぐのもいいことなんじゃないでしょうかね。これで平野さんが変な使い方をしたのが突然割れて、選挙前に大騒ぎとかって事例でもない限り、全体としてはそれほど影響のある案件ではなくなっているのが現状だと妄想。私がこうやって自由に妄想交えて書けちゃう程度の話ですから。

 一番重要なのは、機密費を貰うこと自体が悪なのかどうか、貰ったうえで何をしてきたのか、というところなんだと思うんですよね。

● 本当の意味での対価とか

 まあ、2ルートあるわけで。価値のある情報を渡すか、お金を渡すか。

 「報道は儲からない」なかで、社内的なポジションの問題もあってやりがいを失った一部のデスクはやっぱり貰っちゃうんですかね。このあたりの侘び寂びは私には良く分からん。第三者的には卑しい人間だと断罪できるのかもしれんが、まあメーカーと量販店の間で授受されるリベートのようなもんという理解で。

 問題は、官邸から機密とされる金ではなく情報が出てってしまうケース。今回、あまり問題にされない、触れられない方面のお話で。まあ、口の軽い人も一杯いるんでしょうが、実際にはジャーナリストも情報のやり取りが命だから、ソースとしての官邸というのは重要で。政府がこんな悪いことを考えている、とかね。

 一応、東京新聞の佐藤優氏の記事から、こんなのを引用。

[引用]普天間問題で窮地に陥った現官邸が沖縄の分断工作に機密費を用いることを牽制するために、江田氏が機密費について知る真実を国民の前に明らかにすることがみんなのためになると思う。

 記事全体で見て前後の文章の脈絡が合わないことは、あえてここでは問わない。彼も商売でやっているんだろうから。で、記事中は「分断工作」になってるけど、実際の平野さんの使途は「安定化」を目的にしていたと思うんだ、妄想だけど。そして、実際には機密費という金ではなく、情報のルートが使われた、すなわち、沖縄問題の安定化を企図して、あれこれ活動してみたが、なんかしらんが官邸から関係者図や思想地図などのマッピングされた情報がどこぞ出て逝ってしまった。お金も結構使ったみたいだけど、こっちのほうが実際には困ることになるということで。いま「何てことしてくれたんだ」と怒ったところで遅い。

 平野さんの将棋はクソだ、下手打ちやがって、というのは簡単だけれども、見返せば、最近でも小泉政権下で北朝鮮拉致問題で二重外交を繰り広げた挙句、誰がどう見てもスパイぽい問題人物をカウンターに起用して、かつ性的にタフな政治家を重用してぐずぐずになったケースだって結構使ってしまっている。でも、なぜそのことは野中さんは言わないんだろうねと外野としては見ていて思う。そのあたりに、野中さんの本来の立ち位置や、狙いのようなものは薄々見えてくるものなのかなあと妄想する。

● タイムスケールとか

 この辺はきっと説明しようもないところなんだけれども、いろいろと申し送りというのがあるんすよ、たぶん。引き継ぎとか。

 また、本当にこの人を排除したい、悪者だ、といって能動的にどうにかしたことって、少なくとも知る限りではまず、ない。ていうか、あんまり善悪では判断しないように思う。ただ、書類を超えて、情報というのは語り継がれる。摘発はしなかったけど、確たる情報があったうえでこういう思想信条の人なんで要注意、とか。あと、意外に国籍や生まれ育った環境とかだな。

 だから、20年以上経過した話がある事件をきっかけに突然蒸し返されたり、本人が亡くなった後で相続された会社ごと幕引きを進められたりする。世代が3つ下りて、本人はもう完全に日本人化したと思っており、日本人と変わらない生活をしていたとしても、なんか頭をもたげるとわっと出てくるとか。

 ま、特にオチはない。単なる妄想だから。お疲れさまっしたー。