最近無闇に忙しいのもあってどうも具合悪いのだが、どうも落ち着いた用事が土日に入る傾向が強くて何となくゆっくり休めないなあ。

 で、パートナーがシンガポールから東京へ遊びに来ていたのでミーティングをしたあと、雑談で映画とかゲームの制作体制のあり方的な話に。
● コンテンツ産業における何某王国化、誰某王朝化

 コンテンツ業界は売上を維持し体制を確立するためにも国際化しなければなりませんね、売上比重も国内より海外を重視しようね、というのは当然どこも考えるお話。なので、海外のスタジオを買ってみたり、海外のコンテンツに投資してみたり、海外のクリエイター集団に発注してみたり、海外の現地法人に予算をつけて開発させてみたり、様々な試行錯誤をやってきた。

 結論でいうと、「それは日本の会社が持っていた独自性が生きなくて、日本メーカーがやる必要なくね?」というオチとなって、うっかりすると北欧とかロシアの会社にWW展開で負けるという不思議世界に。

 で、前回仕事で一緒になった連中と話をしてみると、日本人の仕事のベクトルが独特で、中世欧州の封建主義みたいだねという感想で。まあどことは言わないけど、上場もしてるし株式会社なんだが創業家が経営を手放さずある意味でキングダムであり、制作グループは騎士団、バックヤードは宮廷官僚みたいに感じるんだそうな。

 言われてみれば、「俺も領地欲しい」と飛び出した騎士団長が独立してみたもののなかなかうまくいかなくてどうにもならなくなって別の王国に「お金出して」と言ってみたり、腕利きの騎士団長が独立したというので金を出してみたら仕掛けた戦争は全敗してお金だけ損して終わったとかそういう話が日本では良くある。

● 日本が勝っているのは職人芸が創る一品モノの良さ?

 海外の買い付けやプロジェクトローンチやる奴らからすると、日本のコンテンツは独特だねえ、オールジャパンの体制は復権するんじゃないかというような話も。何を根拠にそう言うのかは知らね。ただ、なんかソーシャルアプリの市場とかでも日本の某社が出してるものとか見ると、模倣は模倣なんだけど積み上げているコンテンツ的な手触りの良さみたいなものは感じるんだと。

 言われてみれば、いまうちらが企画で下請けしているときでも日本のメーカーとの打ち合わせでは「これはこう遊んでもらいたい」というようなところから仕様を煮詰めようとする傾向が強い。海外の連中は「まあ、こんなもんじゃね」とか「こういうコンポーネントは考えられるけど、いまはここまでだから、とりあえず出しちゃえ」みたいなことを言う。作ったり壊したりしながら作り込んでいく日本のやり方を海外のスタジオにやらせようとしても、なかなかうまくいかないのは事実なんだよね。

 オーソドックスなFPSとか日本のメーカーでよい作品がなかなか発表されずにきたのも、日本にFPS的な市場がいままで乏しかったからというより、FPSそのものではなくFPS的なものを咀嚼していままでのゲームの文脈に置き換えて簡素化しようとする職人的な圧力が加わるからじゃないかと思う。実際、日本人のチームであれこれ考えて作り上げた企画書が、依頼されたものであるにも拘らずなかなか理解してもらえず通るのに時間かかったり。

 でも、モックやプリプロを納品してみると、海外のEPさんとかはWOOとかGREATとかいうんだ。いままで日本のメーカーでやってきた仕事を振り返るに、そんなところで関心されても困る。羽田や青物横丁はもう数回突っ返されるわけだし。

● 作品ポートフォリオとかなあ

 発注側の都合ではあるけど、作品ポートフォリオとかパイプラインとかいろいろ言われる。それは正規軍のお話であって、私たち傭兵にとってはあんまり関係ないんだけれども、これから出す予定の作品のジャンルが会社のブランド方針に沿ってまんべんなく散るよう調整しようとし、社内からそういう企画が上がらなかったりラインが空いてないと外注を使おうということになって傭兵が雇われる。しかし逆に言えば、それは社内の誰もがやりたがらない仕事であり、だからこそ社内から企画があまり上がらないわけであって、したがってそういう企画を出せと発注しておきながらなかなか提出した企画に予算がつかないという不思議事態になる。

 それ以上に、「この時期に売るものがないので至急なんか作れ(調達しろ)」というお題が出る。それは、だいたい正規軍が企画の変更や仕様の増大など様々な理由があって開発が遅延して、年末に出そうとしたのに年度末になったりする不始末の類だ。年末商戦向けなのにDSタイトル1個PSPタイトル2個みたいな極寒のシベリアを逝く的な下期になっているメーカーが稀にある。

 で、そういう話は会社に取って都合の悪い話だから、最後の最後まで対策を取られない。誰が責任を取るのかとか、そういう宮廷政治みたいな権力闘争があるらしいのだが部外者であるところの我々の知ったことではない。ただ、いざ対処がとられると、やたら短い納期の依頼であったり、異常に低いクオリティの素材提供を受けての開発であったり、どうしようもなくなったダッチロール済みプロジェクトのサルベージであったり、とにかくモチベーションのさっぱり上がらない発注ばかりが降ってくる。断ればいいんだろうが、でもライン空いてたら請けちゃうよなあ。

 テレビとかと違って、本当にどうしようもなければクオリティを犠牲にするか納期を延ばすかの二択になることが多い分、何となればそう対処すればよいと最初から割り切ってるPとかいる会社は困る。最初から予備費が二割とか積んである的な。

● ローカライズ費用をケチって売れないタイトル群

 洋ゲー、というか洋ゲーという括りは本来良くないのだが、海外タイトルを日本で売る場合、当然日本語化などのローカライズをするわけであるけれども、たまに凄いローカライズをやりやがる会社がある。戸田奈津子の字幕に比するクオリティ。

 でも、海外大手からすると日本市場は小さいので、風土に合わないタイトルはたとえ大型タイトルでも日本では発売しないという選択を良くする。これは正直仕方がない。日本のパブリッシャーもやりたがらないタイトルもあるし。

 一方で、日本発のコンテンツを英語化するという作業は結構ヤバイ。どうヤバイのかというと、日本のゲームクリエイターやシナリオライターって日本人目線でモノを作る、それは良いことだし変えようもないのだが、下手をすると神父が祈りを捧げてモンスターになったり、敵の組織が月のマークの紋章を身につけてたり、少女が大剣を片手で振り回してたりする。こんなものロシア以外では売れない。

 セールスイラストとかもなあ。