同じ外資系でもいろいろあるし、業界他社の情報は辞めそうな人から漏れるというのは鉄則なんだけれども、担当していたプロデューサーが後任にきちんと引き継ぎせずに退職してしまうのは如何なものかと思う。

 そういう話をしていたら、まとめて書いてくれというので雑感めいた感じで適当にうp。あとは、頭の良い人たちが少しは悩んでくれるんでしょう、きっと。
● 総論とかの前提

 この手の資料がうpされて、興味深く読んじゃうネット住民が多かったりとか。いや、事実だとは思うんだ、が、読み方がむつかしいんだよ。

日本経済の現状
http://rionaoki.net/2010/03/3448
日本の産業を巡る現状と課題
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf

 家計から法人へ所得移転が盛大に行われたあとで高齢化の後押しつきで「日本の貯蓄率が下がりました」とかってさ。労働生産性とか、なんかアンケートとって「今後、海外シフトが更に進展」とかさ。経営者に聞いてんだから、本社機能は移転したくないのは当たり前だろ。

 産業政策が悪い、と総括されがちな内容の話は、すなわち産業政策を採る側、すなわち経済産業省なり担当省庁に権限とリーダーシップを、という一種のプロパガンダも含まれる。仮に産業政策を日本政府が推し進めるとするならば、国家が民間にどう介入するかっていう全然別の議論をしなくちゃならない。

 一国の経済に良い部分と悪い部分が混在していて、平均してならすとこういう状態だ、というのは危機感を持って然るべき内容。ただし、それを是正するには政府の力を使おうとするのは果たして正当なのか、政治的なリーダーシップは産業政策を通じてどれだけ民間に影響を及ぼすべきなのか、という議論は、まったく別の象限で語られるべき問題のはずなんだよね。

 本論で、必要だと結論付けて論じるのは「海外展開4:外交を強化し、政治が働け」の部分だけです。

● 知財はどうか

 で、知財とかコンテンツとかそっち方面。いまだと部会は何本走ってるんだろう。内閣官房の知財本部とか、総務省とか経産省とか文化庁とかかな。議論の一部は議事録とか資料で読める。

知的財産戦略本部
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/
コンテンツ強化専門調査会(第4回)の開催について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/dai4/kaisai.html

 中村伊知哉せんせが呼びかけたのもあって、twitter上でも多少議論は起きてる。議論のモデレーターがいないこともあって、激しく論旨が散漫なのはご愛嬌。

ハッシュタグ -#c_policy
http://twitter.com/#search?q=%23c_policy

● ここまで読んで分かることは何か

 まあ、援軍は来ない、ってことだ。

 社歴10年何らかコンテンツに携わってきて、制作者の能力や働きぶりには何の落ち度もないのに、会社の経営が傾いたり、無謀な合併したりで解雇されちゃう人たちが一杯出るってことだよ。出版も音楽も漫画も文藝も映像制作もテレビ・ラジオも雑誌も新聞もゲームも映画もあんまり状況は変わらない。「コンテンツ強化」とか言われてもねえ。まるで、いままで弱かったみたいな物言いじゃねえかよ。

 で、いまごろ、国内の著作権法の話とかしてやがる。もちろん意味がないとは言わない。でもこれ、強化に結びつく話じゃないよね。仕組みの問題であって、ルールを現状にどう合わせましょうか、みたいな。大事なことだけど、あれこれ議論が広がって、効果がなかなか上がらない。困ったもんだ。

 では、日本政府は仕事をしていないかというと、そんなことはない。みんな、真面目にやっている。内閣官房も総務省も経産省も。

知的財産戦略推進局
http://www.ipr.go.jp/

 っていうか、仕事はみんなしているのに、どうしてこんなに苦しいんだろうね。

● 民間は民間でいろいろあってさ

 国内勢だと、事業規模欲しさに合併しました、資産整理しながら赤字で耐えています、事業分野を選別して赤字事業は撤退しました、とだいたい打てる対策は打って、人件費に手をつけなければ均衡しないってことで、賃下げボーナスカットをやって、でもまだ足りないので具体的に早期退職、余裕のないところは文字通り指名解雇みたいなことが起きてる感じかのう。

 太平洋戦争で言うと、戦線を押されてるけど補給が行き渡らないので、洞窟に篭って必死に拠点防衛している感じ。意味のある形での横の連絡はあまりない。これはつらい。

 前線で負けてるんだけど、大本営が上記の通りなので個別奮戦をしている。

 外資系は外資系で、広告宣伝費の大量投入でワールドワイドにセールスというゴールデンルールがだんだん適正規模からはみ出していって、気がついたらミリオン売ってるのに大赤字とかね。こちらはこちらで戦線の立て直しをしている状態。

 中華は完全に保護貿易で大陸内無双状態。独創性を他国コンテンツからパクリ放題。韓国系も同様だけど、悪質度でいうと中華は酷い。去年も今年も業界全体で最高益更新なんじゃないかな。オンゲやブラゲ、スマートフォン向けアプリの正面敵は、今後は文字通りvs中華です。

 国策で知財がどうと大本営ごっこやってるぐらいなら、ピーコ割れマジコン対策に加えて対中華対策もやらんといかんけど、そっちには軍事物資あんまり来ず。パワプロそのまんまとか、マリオカートそのまんまのオンラインゲームが平然と先方では稼動して利益を上げているわけだな。日本からはサービス参入できないけど、中国からは馬鹿高いライセンス料つきでサービスがやってくる。これは知財貿易不均衡(不公正)の問題でね。

 これこそ大本営に取り組んでもらうべき次世代のキリングフィールドのひとつなんだが、まったく対応される気配がなく、粛々と任天堂とソニーが自国領守るためだけに頑張ってる。ああ、もちろん雑誌やら音楽なんかはパクられ放題な。構成から文面まで。

● もう「育成」とか言うのやめようぜ

 毎度お題が出るけど、耳障りのいいお題目で「それって意味は分かるけど、いつになったら効果が出るの? 効果が出たってはっきり分かるの?」というようなネタ入れて、議題全体のボリューム感膨らませるの、やめない? 国内のパブリッシャーががんがんリストラしてるところで、次世代の産業を担う人間の育成とかって舐めてんのかよ。いま目の前で戦争に負けた軍隊が崩壊しているの。充分育った人が、武器弾薬にあたる予算を貰えないで解雇されそうなんだよね。

 海外比重を上げよう、というのはその通り。それに見合う人員を育成したいというのも分かるけど、それは産業政策として国が言うべきことなのか。

 プロデューサーで英語が読めないアホも多いけど、それはコンテンツ産業の問題じゃなくて、初等教育で話せる英語を学ばせられなかったという、もっと根本的な問題だろうと思うし、資金調達の多様化をしたらそれこそ国内に本社を持つ必要がどこにあるんだよという話になりかねない。

● 「コンテンツ」と「コンテンツ産業」を分けないのは何故?

 音楽業界で言うなら、レコード会社はどう産業政策を上手く組み合わせたところで死ぬだろ。テレビ局や出版社や新聞社も、ある程度のところまで需要が急減したところで落ち着いて、一定の市場を持ちながら緩やかに利用者や視聴者や読者と共に年を取って衰退していく。衰退産業は衰退するメディアで飯を喰っていたのに固執したから衰退しているのであって、別にコンテンツの需要そのものが人口比で減少しているわけではない、のは皆前提で考えているだろ。

 コンテンツを作るのに必要な政策と、そのコンテンツを売って飯を喰っている産業が助かるのに必要な政策とは違う。コンテンツの制作や流通に必要なルール作りや環境整備に政治力や外交を駆使することは必要だが、産業規模を守るための施策を幾ら打ってももう戦況は回復しないよ。

 憚らずにいうなら、コンテンツという新し目の産業の政策を考えることで、何らかの手段で潤う人たちと何らか椅子を用意されることを期待している人たちが、前線のことをきちんと考えずに議論をするから、戦況が取り返しのつかないぐらいの悪化をしてしまうんだろ。
 同じことは、製造業のパテント政策でも言えるけど、これは長くなるので別の話としても。

 後ろ向きな発言は多くなりましたが、引き続き、生産的な議論が続くことを期待しております。