お茶中、少し時間ができたので、短く寸評など。

 週刊ダイヤモンドの辻広雅文氏が、過去に破綻したナニについての対比を解説したところ、再びぐっちー氏が反論。これを読んだ某関係者がぐっちー氏に事実無根というか、単なる暴論として内容証明でも送ろうかという勢いであります。

3人の財界人が語る「稲盛日航」が危ういこれだけの理由
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10093/
日本航空再生は不可能
http://guccipost.jp/cgi-bin/WebObjects/12336a3d498.woa/wa/read/sq_126408e9b50/
 お年玉を貰い終わった私としては、JALが潰れようが解体されようがもはやどうでもいいので、投入される税金の金額が100円でも少なければそれでいいやと思います。

 ただ、再生の定義が「会社が存続し、利益を上げられ再上場まで持っていける可能性」、すなわち救済スキーム後に救済したステークホルダーが受益できる体制まで回復できるのかという内容にするならば、JALは結構簡単に再建できるタイプの事業じゃないかと思っております。充分な債務放棄と、法的整理・上場廃止による既存株主とレガシーコスト受益者を切り捨てられれば、大丈夫なんじゃないでしょうかね。

 根拠としては、JALの過去5年間の売上推移とコストを見れば大体分かると思うんですけど、たとえJAL再建の過程で売上が90年当時の水準にまで下がってしまったとしても、5,000億円ぐらい債務放棄されて機材費の更新が1,200億円ぐらいになって、販売管理費が65%程度に抑えられれば営業黒字にまで回復します。ぐっちー氏がJRとの対比で「成長戦略が描きづらい」理由で再建困難という結論を出しておりますが、平たく言うと売上が半分に下がってもそれ以上に資本の圧縮と販売管理費の削り込みができれば黒字化は容易です。連結で2兆円あって、P/Lで見たときの(多少の決算書上のトリックはあるにせよ)粗利益はなんと… という不思議な会社、それがJALなんです。粗利益に貢献しない部門をどれだけ”合法的に”削れるか、それが政府スキームの勝算を考える上で重大な点です。

 ただ、この話はあくまでP/Lベースでの話で、残る負債をどう返すんだよということと、そもそもそんなアクロバティックな経営が稲盛先生に可能なのかという話になるわけですけれども、むしろ再建の道筋自体はガースナー氏のIBMか、アイアコッカ氏の旧クライスラーの建て直しに似ていると思うのです。ああ、あの話かと思った経営史ヲタは偉い。ぶっちゃけ、ネクロマンサー稲盛的プロセスを取れば、もともとの売上のボリュームはあるのでどうにかなっちゃうんですよねー。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/materials/?mn=0000032475

 もう少し話を膨らませると、同じくビッグな売上高を持ちながら利益面では微妙極まる日立製作所グループや、東芝、富士通といった、日本経済のレガシーが服着て歩いているようなところは本気でV字回復させようと思ったらブレーキを地べたまで踏み込むだけである程度の効果が出てしまう状況にあるとも言えます。やれるかどうかは分からないけれども。労働組合もあるしな。

 なので、経営的な問題や、数字の状況よりも、何より稲盛さんが民主政権のバックアップのもとでどれだけ労働組合を蹴散らせるか、奴らの年金や労働者の退職金や雇用そのものに踏み込んで黒字まっしぐらのリストラを敢行できるのか、に尽きます。整備費や機材費といった、保有資産の質や運行に関するノウハウを損なわずに、本業以外にぶら下がっているあらゆるコストを削り落とすことが重要で、核になっているビジネスプロセス自体のリエンジニアリングというか再設計ができれば、それなりの速度で再建されるのではないでしょうか。

 もちろん、私は失敗すると思っていますけどね。うふふのふ。一緒にみずほFGも業界再編の具になって、笑いの渦中の真ん中でずっとくるくる回っていて欲しいです。