ぐっちー@山口正洋さんがJALの件で。

日本航空については言わねばならぬことがどうしてもひとつある。
http://guccipost.jp/cgi-bin/WebObjects/12336a3d498.woa/wa/read/sq_12626e75aa3/

 原則としてはごもっともなんですけれども。
[引用]再生委員の調査によってもJALが数年前から債務超過(つまり倒産企業)であったことが既に明らかになっている。最後のファイナンスは2008年6月。問題が表面化したのが昨年9月、この時点で政府の支援が決定した訳だから、たった1年で5000億以上の債務超過に一気に陥るなんてことはどうみても説明不可能でしょう。2008年6月の段階でアウトだったことは明白です。

 当時主幹事だったみずほから来ていた増資資料を見るに、当時238円だったJALの株価の正当性に触れており、DDを行うなかで会計上適法だけれども解釈のことなる幾つかのパターンが例示してあって、機材費等の計上にあたっては経営継続上困難が伴う(=要は、もう債務超過で資金繰りしないと倒れるので、増資の趣旨を読み返してね)という注記が書いてあります。

 これを読み落として、社債型の増資に応じるのは素人であるし、日本航空が提示した別添「経営再建に向けての事業計画」のフィージビリティは投資家側の判断に委ねられている部分が強いと思います。DDの内容から考えて、みずほ証券が微妙だった、資産評価に手心を加えた、とはちょっと思えず、少なくとも08年3月末の段階で計上されている資産の有効性に疑義ということから最大で当時すでに3,200億円ぐらいの債務超過に陥っている可能性は指摘されておったと思います。

 むしろ、再生委員の調査において数年前から債務超過に陥っていたと断定できる部分というのは、まあいまだから言えるよなというのと、どうせ整理入れる方針になるのなら厳しめに数字出しておこうという何らかの配慮はあったのかなあと思うわけですけれども。

[引用]これに口をつぐんでいるなら、当時の金融庁、金融機関、東京証券取引所関係者は全員違法取引もしくは詐欺罪で逮捕するべきで、さもなくば税金投入はあまりにも国民をばかにしていると言えましょう。

 これも、原則論としてはその通りなんですけれども、資金調達を行うにあたってその内容は金融庁や東証が審査したわけではなく、また内容も前述の通り「こんな馬鹿な内容だから増資しないと死んじゃうんだね。だからこの金利か」と思える記述で、まあ苦しい会社の社債発行はどこもこんな感じじゃないかと感じます。

[引用](中計の)業績の上方修正をして発行しているではありませんか!!

 08年中間期は営業利益が増進したのは事実で、決算方針は中計ですから変更されないので上方修正されるのは仕方ないと思います。

[引用]「第3者割り当て優先株発行」と書かれているが実は転換価格の下方修正条項が付いており、これはMSCBに他ならないこと。それをきちんと説明した報道、および資料が一切見つからないこと。

 交付価格が250円の、3年後から転換可という建てつけの無議決権優先株であって、MSCB的ではあるけどMSCBそのものではないかなあと。まあ、より「性質が悪い」という見方もあるし、そういうリスクもある商品になっているから利息が高いといわれても、しがらみのない普通の投資家はあまり取りに逝かなかったんだろうと考えますと、結果的に幹事証券が嵌め込みやすい事業関連企業に持ち込んだのかなあと妄想。最終の割り当て表と発表を見ると、利害関係者ばっかりなのがまたアレですけれども。

[引用]本件MSCBにはなんとTIBORプラス300BPの利息が付いていること。2008年に発行されたCB,社債の中で圧倒的な高金利が付されていること。

 そりゃ最終局面で転換価格が半分になるリスクのある商品であれば、この程度の高金利に惹かれて投資判断をする投資家は素人だと思います。ソフトバンクのホークス債を買ってしまったり、オリックスの不思議調達を触ってしまうレベルじゃないでしょうか。

 当時のJALは自主再建中だったのであって、経営困難な状態で成長性のない航空市場で劣化した機材と高額なレガシーコストを背負ったまま調達をかけていたのですから、投資家側が「JALだから潰れないだろう」という根拠レスな信頼感でも持っていない限り、常識的な投資判断の範疇では手を伸ばさないのは事実かなあと思います。

 実際に投資しちゃった会社さんが、「なんであんなファイナンスを持ち込んだんだ」と怒るのは分かるんですが… 断れよ(笑)。

(追記)

 あんまりおちゃらけではなく、ガチにそういうことかなと感じる評論だと思うんですけれども、とりあえずご参考。

JAL年金の変更決議が示すこと
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100113