最近では「えっ」と驚くような雑誌の休刊が立て続けにあって、その中で新潮のフォーサイトも休刊の憂き目に。去年、休刊発表のメルマガが送られてきたときは目を疑ったけれども、まあ赤字じゃしょうがないよなあ…。フォーブス日本語版も終わるらしいけれども、最近はあまり読んでなかったので実情は良く分からん。

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/
 この手の論壇系や調査報道をやってくれる雑誌というのはやはり貴重で、たまに聴いたこともないようなジャーナリストが横から出てきて凄い先読みをやってて、あとで蓋を開けてみたら某新聞社で第一線を張っている記者が匿名で書いていたことが分かったり、逆に本当の新星ジャーナリストだったりということがある。ある意味、ミニコミ誌的というか、登竜門というか、同人で人気を博した人が商業路線に乗ってメジャー化していって上杉隆みたいな龍となってブログ炎上みたいな風情があった。

 いまはそういうのもブログが取って代わって、ブログ発の書き手というのも結構出てきた、とは言いつつも、そういう人がネットから出て、具体的に知名度を獲得していくのはやはり月刊誌や単行本といった紙メディアで活字を刷って、スコアを見てからだ。ブログ発で出たけど一冊目でコケる人はたくさんいる。でも、力のある書き手でもコケる人はどうしても出るし、そういうののバッファとして調査報道を扱ってくれる雑誌は取材費を稼ぐ意味でも貴重だったのだろう。

 といっても、フォーサイトを勝手にこっちが読んでいただけで書いたことは一度もない(本当です)ため、フォーサイトで比較的良く目にするジャーナリストの人と勉強会などで名刺交換すると私だけが「ああ。お世話になってます」状態になるのが何度かあった。こればっかりはしょうがないんだけれども。

 あの手のテイストの月刊誌が少なくなるのはやはり残念で、日本人の記者の目から見たグローバルな記事とかは、やはりAFPやCNNなどで見聞きする下地と随分違う。とりわけ、イスラムに関する態度や共産主義、環境問題など、WASPの延長線上で出てくる論説とは格段に異なるのは読んでいて分かる。日米関係やアジア政治といった使い古されたお題で書かれた記事は、それこそ東洋経済だろうがダイヤモンドだろうが書き手なりの見識以上の差異はなかなか見当たらないけれども、とりわけコアな人しか関心を持たないだろう東欧情勢とかグルジア問題とかだと覿面に問題が出てくる。

 それだけ希少な需要の記事を印刷しているのだから(笑)、赤字になってしまうのは仕方がなかったのかもしれない。というか、ウェブでダルフール問題とかを追いかけると、これだけ自由なメディアで多くの好き者がいる世界なのに、結局出てくる有意義な検索結果は極東ブログばかりだった、という結論になるのだ。1億2千万いて、そういうカルトな趣味の延長線上に重大な問題意識を持って定点観測し続けられ、さらに人に読ませる力のある書き手というのは極わずかなのだろう。

 同じように、最近だと業務仕分けで「外交ジャーナル」もなくなりそうだ。このままだと大学やシンクタンクが発行している定期刊行物ぐらいしか、そういう方面の人の論述の場はなくなってしまうのかもしれない。といって、foreign affairsを読めばいいじゃないか、japan watchで論戦すればいいんじゃないかと言われるけど、それはまたどうなんだろうと。論文が読みたいんじゃなくて、時事と時事に対する判断のよすがが欲しいんだよねえ…。

 その意味で、フォーサイトの休刊は極めて残念なことでした。