まあ織り込み済みではあったけれども、指標的に底を確認できたよねというコンセンサスが出た直後にファクタリング屋がコケるというのは何とも涙を誘います。

米CITが破産法申請 総資産6.4兆円、公的資金焦げ付きも
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091102AT2M0200402112009.html

 公的資金の焦げ付きは2,000億ぐらいが最大で、それほどたいした規模でもないような気もしちゃうぐらい鈍感になってる市場ですが、それよか幾つか別の問題がありまして、まあ困ったものです。ちょっと気になるところもあるので少し真面目に書きますよ。えぇえぇ。
 機先を制して、というか、混乱を回避する目的もあって、オバマ大統領が余計なことをラジオで言っているわけですけれども、要するにCITが近日中(あるいは明日)破綻することを分かっていて、それらが発生したときのマイナスの影響は軽微だ、ということを言いたいと。

オバマ米大統領:米経済は「正しい方向」に進んでいる-ラジオ演説
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aUMeCMo4kcnE

 ただ、実態として言うならば、CDSのトリガーとなってる合成CDOはCITがかなり裏書していることを考えると、イカの記事中で指摘されている3,500億円規模という試算はその数倍以上の短期的波及をするのは仕方がないんですよね。日本で言えば、ある日突然商工中金がデフォルトするようなもんだから、政府がセーフティーネットを枠組みとして作れば大丈夫、というような絆創膏的対応ではまったく太刀打ちができない事案へとシフトするわけであります。

米CITグループへのエクスポージャー有する合成CDOは1881件=S&P
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-10052520090715

 加えて言うならば、これらの金融商品の結構な割合を各国の銀行そのものであるとか、保険会社が自社運用として基礎的資産に組み入れてしまっているケースも多く、リーマンブラザーズ破綻の数ヶ月前に進行したサブプライムローン問題よりも震度も規模も大きい問題を起こす可能性が指摘されることでしょう。

 もういっちょ。

米CIT、破産法適用申請なら欧州合成CDO市場に打撃の見通し
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnJT842786420090714

 記事中、ムーディーズがCITの格付けをジャンクに引き下げたことも付記されていますことにご注意。そもそも合成CDOの裏書できる金融機関は充分な信用状態が長く続くよと、他ならぬムーディーズがお墨付きを与えていたからコアPIFを組めたはずなんです。その舌の根が乾かぬうちに状況が一気に悪くなってジャンクに引き下げるというのは、合成CDOから派生して作り上げたCITのエクスポージャーがCDS市場で3,300億円といってもそのかなりの商品が価値を毀損するんでほんとどうするんですかね、というお話であります。

 ではどこまで波及するの? と言われると、良く分からないですね。凄い勢いで悪くなる可能性が高いし二番底に転落するまでの小康状態をどこまで保てるのかという議論はあるかもしれないけど、CITが破綻する可能性が高かったことぐらいみんな分かっていたことでね。CDSを早期清算しなければならない状況を読んで、処理可能な予算の範囲内で、デフォルトによる早期の混乱に見舞われない資産へのシフトをしている大手が大半ではあるでしょう。

 ただ、話は戻るけど政府保証が行われずCITがこのタイミングで破綻していることをオバマ大統領が政治的に「(アメリカ経済は適正な金融・財政政策の結果)正しい方向へ向かっている」と言っちゃったわけで、本来的には「まだまだチャレンジの途上だ」と言うべきところだったのではないかと、また来るかもしれない危機に向けて、油断なくアメリカ国民は団結するべきとか言っとけば良かったのに、と思う次第であります。

 そういう情勢下で、岡田外相が何となくアメリカ外交にケチをつけて米軍再編や基地移転問題で騒ぎを起こしているというのは興味深いです。たぶん、情勢判断のようなものを岡田外相はあまりしておらず、周囲の進言も聞かないで、独断でやらかしてるんだろうなあと思う次第。まあ、相手が弱っているから場を荒らせるカードを出すのだという作戦もあるのかもしれないけど。