夏の終わりにはてなさんから連絡を戴いて、ライフネット生命の出口治明社長とお会いする機会を得ました。業界では非常にユニークな御仁で有名な方であり、また出口さんとタッグを組んでいる岩瀬さんという人も不思議なお方と聞き及んででいました。

 話ははてなの広告での対談であり、以下の本やマニフェストのカードを貰った以外は100円も貰っていません。そればかりか、家内が保険に入っちゃったぐらいですので持ち出しです。はてなはもう少し金になる話を相談して来い。でも、そんなの気にならないぐらい、出口社長というオヤジの話が異常に面白かったので、ちょっと前ふりでも書いておきます。そのうち真面目に書くと思います。

[PR]パパになった“切込隊長” ライフネット生命保険加入を検討する
http://b.hatena.ne.jp/articles/200910/532


 ライフネット生命の良さは、ネットだから保険料が安くできるというような短絡的な話じゃなく、生命保険という商品がどういう仕組みで成り立ってるのかという問題意識からスタートしている部分にありました。

 対談記事では書かれていない部分ですけれど、保険は保険単発で売るには、利幅は少なすぎる。これでは大手生保が抱えるおばちゃん組織など全体を保つことができないので、保険本来のサービス以外に貯蓄型とか何らか組み合わせることでサービスのボリュームを増やし、利益を確保することで成り立たせている産業のひとつだ、ということを解説されました。

 そこには、お客様から預かった資金を、生保が運用し、お客様の「いざ」というときにどうお返ししていくのかも考えて、長期の付き合いを築く必要があり、おばちゃんら営業の主力から運用から調査から多くの仕組みを組織に抱えて巨大組織へと膨れ上がっていくのが生命保険会社の宿命であったと。

 本にも書いてありましたが、本来生命保険会社ってのは、その人の生活を安全、安定たらしめ精神的な支えを提供することが本筋であるはずで、生命保険にかこつけて多くの金額を貰い受けて貯蓄に成り代わって運用していくサービスまでやるべきなのか、という問題はあるようです。生命保険を生命保険としてだけ考えれば、何のために生命保険に入るのかというのも含めて保険料はもっと手軽であるはずで、安く、かつ堅実に事業を構築できるはずだ、というのがライフネットの事業における基本的な考え方であると理解しました。

 ライフネット生命のマニフェストを見て、まず「原点に戻す」、というのは「ネットだから」とか「ベンチャーだから」という発想の延長線上にはないなと思う部分です。生命保険そのもの、生命保険は何故入るか、生命保険とは何かを突き詰めていったとき、実は非常にシンプルなサービスであり、それをそのまま提供することが安く安全にサービスを提供できるということが分かる。

ライフネットの生命保険マニフェスト
http://www.lifenet-seimei.co.jp/profile/manifesto/index.html

 これは、非常にいい話だと思いました。なるほど、と。

 ただ、それ以上に、出口社長というオヤジが強烈でした。あの文面からは、なかなか伝えることの出来ないオヤジの持つ知性というか、問題意識というものが、生命保険という枠組みからはみ出していきました。私たちは何のために生きているのか、社会はどうあるべきか、政治ってのはどういう最低条件を満たすべき存在であるか、という社会科学全般の哲学の分野にまでオヤジが語り出すわけです。

 生保業界の運用とかには興味があるけど生命保険には何の関心もなく必要も感じていなかった私が、一番興味を持ったのは、他ならぬこのオヤジの知性と使命感にありました。というか、otsuneやdankogaiや真性引き篭もりほかネットで際立つヤバい知性や感性の持ち主に比較して劣らぬどころか鬼の如く熟成されたバランス感覚というものがあって震撼しました。

 申し訳ないけど、私程度では出口社長という人間の凄さを引き出す対談はできないし、伝えられないと思います。