なんかゴシッピーな展開になってきたので、興味深く読んだ。

「バチスタ」の海堂尊氏を名誉棄損で提訴 「Ai診断」で東大教授
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090909/trl0909090828002-n1.htm

 元のブログ、日経メディカル内にあったので、家内のアカウントで読みましたが、元ネタになっていた論文を見ると、海堂尊氏の主張は微妙です。本来は「 まあ、Ai診断は完璧ではないけど患者家族も拒否しないであろうし、CTさえあればだいたいどこの病院でもやろうと思えばできるのだから、死因が分からんまま放置ってよりいいだろ」というレベルの話ですよね…。

厚生労働省科学研究費補助金研究事業(地域医療基盤開発推進研究事業)
http://pathol.umin.ac.jp/sigo/H20/1-25.pdf
 当の厚生労働省の人々が言うには、そもそも海堂尊氏がなぜ、深山教授をあそこまで誹謗するに至ったかが良く分からないとのこと。

 間接的に聴いた限り、もともと、海堂尊氏はAi診断をライフワークで研究しており、千葉大はその分野では進んでいたとのこと。それを東京大学教授に研究助成金ごと「持っていかれた」と海堂尊氏が思っているのではないか、というお話のよう。深山教授は必ずしもこの方面のエキスパートではないから、「横取り」されたと憤慨されたと解釈されるネタらしいです。でも、先にあげた研究事業の報告書自体は、彼からして100点満点の内容ではないかもしれないけど、委託研究としては充分なものなんだそうで。

 問題意識としては、海堂尊氏のそれが正しいとも間違っているとも言えず、ただCTで遺体を診断することそのものは必ずしも正確を担保するものではない、と。全然その方面は知見がないので、私の理解が正確かどうかもありますが、確かに報告書やCTの技術的なもんをいろいろ読んでみたらAi診断は欧米でも死後解剖を行う場合の補助的な手法として紹介されておるのを読みました。

 これって、そもそも医者不足で監察医務院などに医師が充分回らず、結果として検死や死因解明をするマンパワーが恒常的に不足している、という医療業界の「症状」に過ぎなかろう、と第三者的には思います。Ai診断の重要度そのものを否定するわけではないけれども、深山正久教授にブログやネット記事で罵声を浴びせるのはお門違いのようにも感じますし、どうせやるなら論文で反論しろ、と考えてしまいますね。

 …と書いていたら、親切な人から海堂尊氏の論文というか研究発表のダイジェストを頂戴しましたが、まあざっくりいうと「死因の追求をしっかりやりましょう、解剖が困難な場合でもAi診断すれば死因が分かることもあるので」的な内容なので、かえって何でこんなに揉めてるのかますます分からなくなりました(笑)。

病理学会理事に立候補しました!
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kaidou/200908/512040.html

 まあ、どっちにせよ反論できない出版社サイトで一方的に誹謗すればそりゃ裁判になるよな、という世間一般の議論に落ち着く、ということで。医学的な優劣についての判断はつきませんが、出版社サイトでやっちまったことを考えると、深山教授のほうに分があるように感じました。

 ちなみに、家内は「バチスタの栄光」を読んでの感想は「普通に面白かった」そうです(笑)。