出産で多忙というか、精神的に微妙な状況でご取材をいただきまして… 正直、仕組みしか知らないし、人事も菅直人さんがヘッドになるらしい(藤井さんはヘッドにはならないらしい)というところまでしか分かりません。

 構想自体は、選挙前とそれほど変わっていないようなので、読売の記事を読んでもらうとして。

マニフェスト総括「政と官」…民主・次官会議廃止
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/20090825-OYT1T00058.htm
林 芳正 内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 記者会見要旨
http://www.cao.go.jp/kaiken/0907hayashi_y/2009/0728kaiken.html
 平たく言えば、事務次官等会議を廃止して、国家戦略局に予算権限を一本化し、そこに百人の国会議員を送り込みましょう、というのが基本的な考え方でありまして… 問題は、今回当選した民主党百人の議員ってのに、予算を正確に吟味することのできる国会議員はいるのか、という点にあります。民間人で補足しましょう、というのもあるみたいですが… それは政治家主導ではないような。

 大枠で言うならば、予算編成の実務に詳しい民主党の政治家、というのは、ほぼ全員官僚出身者であります… で、官僚から民主党へ政治家として転出した議員さんは、官僚としての能力で言いますともともと微妙な人もおられ、優秀な人も居ます。ただ、現在国家戦略局で予算編成の前面に立って仕切ろうという候補に挙がってる人とか、役人としてはちょっと頼りない人だったので、政治家になって対官僚論客の切り札、とか言われるととても不思議な気分になれるわけです。

 また、それでも(まともに予算編成をしようとすると)人数が足りないので、一年生議員や民間から人を持ってきてそこに充当する可能性もあるわけなんですが、問題は民主党が財源として主張していた9兆円ぐらいを国家戦略会議で大鉈を振るって捻出する場合に、予算は削っても差し戻せなくなっている予算をどうするかですね。平たく言うと、ダムなんて好例ですけど、途中まで建設しちゃってその後は予算なしね、といった場合に、これをナシにするためにはまた予算を組まないといけない。無駄なダム建設はやめろ、というのはその通りで、まったく賛同しますけど、削って終わりという予算のほうが少ないんじゃないでしょうか、そこに必ず法律と事業がセットであるわけですから。もちろん、変な特殊法人とか全部カットね、というのは政権公約で掲げているのだからそれを文句言う必要もないですし、そうなるだろうとは思いますけれども。

 まあ、新しいことをやろうとするわけですから、当然課題も一杯あるでしょう。その課題山積の中、結果を出してもらわないといけないのですが、一番困る部分というのは、道半ばで民主党政権が国家戦略局なる組織による「政治」主導の予算編成という改革が挫折に終わって、強烈な反動が来てしまうことにあります。

 正直、「やってみました」「頑張りました」というのは、こと予算に関しては軌道修正がなかなか利かないので、シーリングや事前の各省庁間の握り合いでいままでやってきた部分もである。もちろん弊害はたくさんあって、役人天国と外部からは叩かれ批判される部分ではあるけれども、官僚機構による確実な予算執行という担保があったからこそどうにかなってきた部分でもありました。

 具体的に、民主党がやってみて駄目になる可能性で言うと、役人より素人の政治家が充分な予算内容の吟味をする時間もなく一律n%削減というような編成をするだろうと思われる点。次いで、結局何の予算だか全部理解しきれなくて、特定の勝手知ったる議員の独壇場になって、百人の政治家どころか数人の政治家で編成を進めて、そいつらが役人に取り込まれる可能性は高いだろうと思われる点。だって目ぼしい人って、だいたい役人上がりかマスコミ上がりで、ブレーンも官邸から指折り確認できるぐらいの薄い陣容で政策提案とかしているんですもの…。

 これらは、民主党が支持を失って、次の政党が「国家戦略局やーめた」といったときに強烈なバックラッシュというかレジーム反動を起こして行政の不安定化が発生してしまう可能性は高いよね、という話でありまして。

 マニフェストに関しては、そろそろ「無理を言ったな」と知られ始めている頃合ではありますが、正直、国家戦略局だけはある程度組織運営に目処が立ってから次の選挙にならないと、本当の意味で国難になる可能性だってあると思うんです。機能しない予算って悲惨ですから。効率の悪い官僚主導のほうが、機能しない政治主導よりもマシだった、なんてことのないように願う次第です。