夏の選挙は初めてなんですってね奥さん。

 官僚から国民のための政治を取り戻す、と民主党代表・鳩山由紀夫氏が言ってましたが、現実的に民主政権になったらどういう政治になるのかがやはり気になるわけです。もちろん、かなりの確率で民主政権になるわけですが、ほんとどうなるんだろうという点では中川(酒)氏の酩酊発言なみに分からないものがあります。

 フォーサイトでCSISのマイケル・グリーン氏が寄せた記事を読んでいると、結構率直に日米同盟への懸念なんてのが語られていて興味深いです。

「民主党政権」にアメリカが抱く「三つの疑問」
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/main_frame/main1_3a.html
U.S.-Japan Relations: Coordination amid Uncertainty
http://csis.org/files/publication/0902qus_japan.pdf
Michael J. Green
http://csis.org/expert/michael-j-green


 まあ、地べたで政治を見上げるような感じで生きていると、どうも英語圏の日本研究は「日米同盟を最大の価値として考える」という軸足からブレてなくて、それはそれで良いことなんだけれども、民主党の各政策をよくよく突き詰めてみると「日米関係の抜本的見直し」というアプローチが現実のものとして見えてくる気がします。

 「気がします」と言われると何だそれと言われるかもしれませんけれども、日本新党が細川政権を樹立したとき起きたことを考えると何となく分かることでもあります。フォーサイトの記事では、かなり正直に民主党の政権奪取後の政策転換の発生と、それに伴う政党維持のパワーバランスの崩壊についてを考えさせる内容が見られます。でも、これ日本研究ではやはり一般的な見方なんでしょうか。

 例えば、本石町閣下のこれ。うーん、民主党政権になって、バランス感覚のある人が財務相になったならば、「外貨準備をドルから何か別のもんにシフトすべき」とか非現実的な言説を吐いて世界経済二番底の引き金を容赦なく引くような真似はしないだろう、と思いたい。でも、鳩山代表自身が、なんか友愛とか言ってうっかりそういう言動を首相として例えば対中国高官に言いそうな気がするのです…。

民主党政権が外貨準備を振り回すと世界経済の超巨大黒鳥なるのではないか、と思った件
http://hongokucho.exblog.jp/11559245/

 池田信夫氏も率直な懸念を。これは文句なくその通りでしょうね。

民主党は「与党」になれるのか - 池田信夫
http://agora-web.jp/archives/694535.html

 各論ではあるけれども、鳩山氏が現実的な感覚はきちんと持ち合わせていそうだ、という明るい材料があるとすると、非核三原則に関する議論なんでしょうが、現実を持ち出した瞬間に、政策レベルで社民や共産と組みづらくなったり、党内融和に苦労するということは見え隠れします。本当に政権の現実的な運営を考える、ということであれば、財政金融だけでなく、ある意味荒唐無稽な民主党の安全保障に対する考え方も大幅な修正を強いられることになるわけで。

「敗北」を織り込む感覚

http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-f3f7.html


 爺の引用したFTの記事が日本の悲惨な現状を物語る。エグイところばかり引用しているので、なかなかツライ。何よりツラいのは、「なんでそんなことをイギリス人に言われなければならないのだ」という無力感ですね。

Japan is dared to defeat the LDP
http://www.ft.com/cms/s/0/1373799c-6fdc-11de-b835-00144feabdc0.html
2009年8月30日衆院選挙に向けて
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/07/2009830-e290.html

[引用] But Mr Hatoyama has yet to spell out a clear agenda: not just on the economy, but on future relations with the US and, just as important, with China. He needs to show he is serious about power.

 はい、大きなお世話ですね。でも、今日NHKや報道ステーションを見た人、今回の解散のニュース解説で、日米関係や日中関係、あるいは大枠としての経済問題に踏み込んで解説していたくだりはありましたでしょうか。報じられたのは政局であって、今回もまた政策に関する話は一切なかったのですよ。

 マスコミが腐っている、という話ではなく、そのような文脈で政治の節目を語るのが日本政治の「流儀」なんだろうと思うんですよねえ。だから、欧米人も日本研究するにあたって、本来疑問に思うようなことが報道の主体にならないどころか、まるで日本人が経済政策や外交に関心すら持っていないように見えるんじゃないかと思います。

 しかし、なぜ国際経済がヤバいとか世界的に大騒ぎでデリケートなところで我が国というのは政治が空白化するのかなあ、毎回。

(追記 00:17)

 ああすいません。内輪ネタが含まれており解説しなければ分からんものもありますね。

 ネタはこれであります。

民主・中川氏:外貨準備の運用多様化を-IMF債も選択肢
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a4ItIQEa62jU

 平たく言うと、民主党のネクスト財務大臣、すなわち次期財務大臣になる奴が「外貨準備の運用多様化」とか、できもしないだけでなく風評を呼んで無用の混乱や日米関係・世界経済の軋轢を巻き起こし、思惑と思惑との狭間でうっかり世界経済が破綻の方向にでも走っていったら「トリガーを引いたのはあの糞ジャップだ」という話になりかねず… ということであります。

 そんなことをやらかしたら、中川氏のコードネームは(女)(酒)に続き(糞)という字があしらわれる可能性が高いわけですけれども、そんな冗談はさておき、この手の機微というのは「官僚から国民にこの国を取り戻す」的な発想の延長線上では絶対に捌けない案件です。というか、財務省・日銀を統括する高級官僚の適切な指導と一体でなければ、財政政策というのは成立しないし、デリケートな外交では特に問題になるだろうと思います。

 で、この中川正春氏、ジョージタウン大学の出身なんですな(笑)。上記冒頭で引用のマイケル・グリーン氏はジョージタウン大学にて教鞭をとっておられる。こういうパイプはしっかり活かし、日本政治を今後支える民主党のあり方について、中川氏はしっかりとグリーン氏に時間を取って話をしておくべきだった、と思うわけです。もっとも、選挙戦が始まってしまういまからでは、ゆっくり日米同盟の価値の確認や経済政策の見解交換をするなんていう時間はなさそうですけどね。