日銀がハイブロウな記事を上げていましたので…。

国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf
 内容はお通夜の式次第のようなもので、オーソドックス、かつ、市場感覚とのズレもなく、過不足ない感じでまとまっています。まあ、分からない人は「戦争はこれからだ」的に考えていただければありがたく。

 本件が病気のメカニズムの解説だとするならば、個別事案は紛れもなく症状ということになります。二週間か三週間ぐらい前に面白経済問題を扱っているうちに抜き差しならない記事も出てくるようになりましたのでご紹介。

米ノンバンク大手のCIT、破産法申請も 米紙
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090713AT2N1300N13072009.html

 結構前から心配されていた米経済の最も「弱い輪」が破産法とのこと。産業セクターに対する影響が甚大で、借り手保護とか言い出しちゃうともう収拾つかないですね。どうするんでしょうか。

 これから、ノンバンクが仮に一部救済とかやられ始めると、今度は州年金基金の破綻とか、カリフォルニア州以外の財政うんこ州のデフォルト気味ニュースが出てくるのかなあと思うわけで。

米財政赤字、初の1兆ドル突破 09会計年度、9カ月累計で
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090714AT2M1400H14072009.html

 オバマ大統領の決死の覚悟で当面の経済危機は乗り越えてみたものの、乗り越えるためにかかる費用をどう捻出するのよ奥さんという事案がこれ。1兆ドル突破ですが、これは09年度の赤字額の類型に過ぎず、当然これからCITも含めていろんなもんが破綻したときに大なり小なり政府支出を伴う対策を採るわけですから、危機がおわるころには10兆ぐらいになっているかもしれないし、数兆で済むかもしれない、これは誰にも分からない、という話になります。

 これ一発でドルの信認が揺らぐのどうのという言説も一部で飛び交っていますが、まあ他の代替通貨については以下記述の通りクソさ加減では似たり寄ったりなので、あんまり説得力はねえなあ、と。むしろ、信認は低下しているのにデフレでキャッシュの価値は上がるという不思議な現象が続くと、それこそ池の中の鯨同様に日本、中国の膨大な外貨準備の取り回しや長期金利の変な動きが出たりして、人類初体験の経済ジェットコースターが実現するのかと思ってしまいます。

 絶対、金本位制に回帰しようとか言い出す奴が出る。

中国の国債入札、今週2度目の札割れ-資金供給の抑制観測で
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003011&sid=arlZ3AKzjsBE&refer=jp_asia

 で、ここにきて俄然注目される中国経済なんですが、また曲芸みたいなことになってます。本来ならとっくに破綻していると思うんですけどねえ。でもどうにかなっちゃってるというのは、中国政府というのは経済運営が物凄く優秀なんだろうと思います。これ、皮肉とかじゃなくて、ガチに優れていますよ、中国の経済閣僚の差配。

 その中国の国債入札が札割れに。外貨準備高は積みあがっているけど国家財政は火の車で、経済成長は6%台キープであるにもかかわらず新規の融資激増なのに短期金利が上がってて引き締め観測が出ているという訳の分からない状況に。これを中国経済雑技団と言わずに何と言うのだろう。

 もちろん人民元にドルなみの信認などあるわけなく、破綻しそうで破綻しない状態のまま、ブックメーカーの対象になっているような感じですけどね。

欧州、赤字国債が急増 独は10年11兆円、仏も年内に追加
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090713AT2M0601S12072009.html

 国内メディアがようやく報じつつあるのがこれ。欧州ヤバい。EU加盟の財務条項で縛っておきながら、財務の健全性が確保されづらい状況で不況がやってきて直撃、経済蓄積の弱い国同士が経済破綻の共鳴を起こしながらEUの盟主国である独仏の経済の足元を侵食してピラミッドの頂点から凹んでいくパターン。

 中国みたいに「手続きなどどうでもいいから、打てる手は今日にでも打つ」のと違い、経済政策の手足をお互いに縛りながら、一大経済圏になってアメリカに対抗した極を形成しようという実験がEUなのだから、山頂の景気が失速すればそりゃあ即座に問題になりますわなあ…。

Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and continues with £125 Billion Asset Purchase Programme
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/059.htm

 経済危機という観点では、もはやうんこ山盛りの状況になっているイギリスですが、なんかもうぐちゃぐちゃです。「買い入れプログラムの期限を延期するかは期限が来てから決めるお」とかいって、アテにしないと生きて逝けない政府受注が主力の民間各社が総じて涙目の状況であります。

 まあ… もはや打つ手もないから国内政局もしっかり見極めて最低限の対策だけでもきちんと講じながら状況が好転するのを待とうか、という話なのだろうと思います。が、今回は時間が解決する性質の問題ではなく、むしろ皆で悪化していく世界経済の中で誰にうんこをたくさん喰わせるかというマイナスサム・ゲームでありますから、世界的な需要不足を打破するために何をすべきか、という話になるんですよね。

 結局、需要不足なんだから、じゃんじゃん政府支出増やして需要を作るか、劣後の経済圏を椅子から蹴落として供給を削るか、あるいは戦争でもさせて一発解決を目指すか的な話にならざるを得ないんでしょうね。

 ロシアやシンガポールの話もあるけど、時間が来たのでまた今度。