思いのほか、良記事だった。各メディアも、中立的にこの問題について議論する素地を作るべきなんじゃないかなとも漠然と思ったけど、私自身はSNS業界自体あろうがなかろうがあんま関係ないので、どこまでも興味本位のお話にならざるを得ないのが難点ではあるが。

【必読】出会い系規制でSNSを標的にする「ボタンの掛け違い」
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/trilemma.aspx?n=MMIT06000020042009&landing=Next
【必読】平成20年中のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h20/pdf45.pdf
 本記事の執筆者である楠氏の問題意識はとてもよく理解できるし、正常だと思う。太字は楠氏の記事の引用。

出会い系サイト規制法で取り締まるのは、手っ取り早い性的関係を目的とした出会いを仲介するサイトの運営者に限定すべきだろう。

 仰る通りです。もちろん、関連法の解釈に幅があるので運用面でどうとでも取れるよねという事例はこの件に限らず沢山ある。要は警察庁がSNSサイトも出会い系サイトと同じぐらい未成年買春の温床となっている事実関係に業を煮やし、民間業者で結成したEMAに善後策を任せてみたもののうまくいかない(被害が減らない)ことを問題視して、じゃあ本人認証の徹底とか強く求めていきましょう、というお話。

危ないのは「出会い系サイト」だけではない、警察庁が被害状況を報告
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Research/20090220/325179/
法律の解釈基準

http://www.npa.go.jp/cyber/deai/law/images/kaishaku.pdf

研究会報告書
http://www.npa.go.jp/cyber/deaimeeting/h19/doc0/deai_houkoku_gaiyou.pdf

 出会い系サイトの規制が実質的に強化される前から、平成20年度中すでにSNSサイトなどでの児童買春が「主流」になっている。本来なら買春目的で使われる頻度が低いはずのSNSサイトだが、モバゲーやGREE、mixiの三大SNSで未成年が事件に巻き込まれて被害者となる事例が後を絶たない。警察庁としては、裏も表も特になく、事件の温床になっているのだから関連法規を総動員してでも被害者が出ないようにしよう、と動くのは当然かな、とは思う。

 懸案は山ほどある。楠氏が概ね書いちゃっているのでフォローアップ程度に留めるけど、まあ曖昧な法律で適当に摘発するってんでいいの、とか、海外鯖に置かれたらどうするんだ、とか。どれも被害実態が明らかになれば、どうとでも摘発するんだろうけど。実際、児ポ関連では海外鯖のほうが摘発率高いわけであるし。

 やはり気になるのは、そういう不健全な実態による被害が常態化しているサービスを展開している会社が、一部上場とかしちゃってる事態そのものをどう着地させるのか、ということ。パチンコ屋は上場させない、風俗など公序良俗に反する企業も駄目、と制限かけてきた市場が、気づいたら売春被害者百人単位のサービスを堂々展開している企業を一部上場させちゃってた、という。

 だからこそ、この問題を収拾するために設立したEMAがきちんと機能していれば、もう少し時間は稼げたのかなあという気もするのだが、相応の努力を関係者が払ったにも関わらず、警察庁が期待するほどの成果は挙げられなかった、と。そりゃ、何事か起きる可能性は高いでしょうね。で、議論はまた周回を重ねて元に戻る…。

 児童の犯罪被害を防ぐには、ネットを悪用した児童誘引などの手口を法律で禁じ、児童を標的とする犯罪者を取り締まるべきだ。例えば児童買春を防止するのであれば、出会い系サイトに限らず、面識のない未成年を誘引する書き込み、児童買春を誘引する書き込み、ペアレンタルコントロールを回避するために虚偽年齢でサイトに登録する行為を法律で禁止し、発信者情報開示のための手続き簡素化など摘発強化へ向けた枠組みを考えてはどうか。

[話題]警視庁:出会い求める携帯書き込み、「ミクシィ」に削除要求

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090404#1238850331


 問題となっているのは未成年の買春をどう防ぎ、被害実態の最小化に業者とどう連携しつつ安全なネット社会を実現していくか、という方法論の問題だと思う。だが、被害者が出る経緯や積み上がった非出会い系サイト経由の検挙件数を見るに、そう悠長なことも言っていられない、去年からこの話して対策を求めてきたのに、20年度もこれだけ被害が広がっているのであれば業者に対して強い指導をしていかないことには被害は減らない、と判断をしたのだろう。

 個人的には、もう各業者に対してそれなりの議論やヒヤリングも重ね、警察庁をはじめ総務省や内閣官房の意向も各社経営陣は知っているわけで、いずれSNSに規制がかかって本人認証に高いハードルが課せられ、メディアとして実は不健全だった、という事例が沢山出てくるなどして、業績低下がある程度予見しうる段階となって、上場しているこれらのSNS企業のシェアホルダーがインサイダー気味に株式を処分してしまおうとすることを気にしているんですけどね。

 野次馬としては、どちらの言い分も良く分かる以上、実に面白い。紅組も白組も頑張れ。