民主幹事長の鳩山由紀夫氏と、総務相の鳩山邦夫氏の兄弟アレゲ対決が非常に香ばしい。ヤバい。いや本当。
○ 兄者・鳩山由紀夫氏、ニコニコ動画で十字砲火を浴び炎上の巻

 リベラルな兄者にとってはニコニコ動画は敵地でありまして、党本部としては変な罵声や問題発言の応酬にならないよう気を遣ってあれこれ準備しておくのが筋だ。でも丸腰の兄者がニコニコ動画に持論一丁で突撃、ネット住民右派のクロスファイアを全身に浴び、全弾命中で壮絶大炎上大破、という感じである。

 ネット右翼的世界観からの総括は痛いニュースでも読んでもらえれば分かるとして。

民主・鳩山幹事長「日本列島は日本人だけの所有物ではない」「定住外国人への参政権付与は当然。韓国は既に認めている」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1251765.html
YOUTUBE版
http://www.youtube.com/watch?v=1BBomcbCy_s

 問題発言というけれども、内容だけ見ると民主党左派が従来から主張している議論を踏襲しており、むしろ新味のない内容。新しいというと、兄者が「自分の主張は理解されていない」と実は感じていて、それは「日本人に自信がないから」であり、彼は「日本人に余裕があるなら、地方参政権ぐらい認めてあげていいじゃないか」という論流れ。そうか、兄者は日本社会がリベラル的な言動を受け入れていない(あるいは少数派である)ことは理解していたのか…。むしろそっちが新しい。フラワーといえばフラワー、リベラルとしては筋金入りということだろう。

 本来なら、党本部が非支持層に対して政党幹部が何を語りかけるべきかという筋書きを用意するべきなのだが、党内で話の分かる人同士の話し方のままで、おもむろに敵地侵入して炎上というパターンが多すぎる気がする。言質取られ放題である。もう少し言い方を考えたらいいのに。鳩山兄者であれ小沢さんであれ菅さんであれ怖くて物言いできないのか、言っても理解してくれないのか分からないが、党の事務方なり学者なりが通常なら想定問答を幅広く作って、場合によってはサクラも混ぜ、最低でも賛否両論のように見せないとメディアコントロールにならないだろうと思う。

 もちろん、リベラル的には、「日本列島は日本人”だけ”のものではない」というのは事実で、そこに暮らすすべての国籍の人たちが等しく地方に参政し、特別永住資格のような実質的な”二等国民”に対する差別を撤廃していくことが、日本のためでもあり、人口の減少も含めて考えれば移民も奨励して国籍や肌の色、思想信条を問わず仲良くやっていくのが望ましい、なぜ日本人は日本人だけで固まろうとするのか、という… まあ理想論ですわね。彼らの考える国益そのもので、そこはブレてない。驚くべき論理一貫性である。賛同はしないけど。

 で、それを支持するかしないかは、日本の有権者にかかっていることも兄者は分かったうえで、リベラルを布教する宣教師のような使命感で政治生命を賭けている。ある意味、非常に見上げた根性だな。目の前にいる有権者が「お前の意見は理解できない」という場所へ、分かっていながら突撃してくるわけだぞ。まさにミッショナリーだ。加えて、政治家としてピュアだし頭もいいし、確かにああいう純粋な人でもない限り政党幹部は務まらないだろう。その意味では強く評価指定医と思う。支持はしないけど。

 当然、リベラルからすれば野蛮である民衆を「教導」して、正しい方向に導こうと考えるはずなので、兄者は今回もこの程度のことではへこたれないだろう。こういう場合、批判的な言動は彼にとってエネルギーであるから。問題は、マジに日本国民の相対的な民意から外れていることなんだけどね。

 だから、永住資格のある外国人の地方参政権を求めている政党が民主党と公明党であり、前者は不人気な兄者が旗を振り、後者は宗教団体が母体であるという点で、敵の親玉がクズだということで救われている面はあるだろう。だって、大勢にはならないもの。

 リベラルに人材を得て、例えばペリクレスみたいなのがポピュリズム式に開放政策にスライダーをシフトさせたら、それはそれで大変なことになるんだろうが、いまの民主党だとあんま考えづらいね。

○ 弟者・鳩山邦夫氏、総務相として権勢を振るう、の巻

 兄者がある種「頭が良すぎて」周囲が見えずリベラルに驀進してニコニコの大地に散ったのに比べ、弟者はまたちょっと特殊な感じが。日本郵政をぶっ叩いてみたら、意外に国民の反応いいじゃん俺イケてるじゃん風の味のしめ方をしてしまったのか、日本郵政だけじゃなく通信界隈や旧自治省方面にまで玩具化の様相で困惑中。

 まあこれも、従来の「国会議員・鳩山邦夫」の過去の言動からすると、それはそれで一貫しているので否定するわけではないのだが、兄者と違ってこちらは後から出たポピュリズム式に竹中流規制緩和路線をひっくり返したり、出会いサイトで被害を受けた児童を即刻救済せいみたいなことを後先考えずに言い始めるので困る。

 総務省というのはある意味でスーパー官庁であって、そのトップである総務相は自ずから権力が集中し、やろうと思えばかなりのことをできる力を持っている。また、弟者も決して馬鹿ではないし先が読めないわけではない。でも、政治家としてのカタルシスの方向は、どうやら「皆から愛されたい」という、何ともデリケートな思春期の不細工ボーイな感じだ。あれだと、下で働く総務省のお役人は疲れちゃうだろう。

 そうでなくとも、外資がタワービジネスに参入してきて、気がついたら大NTTとその他、みたいな情勢に回帰しかねない昨今で、そのトップが「国民のために通信費を安くするんだ!!!」みたいな程度のことを言う大声の人だと総務省としては思惑が外れて涙目である。誰だ、そんなのを任用したのは、というと麻生太郎さまなので何とも言いづらいところだが、改造する暇もなく9月突入とかだともう目も当てられない。

 ちょっと前まで、麻生降ろしだとか政権交代を目指して国会空転予算決まらずとか喚いてたのに、この変わり果てたのち見えてきたのはびっくりするほど微妙で確信犯風情のアレゲな権力者兄弟だったというのは実にこの国ヤバすぎる。メディアコントロールとかってレベルじゃねーぞ。