もはや栃木の顔はU字工事であると声を大にして申し上げたい。
 前置きはともかく、帰りしな渡辺氏が離党届を出して方々へ檄文を送りつけたというので、サイトへ見物に逝った。長ぇ… 分かりやすいように四文字熟語あたりに凝縮して結論だけ伝えて欲しいのだが、要するに「馬鹿野郎」ということのようである。

 頑張って読んでみたけど、何か「俺がやった公務員改革をひっくり返しやがって、馬鹿野郎」という風にしか感じない。その意味では、あんま読む価値がない。でもまあ、正論の人であるようだし、まあなるほどと思う部分も大であるので、暇人や好事家は全文読破推奨。

 私の立場は、基本的に定額給付金とか正直どうでもいいから、さっさと予算通して欲しいという一点である。どうでもいいじゃん、定額給付金。予算から切り離せ、ったって、そんなもん総合経済対策からすればたいしたお題の話でもないだろう。だから、定額給付金の是非に拘って、挙げた手の降ろし時を間違えた麻生政権もセンスねえなあと感じるし、徹底抗戦とかしてる民主党や社民党は早く死ねと思います。

 もう一度言う、 早 く 予 算 通 せ 。 

 なお、渡辺氏のサイトトップに何故だかご近所溜池通信のバナーが貼ってある。知識人たるもの、犬は放し飼いにするべきではないと声を大にして言おう。

http://www.nasu-net.or.jp/~yoshimi/

 以下、珠玉の作品群を堪能されたい。

○ 2009/01/09 麻生総理へ公開質問状
http://www.nasu-net.or.jp/~yoshimi/2009/090109shitsumonjou.html

<寸評>

 内容としては、天下りに関する渡り斡旋に関することばっかりである。話が前後してて何だか良く分からないが、閣僚が知らないうちに法案が骨抜きにされてどうしてくれるんだ馬鹿という話であって、あんま麻生首相自身が重要法案でないと見切りまくった状況を憤怒の気持ちで詠みあげた長文。

 新聞が観測気球気味に当日朝刊で「渡り斡旋は廃止へ」とフライングしたのが、現場で覆ったのがお気に召さないらしい。「官僚専制内閣になってしまったのでないか、との疑いを禁じ得なかった」というあたりは日刊ゲンダイを超える感傷的でダイナミックな叙情が、読む者の心に北風を吹き込まずにはいられない。

 何より、長文の結びに「私が先日申し入れた7項目の提言は全面的に否定された、と判断するよりほかない」と書いてあるが、現実に渡辺氏の発言は全体に何の影響も及ぼさず結果として全否定されているという諸行無常が響き渡る。

 お前が勝手に首相に直訴、提言して、もう話は別の事情で動いてるのでいまさらどうにもならぬ、ならぬのは分かってるけど麻生首相にはとりあえずキレておこう、相手は不人気だし、という大人気なさが良い。素晴らしい作品である。

○ 2009/01/05 麻生総裁へ物申す
http://www.nasu-net.or.jp/~yoshimi/2009/090105monomousu.html

 その呼び水になった、全否定文書がこれ。序盤に、また叙情的な前口上が二段落ほど枕になって並んでいるのが美しい。時候の挨拶の長文バージョンと言えるだろう。

 そんで、いきなり2兆円の定額給付金の話に辿り着く。反対であるらしいが対案はない。微妙なところだ。で、予算案の硬直化の話に繋がって、ようやく本題の官僚批判開始となる。「官僚内閣制のもとでは、総理大臣は誰でもよく、使い捨てを常とする」とか政治学者もびっくりの面白定説が提示され、天下り批判は雇用能力開発機構に及ぶ。まあ、言いたいことは分かるけどね。

 勢いあまって「100年に一度の大津波に際しては100年に一度の危機管理プランを作り、100年に一度の政治体制をもって実行せねばならない」とか書いちゃうあたりも興味深い。金融対策のような緊急性を要する危機管理の話と、政治体系の転換のような広範な政治過程を伴う日本の社会構造そのものの話と、長短丸ごとちゃんぽんにしてお前は長崎人か。

 で、提言7か条。こんなのまともに議論して体面が保てる麻生政権だったら、ここまで支持率が低迷することもねえだろうがよ。つーか、自民党内から「とっとと解散しろ」とかって、お前が選挙に負けなさそうだから「次は俺様が再編の軸だぜベイベー」とか思ってるに百ディナール。まさに一流スタンドプレイヤーとも見紛う良い議論である。

○ 「麻生内閣は霞ヶ関守旧派の代弁者」 渡辺元行革担当相・離党声明の全文
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090113/plc0901131619008-n1.htm

 そんで今日。なんかいきなり偉そうな前説あり。序盤が黄巾の乱で張角が「蒼天已に死す 黄天當に立つべし」とか言ってたのとカブる。三国志ネタですみません。序文を読むに、「国民は官僚の代弁者麻生政権を打倒する運動をしましょう」という話らしい。早期解散を否定されたので離党、とか言ってて笑える。お前が首相になったら存分に解散しろよ、とか言われそう。

 天下り根絶すべし、と主張するのは良いとして、現役の中央官僚は給料が安くて、それは退官したのち天下りしないと生涯賃金が低くてとてもじゃないけど良い人材が集まらない、というあたりは無視なのかな。むしろ、馬鹿しか官僚にならなくて行政が間抜け揃いという状況のほうが怖いようにも思うわけだが。

 その後、党利党略批判になるが、そりゃ党利党略を詰れるわなあ、個人で好き勝手言ってるんだから。選挙に強いとは羨ましい。楽しそうで何よりです。

 とどのつまりは、渡辺氏自身が手がけた行政改革が今政権での重要度下落とともに棚上げ、骨抜き、先送りを受けて、政治家としての信条というよりは己の功績を否定されたことによる逆ギレなのかしらと思えます。もちろん、せっかく手がけた仕事を否定されて嬉しい人間はいないだろうけど、とっとと補正予算通して景気対策をやらなくちゃならない状況で後付け式に「定額給付金と切り離せ」と無関係の渡辺氏が言ってもねえ。それこそ、役人や政治使命とは関係ないじゃん。

 政治家の義命というならば、議会民主主義の原点に返って党議拘束は守ったほうがいいと思いますし、自民党の看板背負って出馬してきたんだから金を返したらどうですか、と感じますね。

 一方で、渡辺氏は良く知っていることだろうと思いますけど(渡辺氏の手がけた)行政改革の中身というのはポスト新自由主義経済の現在においては、地方分権を実施したり機動的な行政を行うために必要な「パワーだまり」というか権力の源泉のはずです。また、前にも書いたけど天下りを禁止するのであれば、高級官僚が優秀な日本人の人生を捧げるに足らない職業となるなら中央官僚が使えない人の吹き溜まりになることは警戒して然るべきだろうと考えますがね。

 天下り禁止、渡り制限という国民には分かりやすいパフォーマンスの札があるからそれをかざしているのだろうが… 渡辺氏は檄文読んでても口触りの良いところしか書いてない。これは政治家としての信義はどれだけ全うしていると言えるんでしょうかね。

 実際問題として本当に必要なのは各省庁を横断して機動的に行われる人事であったり、中央と地方の政策刷り合わせ&地方に役立つ行政組織の策定だったり、官僚と民間の人事交流をそれこそ一般企業同士の転職ぐらいに回転ドア方式に柔軟にするといった実効性のある内容でない限り意味がないでしょう。

 渡辺氏の行革プランのなかで、こういった実利のある議論では過去に結局譲歩しちゃってるから、いまこの程度のことしか言えないのかなと残念に思います。また、民主党との連携といって、自治労など民主党固有の支持基盤との調整を考えると、単なる自民党かき回し要員みたいな扱いになってしまう危険性は高いんでしょう。それでも、沈み逝くように見える自民党から一足先に離党することで存在感を示した、というあたりの計算はどう出るのでしょう。結果はともかく平沼さんもW亀井氏もそのぐらいのことは考えていたとは思いますけどね。

 一般論ですが、これ以上国民新党みたいなのが増えてもしょうがないので、渡辺氏には頑張ってもらいたいと願っております。