奥さんが観たいというので借りてきたんだが… なんだあれ、クイズ・マジックアカデミーのパクリだっ!
 冗談はともかく、二度観た感想など適当に書くと、捨て子が伯母夫婦にいびられて暮らしているところからスタート。普通はあの時点で人間曲がると思うんだけどな。伯母夫婦のクズすぎる人間性に感動を覚えたが、ハリーの母が魔法使いであることを忌みつつ受け入れてるあたりがすげーぜ。どうせなら従兄から受ける虐待描写はもっと暴力的であるべきだと思った。殴る蹴る方面の。

 で、なんだかんだあって魔法学校に入学する。この時点でハリーの両親が偉大だとかいう理由で特別扱い。いきなり皆の人気者、ハリー。そんなら虐待受けてるころからちゃんと大人が目をかけてやれよ。あからさまに怪しいターバン男も登場。魔法学校に向かう途中、冴えない親友候補と性格の悪い幼女らと合流、さらに、またしてもあからさまに性悪な同級生もライバル風に出てきてベタ過ぎて萎える。もっとも、たいした力もなさそうで適当な嫌がらせやチクリ程度のことしかしないのが何であったが。

 入学してさらに特別扱いされて、偉そうな校長自ら説教を垂れたり先生から庇護目的のアイコンタクトを受けたりやりたい放題。普通はそこまで明確なご贔屓が公然と行われたら、絶対そいつは靴隠されたりカバンにうんこ入れられたりしてイジメられる運命にあると思うのだが、特にそういう風情も感じられず学生生活をエンジョイしてるようで腹立つ。同じく腹立つほど根性が湾曲気味なヒロイン風幼女は「性格が悪いから友達がいない」と侮蔑されて便所で泣くというあたりは溜飲が下がる。

 ルール説明からして全然面白くなさそうなスポーツでハリーが危険な目に遭ってるけど、なんか魔法をかけて殺そうとしたとかいう話ってさ、先生勢ぞろいで試合観戦してるのに誰も誰が危険な魔法かけてるのか気づかないもんなの? お前らは魔法をかけることには才能あるけど魔法がかけられていることを見破る能力はないんですか。校長もそこにおってただ心配しておろおろしてるだけという不始末。偉大な魔法使いという扱いになっているようだが、現実ではただの耄碌した枯れたジジイに過ぎないのではないかと思う。早めに生前葬をしておいたほうが世の中のためである。

 で、学内に隠された賢者の石とかいうアイテムを、ハリーの両親を殺した存在が捜索して回っているという話になり、見るからに悪党然とした鹿賀丈史風の黒ずくめ教師がハリーとその友人間では犯人扱いに。映像では状況証拠ばかりが並べ立てられてて不自然極まりないし、確たる証拠は何もないというあたり作為的なものを感じずにはおれない。

 学校の護衛というか門番のおっさんが騙されて、賢者の石を守る仕組みをバラしてしまったため、この賢者の石を守るためにハリー一味が活躍するわけだが、後から思うとターバンのおっさんを疑ってやまない鹿賀丈史こそ、その賢者の石を盗む企みを阻止しうる第一人者だったろうと思う。ここで働かずしてどこで活躍するのだ鹿賀丈史。

 あれこれあって、賢者の石を手にしたハリーをターバン男が襲うんだけど、なんであいつ石になって死んだの? 良く分からない。つーか、ナイフとか拳銃とか気の利いた武器のひとつも持って来いよと思うし、お前ら魔法使いなんだろ素手で首を絞めに逝くな馬鹿と。逆にハリーがナイフ持ってたら返り討ちに遭うだろうが。そしてハリーも武器とか何の準備もしていないという。興ざめすぎる。どっちもどっちだバカタレ。最終決戦なんだから、ちゃんと殺しあえよ。とりわけ、悪党側の手抜かりが許せない。あそこまで用意周到に計画を立て賢者の石を手にする企みを築き上げているというのに、最後の最後で丸腰の子供一人殺せないという、そんな詰めの甘いやり口で作戦を失敗に導くなど、工作員としての才能に重大な疑問を感じずにはおれないわけである。せっかく「ハリー・ポッター討ち取ったり」の好機だったというのに。

 もっとも、あんなところにハリーがのこのこ登場しなければ、鏡から賢者の石を取り出すことはターバン男にはできなかったわけで、賢者の石を欲しがらない人間が必要なこの仕掛けを永久にターバン男は解くことができず、校長も出張から帰ってきて悪事は露顕しただろう。そのままターバン男はとっ捕まり、身に覚えのない疑惑を勝手にかけられてコケにされた鹿賀丈史もマントを焼かれることもなく、賢者の石も砕かれずにいつまでも鏡の中にあり続けたことだろう。そう考えれば、一連のハリーがやったことはすべて「余計なこと」であり、お前がいなければ本件は事件化することもなく終わっていたことだろうと思われる。

 最後は、何か校長がハリーらの知恵と勇気を讃えて丸く収まって一件落着という不思議な事態が。おい、教師が一人、ハリーに石にされて殺されたんだぞ。そこに憑依してる霊みたいな奴も逃げたぜ。何も解決してねえぞ。良く考えろ、ハリーは一人、人を殺したんだ。学校で教師が生徒に殺害されたわけである。どこまで平和ボケしてるんだ、この魔法学校は。階段が動くとかそういう造詣の問題じゃない、人殺しをした生徒を甘やかして殺人事件の露顕を防ぎ、学校の世間体を守るために問題を揉み消しているモラルハザードについてイギリスは深く議論すべきなんだよ。ハリーは法律に基づいて逮捕されるべきだ。正当防衛を主張するかもしれないが、最低でも学籍を剥奪して少年院送りに処さなければならない。教育者として、問題を全力でなかったことにするとは何事だ。これでは良く分からない理由で石にされ殺されたターバン男とその家族が浮かばれない。遺族は学校を訴えるべきだな。

 この映画が私たちに伝えたかったことは、力ある者にとっては勇気ある自重が重要であり、時間が解決する性質の問題に臨んでは蛮勇を振り絞って立ち向かうよりも見て見ぬふりをすることが最終的に全体の利益になるのだ、という真実なのだろう。

 とっても面白かった。