いやもう危機ではなく恐慌なわけで… もう二年も前に新書で書いたし、REITがおかしい件も単行本で言及してて、いまさら「だから言ったでしょう」みたいな話を書いても仕方がないだろうと思うんですけどね。


 少し前に取材協力をした先の放送内容について、実態の悪いところだけ切り出してもらっては困る的なクレームも寄せられたんだという話も聞いたけれども、あの取材をしたころよりいまのほうが悪くなっているはず。11月は操業停止だ解雇だと騒々しい状況で協力したから揉めてる内容になったけど、いまは座り込みもなくなり、全員撤収しているから静かになってるだけなんだ。

 中国に進出した日本企業の撤退の話を聞きたいと言うことであればJETROでも足を向ければ幾らでもネタは転がってると思うんだけどな。それよか、明らかに中国経済の退潮が見えたところで中国経済特集とか何の考えもなしに提灯記事を書いてた経済メディアのほうが罪深いと思う。騙してる、というか自殺奨励みたいなもんだろ。

 最近になって、中国が必死に09年の建国60周年に向けての特需があるので、中国政府の威信を賭けて経済を支えるんだ的な言説が出てきていますけれども…。実際問題としてオリンピックや万博は諸外国(つまり実際に金を持っている皆さん)の目に見える形で建造物や交通手段など実需が動くのと、単にイベントとして建国60周年っすよというのとでは経済に対するインパクトが違うわけですよ。

 オリンピックやるので都市開発が進んで鉄鋼やら何やら特需が出ますというのと、建国60周年とでは、経済的な見え方が違う。そりゃ、中国国内からすれば政治的な意味合いは強いとは思うんですけどね、私らからすると、中国建国60周年でお金出しますか? 需要盛り上げたいと思いますか?

 困ったことに、中国とのパイプを強弁する人々というのは、こういう中国発の中国だけの都合で発信している情報を真に受けて、これこれこんな隠し技が中国にはあるんでまだまだなんです、という話を上げてきて、実際それは中国高官が言っているから、まあ信じちゃうんですわ。もちろん嘘を言っているわけでもないですからね。

 でもそれが経済の見通しとか分析において、重要な意味を持つの? 持たないでしょ、ということはあります。だから、本来ならそういうもんは除外して考えなければいけない。むしろ、中国が日本ほか諸国から必死こいて買ってた廃プラだのくず鉄だのの市況が暴落していまでは引き取り手がないぐらいの状況になっている、というのが中国の実需の実態であって、そういう値崩れし始めた時期はいつからですか、というのはちゃんと観察しておかなければ駄目なんだろうと思うのです。

 もちろん、今後中国政府が本気で頑張って、中国の節目の年に多額の投資を行って景気が浮揚する、という可能性は皆無というわけじゃないです。ただねえ、14%成長とか胸を張っていたころからすでに経済統計上あまり無視できない水増しというか誤認も少なくとも存在してきたわけで、そういう歪な数字を土俵にして何%上がってるとかこれだけ投資する予定だとか、真正面から数字どおりの信頼を置くわけにいかないでしょう、という話です。

 あと、中国の内需の話をしましょうか、これも中国には統計上の中流層というのはどんどん減ってきています。中流層の定義の問題でもありますけれども、一定以上の所得に加えて「与信を受けられる人」というもんもあります。ところが、中国で実際に借り入れをして与信を受けられる人というのは、ことごとく不動産や株式投資に打って出ていたことも災いして、2,500万人ぐらいしか全土でいないんじゃないかというのが極真っ当な推論になります。そういう彼らの年収の平均は280万円ぐらいでしょうか。

 そういう発展途上国並の経済規模で実需って言われてもなあ、というのが正直な感想です。日本で言うと、東北七県を足したぐらいの経済規模か、その八掛けぐらいじゃないでしょうか。その地域に13億住んでる、と思ってください。いやほんとに。しかもそのうち3億弱は公務員で、1億ぐらいが共産党員でござ。成り立つわけねー。

 もっとも、世界には上には上がいて、ドバイとか20万人で40兆円も金を集めた地域もあるわけですから、まあ麻痺したたんだろうな、私たちは、みたいな感じだろうとは思いますがね。