ずいぶん前の事件のような気がするが、一週間足らずなんだな…。たけくまさんの良記事にリンク。


マンガ界崩壊を止めるためには(1)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_4da3.html



 たけくまさんの主張する、


>「版元と作家の信頼関係」が、現在、音を立てて崩れ去ろうとしているのだ


 というのは、ほぼ事実なのかな。漫画業界が漫画雑誌という衰退メディアを扱っているから、金が回らなくなって据え置かれた原稿料を上げるどころではない。新人が経済的に楽になるどころか、逆に厳しくなる一方だというなかで、売れる雑誌を使命とする編集者と、コンテンツを作る漫画家の間に抜き差しならぬ緊張関係があるんだろう、きっと。


 そのうちテレビ業界もラジオや漫画と同じく厳しくなっていくんだろうけどな。


 で、漫画のデジタル化が叫ばれ、紙の雑誌が廃刊に追い込まれる。え、あの雑誌が休刊に、というのは次々と起こるんじゃないかと思う。そもそもの漫画読者人口に比べて漫画雑誌が多すぎ、しかも売れる漫画家の数が少なく旬も短いので、読者と一緒に年を取るベテランを収容する雑誌が固定読者とともに切り離されるからなかなか畳もうにも畳めないままずるずる来てしまった、という。


 今回は小学館だったけど、たぶん出版業界含むコンテンツ産業全体に普遍的にある構造だろうし、雷句誠氏が槍玉に挙げた編集者にしたって途方に暮れてるんじゃないかと思うんだよね。次はラノベか舞台かテレビドラマか分からんけど、制作サイドと企業の論理ってのは原則相容れないから。


 あと、クリエイターってのはキチガイが多いから。一般論として。キチガイだから一人で構想立ててモノを書いたりこしらえたりできる。漫画描きたいといって大学の推薦蹴って代アニ逝った奴とか、舞台の製作のたびにヒモになるため女を作る奴とかの集まり。彼らに社会の常識なんか存在しないわけよ。で、現実にブチ当たって、キレることは山ほどある。


 でもそういう世間知らずの本物のキチガイでないと作れないクオリティの高い作品はたくさんある。編集者はそのバッファとなって、つつがなく紙に刷るために努力しなければならないのだから、やはり一定の割合でキチガイが混ざったり、逆にキチガイを許容できない人間が不幸にして役割を担わされたりするんだろう。


 もっと面倒くさい例は最近ゲーム業界でも起きた。提訴しようがしまいが両人に対してそれほどのメリットもない。でもやっぱり、銭金絡みでこういう話は尽きない裏側に、良く分からない信頼できないだの裏切っただのというキチガイ特有の琴線のようなものがあると思うのだ。


板垣氏が株式会社テクモと同社代表取締役・安田氏を提訴したとする声明文を発表
http://www.famitsu.com/game/news/1215579_1124.html


 うわキチガイ面倒くせーと思うけど、そういう人でなければできない仕事があるのがクリエイティブの世界なんだよねえ。こういう状況に陥ったクリエイターと組織の相克は深く同情する。


 あと、キチガイのまま旬が過ぎて終わったクリエイターも厳しい。一般的に話題にすらならないが、名前を変えてエロゲだかラノベだかの仕事してたり、年に数回の出版社のパーティーに年賀状の如く毎回顔を出してたりするので話を聞くと、やはりツラいものがある。同人に流れるのも頷ける。


 まあ、しょうがないよね。ほんとに。お出かけするのでこの辺で。