赤坂レッドシアターで劇をやっているというので先日見物したのであるよ。


空間ゼリー
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あらすじのようなものとチケット売り場へのリンク
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 といっても、私自身の観劇の経験値が足りないこともあって、劇の良し悪しはよくわからぬ。ただ、作中出てくるおっさんが良い味出していたので大注目。リストラされて自宅警備員となってるおっさんが、一家の中央に居て右往左往している姿は感動。やはり、優しい父のありようはああでなくてはならん。甲斐甲斐しく妻の仕事を手伝ったりイベンターに徹したり仲介役になったり騒動の火種になったり、おっさん失業してるのに忙しい。


 内容自体は煮えない性格の出戻り長女と身持ち崩し型次女とその他大勢風末弟とが無闇に一軒家でバトルロイヤル。騒動師は次女だが、ああいう女は身の回りによくいるので激しく共感。演技が体当たり過ぎてプロレス然としているあたりも好感度が高い。劇の始まりから終わりまで、居間でネーム書きっぱなしの長女もイカス。いいから自室戻れよ。それだと劇にならんか。


 出入りし放題の一軒家で家族のスキャンダルが露顕し放題ってのは新しいな。もう少し一家の事情って隠すもんじゃね? どさくさに紛れて出張ホストの小林さんまで出入りしているし。何してんすか小林さん(笑)。周囲ももう少し不自然さを感じたほうがいいと思うけど、あの父が居る限りすべては許されるという。次女が炸裂して末弟とプロレス開始しても父ここにあり。居間でセックス寸前であってもすべて父によって許容されるメンタリティというのは偉大だと思う。


 劇の全体的に馬鹿女密度が高く、男目線からすると「そんなのほっとけよ馬鹿女なんだからよ」と思うような事例が次々と発生し、世話焼きなんだか物好きなんだか分からない親友とか、うだつがあがらないくせに独立して会社作った男に罵声を浴びせる次女とか、そもそもお前らもたいした仕事してもいねーだろという状況をあそこまで濃密に描けるというのは凄いな。


 そんでろくでもない末弟が最後にゲーム業界入りして大団円。いやー、大学四年の冬にセガ入社してもデバッガー要員だと思うよ。ソルジャーだソルジャー。しかもいま、セガは景気悪くてリストラしてるから。背広着て逝くほどのもんじゃ。たぶん父と同じ心境を味わうことになると思うよ。京都が舞台みたいだから、入るなら任天堂だろ、でも入れなかったから微妙なラインでセガという立ち位置か。よく考えてるぜ空間ゼリー。


 最後は父が大相撲を披露。そういうオチだったか。身内がラスボスパターン。いいねいいね。最初は失踪した長女の夫が実は死んでて、締めに遺骨で登場とかって流れだったらシュールだなと思ったが違った。やっぱ遺影を胸元に掲げてお通夜ってのが本筋だろ。実はバラバラ死体でした、みたいな。犯人は小林さんだった、みたいな。泣き叫ぶ長女の目の前で父と小林さんで実家プロレス。見たかったな、小林さんのプロレス。途中、お茶請け的に登場するババア三人組が素晴らしい。つまらんもの見せられて、もうあの家には足踏み入れないんだろうか。むしろ、後日談希望。


 まあ、客の大半が女性だったんで私自身は浮きまくりだったんだけどね。なんか劇を見慣れてる人よりは、他人の家庭をゆるゆると見物してあれこれ思いながら楽しもうって感じ。経験値のある人からすると違う印象を持つんだろうけど、観劇素人の私としては父@失業が面白すぎた。父頑張れ父。


 注文があるとすると、タイトルが良く分からんな。『私、わからぬ』って、これじゃほんとわからぬ。むしろ『もう知らんよ』とか『どうでもええがな』とかのほうがそれっぽい気が。適当に言ってるけど。でも面白かったよ。父の大相撲をもっと見たかったけどな。そんな怒らんでも。