今日ちょうど毛唐と話してて、彼らは確か私なんかよりも遥かに学識経験者のはずなのに何故だか国粋的な重商主義で今回のバーナンキ議会証言を評論していたので気になった。



 よく分からないのは、アメリカにおける金融業界の救済を”国策”と位置づけて泥縄的に救うことがバーナンキの使命で、それによってのみクラッシュみたいなリセッションを防ぐことができると主張する点だ。正直言って、よく分からなかった。グリーンスパン風のアプローチが12年ぐらい続いて行き詰って、それが崩壊しそうなのをバーナンキがケツを拭かされているようにしか見えない。今日入稿したビジスタのメルマガにもそれを書いた。


 しかも、それが彼ら的にはfairで、ベアースターンズ(BSC)は特殊であるから、金融政策では救済しなければより多くのものをアメリカ経済は失う、という前提に立つ。でも、それってよく考えれば重商主義的アプローチなんじゃないの。CDOを必要としていた人がいてCDOを供給してきた人がいて、それがある特定の条件下でCDOに対する信用が崩れましたというのは単なる市場の失敗で、それをBSCが救済すること(つまり、市場の失敗の象徴がBSC)が”国策”であるべきなら、その後にやってくるトラベラーズとかも世界的な決済シェアがどうのといって救うことになるの。


 絶対的に彼らが表向き言わないのはオイルやシンガポールごときに救済されて、それでいいの的なジレンマなんじゃないかと思うんだよなあ。欧米の、欧米人が支えるべき国家の主たる産業の金融業界が、グリーンスパンの作ったフロスの連鎖崩壊とやらで雲散霧消することに対する不快感というか。だって、IMFなんてもう匙をダース単位で投げようとしてるじゃん。IMFの予測ベースで世界全体で最終「損失」が$800Bでしょう。埋まらないのは分かっているから、どこで防火壁を構築しましょうかという話をしてて、on timeでBSCを救うのはあの日しかなかったと議会証言されて、アメリカ人が「ブラボー」とか言ってるのって、単純に日本人が「三菱ばんざい」と言ってるのとどれだけレベルの差があるんだよと思ってしまう。


 結局、アメリカがリセッションだよというのは動かないとして、経済循環として出口としてのアメリカを防衛することが世界経済(彼らの言う貿易体制)護持の必要条件だ、というのは理解する、というかそれ以外ないもんなと思う。加えて、譲歩するなら、決断しないことが悪いことだ、という意味合いで何らかの指導力を発揮して、BSCを救済してsystemic risk(日本語におけるシステミックリスクではないよ)を先延ばしにしましょう、という議論もギリギリ分かる。もっと最善策があったかもしれないけど、分からないなりにその場でベターと思われる処方箋から手を付けていこうというのはアメリカ人からすればtalentedなのだろう。


 でもさあ、理解はするとして、BSCやその後にFRB主導で救済されるだろう金融機関とかが、リセッション露顕後のアメリカ経済再興のお役にどれだけ立つの? っていうのは語られないんだよなあ。もちろん金融業界的にはアメリカ偉いね流石だねって話にはなるよ。でも、イケスの中に魚がいるよっていう前提でフロスのような商品を小さな市場で大量にばら撒いて、蓋開けたらイケスの中には別のものがいました、って南海泡沫事件とどれだけ質的に差があるんだろうと。


 それでも救済は続けていくんだろうけどなあ。いやー、それが正しいのかどうかは私には分からん。市場が失敗した、それは民間企業によるもので、その後の経済に対する悪影響は大きいって力説されても、卵を産まない病気の鶏の群れに餌をやっても、結局鶏が病気で死に絶えたら何も残らない。それを堂々とやるのがアメリカだ、って威張られてもなあ。お前の国のことなんだから好きにやんなよぐらいの言葉しか浮かばない。


 まあ、一年ぐらいかけて中国が死んじゃうだろうから、日本が被るのもやむを得ない。もうこれは一昨年ぐらいから言ったし本にも書いた。中国はよく持ったと思う。もうだめだとも思うけど。中央の経済担当は絶望してるだろうし、責任を取らされないように自衛しようとしてるかな。あんな不良債権の山を抱えた経済が成り立つこと自体が異常だけど、その中国に外資として日本だのドイツだのさんざん進出してきたからなあ。サブプライムの被害は軽かったって胸張ってても、結局中国にあれだけ進出しちゃったら、もう利益を人質に取られたようなものだからさ。もうだめだな。


 もし中国が内紛状態になったら、また植民地主義でも勃興するんかいな。アヘン戦争時代みたいに。それなら重商主義でアメリカが頑張るのも分からんでもない。ただ一足先にアイルランドとか凄いことになってるけどな。バブルが崩壊して。まあアメリカはとりあえず頑張れ。超頑張れ。