お詫びのほうから先に。前回前々回のエントリーについては、繰り返しますが特定の誰かおよび発言を否定、批判するものではありません。各々の立場、見解はそれが合理的である限り、ネットや新聞、雑誌、講演等の分け隔てなくその表現を認めるべきであって、それを封じようという意図は私にはまったくありません。この私の発言の真意が正確に伝わらなかった可能性があるとするならば、その原因は私の文章力に問題があったことに尽きると思っておりますので、ご自身の意見を私に否定された等として気分を害された方、ならびにその仲介の労を取ってくださった方には深くお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。


 また、私は一部特定の知識人、有識者の方のご意見に対する反論という意図を有していないにもかかわらず、会議等で明確にそれを否定しなかったという理由で強い反発を頂戴した件については、私自身の至らぬところもあったと自省し、改めてお詫び申し上げます。
 ただし、如何に不都合だったとしても削除しません。


 再度になりますが、私の意見を簡潔に整理して述べます。


○ ひとつの現象の意図を推察するには、その現象の背後関係(コンテクスト)から合理的に推察される複数の可能性(シナリオ)を考えなければならない

 ・ どれかひとつのシナリオがいかに信憑性高かったとしても、当事者でなければそれが本当であるかどうかの真意は分からない
 ・ いかに当事者からヒヤリングしていたとしても、そのヒヤリングした人物と当事者とのコンテクスト次第では真意でない発言をすることがある
 ・ 真意でない発言をしていたとしても、真意が語られなかった事情(コンテクスト)が存在するのであれば、それもまた合理的である
 ・ 真実、事実が語られないことそのものが「悪」であるという、善悪の物差しで考えることは合理的ではない


∴ 日本側が持つコンテクストに関する理解次第で、シナリオの現実性も異なる

 ・ 小泉純一郎、奥田碩、渡辺恒雄の有力三氏のバランスで進んできた権力中枢で適切な世代交代が進んでいるかどうか判断が分かれる
 ・ メディアや産業に対する統制で成立していた権力構造が崩れ、”自民党政権”そのものの堅牢性が損なわれたあとの展望が違う
 ・ したがって、選挙における政党からの助成や党議拘束など権力の源泉が枯渇し、重要な政治過程で必要な求心力が存在しない


○ 国際的な景気の転換期に対する認識

 ・ 米国のリセッションと中国のバブル崩壊はどちらが現実化するか、あるいは、一体化しているとしたらどのような対処が考えられるか
 ・ 米国のリセッションと中国のバブル崩壊のあとについてのシナリオは誰も分からないので、対処を考える外交工数を割くことができない
 ・ 米国の一極支配が緩やかに続くと考える人と、これが崩れ米欧中他のグレートゲーム再来と考える人とでシナリオが変わる
 ・ これ以上国際経済が成長することが、影響力の及ばない国々の発言力を相対的に伸ばすこととなり、これを制限しようというプレイヤーが出るのかどうか


 → つまり、先の分からない(いつものことだ)状況だが掛け金と掛け先を外すと、日本が座席を失う可能性が「ある」と考えるか、どのような状況でも日本は大丈夫であると考えるかという負のディシジョンツリーは確実に成立する

 A. 「だから団結しよう」という発案は思考停止
 B. 「ここで動けない日本は駄目なんだ」という発想は思考停止
 C. 「打って出ない日本企業(主に金融)は先がない」という発言は思考停止


 A.は政治的にまとめるだけの大義名分と、説得しきるだけの権力が足りない。団結したくてもできない状態を無視・軽視して、情勢を過大評価し、危機感を煽るだけの結果となる

 B.は問題の本質を国民に転嫁し、絶対に解決しない永遠の課題である「戦略的思考のできる一億国民」という別の問題に振り替えて解決を先延ばしにしようとしている

 C.は日本企業の経営陣の判断基準や経営者となっていくコンテクストからすれば、彼らが解決の主体となるという薄い可能性に賭けることになり、負ける博打に進むことになる


 D. アメリカを裏切るタイミングを計るかどうか
 E. アメリカの各プレイヤーの行動をどう評価、判断するか
 F. 最悪のプランに揃えた判断にするか、それは起きないと割り切るか

 D.はさまざま、ここでは発言しない

 E.は個別はともかく相対で判断、アメリカ金融界は中国との一蓮托生を選ぶかどうか。駄目だったら大リセッションとなるが、それを促進するのも防止するのも現在の日本のパワーでは無理である以上、考えるだけ無駄。状況を眺めるほか方法なし

 F.は単純に考えれば中国の国家が解体的崩壊した場合におきる経済的、暴力的問題に対してどう「土嚢」を積むかという問題、ただし、地震予測と同じくその対策規模が大きいほど工数がかかる。起きなかったときのコスト、リスクが大きい


 G. 具体的に、誰がどう問題を起こしているのか
 H. 各シナリオの解決にあたって具体策は講じうるか

 H.は解決策の策定よりも解決策の実施が困難という珍しい状態に、ただし解決策は事前準備さえしておけばそれ相応に存在するものと考えられる

 H.→G.と見たとき、シナリオごとに問題を起こしているプレイヤーが違うことに気づく、よって包括的、国家的問題であって、鳩山邦夫氏が語ったことはそれ相応に事実である


○ なので、核心については、簡潔に述べると以下のようなもの

 ・ 中国はこれ以上バブル経済を継続することはできない
 ・ 中国は外貨準備も含め資金力を潤沢に用意しているため、日本より多くの博打を打つ力を有している
 ・ 中国は国体の維持のためにこれらの資金を使うよりも、外部からの国体攻撃に対抗する影響力確保に動く可能性が高い
 ・ 中国は資源確保のための企業買収などで培ったノウハウを元に、ブラックストーンやモルガンスタンレーなどへの影響力を買った
 ・ 中国が工数をかけて獲得したこれらのツールが、日本を直撃するかどうかは、純経済合理性で考えるならばありえない。日本経済にのびしろはないから
 ・ だが、中国の目的が投資収益ではなく、別の目的だった場合に、大変暴力的な資本カードを切ってくることは考えられる
 ・ 日本には有力な対抗手段が存在しない。いままでずっと協力してきて、より明るい将来を保証する説得力のあるシナリオを提示できないからだ
 ・ 日本は権力中枢では、一部の指導者がすでにアメリカもしくは中国の意向に依存して国内に影響力を行使していると判断して良いと思われる
 ・ 一番日本が国際的影響力を堅持できるのは「何もしないこと」を対外的に合理的に説明できるカードをこしらえること?


補足:ブラックストーンやモルガンスタンレーについては、すでに中国系資本から潤沢に資金を貰って日本の不動産や株式を買っている可能性が高いであろうし、一部でそれは衆知であるから、もう隠す必要がなくなったのとMSは現実に金に困っている確率が高く金の出ない日本より金を使わなければならない中国に頼りに行ったのは当然といえる
 というか、モルガンスタンレーが中国のお金を扱ってないなどということはありえないから、ポールソン氏が日本ではなく中国を訪問したことは驚くには値しない(ポールソン氏は中国にすでに70回以上訪問していて、中国側のカウンター要人もいる)


○ 日本は現在、小泉政権の揺り戻しの真っ最中であって、当時の立役者の影響力を封じる派閥抗争中である。構造としては、ある意味、黒船が来て国体の危機を感じた日本人が尊王攘夷だ開国だと斬り合ってる状況とあまり変わらない


 こんなところでしょうか… 出かけるのでこの辺で。