やっぱりというか、ちと望ましくない反響もあったので、補足というか釈明というか詳説というか蛇足でもしておこうと。ただし不都合でも削除はしない。分かんない人は分かんないでいいです。


http://kirik.tea-nifty.com/diary/2007/12/post_0242.html



 とりあえず、言いたいのは「特定の誰かに書いたことではないし、自分の整理も兼ねて思っていることを書いた」ってことです。寝る前にぽやぽや考えていたことを羅列したもんに過ぎない。それだけ。


 「これは山本さんの真意ですか」と言われれば「はい」と答えるし、「ポジショントークですね」と聞かれても「はい」と答える。どうとでも取れる書き方は卑怯、と言われるかもしれないですけど、実際にどう転ぶかなんて非才の身には分かりっこないので、要するに「その人は現在の問題についてどう解釈しているか」ということを論ずるほかないわけです。


 小泉政治の清算、というニュアンスを書いたのは、ほぼそのままの意味で捉えていただいて結構。経団連に対するスキャンダルはどうでしょう。なぜ西川ぜんぶん氏はダイヤモンドのインタビューで醜態を晒していますか。竹中平蔵さんも囲み記事で強弁してますね。先々週だかのエコノミストに官製不況なんて観測記事も出ていました。日経新聞がこの前微妙な飛ばし記事を書いてましたね。防衛庁汚職は守屋夫婦だけに留まらず、八木さんは期間を延ばしてまで徹底して調べると言う。


 こんな状況で選挙なんかできんでしょう。消費税も上げられず、国会は越年ですか。公明党の沈没はどうですか。組織力もなければお金も集まらない。従来の枠組み、前回と同じルールで勝ち戦を演出できると思ってるんですか。


 「この大事な時期に、政治が流動化して不安定になると経済にも悪影響を及ぼす。→∴速やかな事態打開のために団結しなければならない」ってのは、一見もっともな意見です。一般論としては同意しましょう。


 ただ、どうやって団結するんですか。


 対米外交一辺倒批判は素材そのものは肯定する余地もあります。が、その処方箋で、アメリカ以外の国との外交工数も使っていきましょうという議論になるならともかく、中国との関係改善以上の「お土産」を率先して考える人が、うっかりよそで構想喋って、雑誌やネットで一部書かれて、うろたえてほうぼう相談の電話を入れているというのは如何なものかと思います。


 対欧はどうなんですか。対アジアというのは中国だけなんでしょうか。国連の役割を再確認するべきと口ではいうけれど、国連のアクティビティに我が国の知識人はどれだけ”刺さって”いるんでしょう。


 それらを全部役人がいままで世話をしてきた。国の資金で海外に留学して批判をされているが、その留学組こそが日米欧中の重要な人脈の中継地となり、論ずべき事案の中枢を担ってきました。その役人の役割をないがしろにして、役人を苛めることを前提に「官から民へ」と言って、全部自分でやりますと産業政策から外交から適当に民間や大学から人を集めてきて、いざ話を煮詰めようとしたら役者が決定的に不足していることに気づいて、条約の読み方から貿易統計まで泡喰って読み返していて、しかも一連の改革の功績でもあった政治活動のマネタイズが一転包括的な汚職と連結していたとしたら、どうなってしまいます? 役人だって横を向いてしまうんじゃないですかね。知りませんが。


 返り血を浴びるのが怖いのであれば、博打を張るべきではないと思うんですけどね。事業も選挙も政策も事犯対策も全部ギャンブルです。運であって、必要なのは博才と裁量権ですよ。情報取るのもガセネタ流すのも全部博打でしょう。最初からうまくいくと分かって進められる話なんか1%もない。だから、同じ事象でもある面では「日本は信頼に足る存在ではないから交渉しない」という解釈と「日本は信頼に足る存在だからそこは任せており交渉しない」という解釈が成立しうる。コペンハーゲン解釈じゃないけど、観測する者は影響を既に与えているし、どちらの状況だとも断定できないのです。


 同じことはサブプライム問題にも言える。例えば、ひとつの論として「簿価の一割や二割に下落して毀損して困っている。だから、それをまとめて買い叩いて大きく儲けてやろうという気概が日本の金融機関には欠けている」というのがあります。もちろん、正論ですわ。掛け値なしに。無闇な損害の過小評価を発表した三菱バーカというのはあるかもしれないけれども、しかしコンテクストというのは確実に存在する。というより、コンテクストがすべてでしょう。だって、取り立てて大きな功績を挙げたわけでもない人材がトップに上り詰める組織が、千載一遇のチャンスですと周囲に言われたからといっていきなりリスク投資に打って出るはずがないじゃないですか。もしそれがチャンスだというのであれば、どこぞから資金引っ張ってきて村上さんみたいに自力でリスク背負ってやればいいんです。でも、そういう人に限ってどこかの雇われに安住して、のんびり村上さん叩いておったでしょ。外資規制にも賛成だったりしますね。


 サブプライム問題が世界の一大事だとしても、日本から縁が遠いカントリーワイドとか何故日本が救済しなければならんの、と言われたらどう答えるのでありましょう。それでも救うべきなんだ、というのも一案ですし、偉い人が「それでいかねばならん」というのであれば話は進むかもしれませんけど、言っちゃ悪いが堀江さんや宇野さん以上に無茶なことやってた御仁ですね。そういうところにリスク承知で貸付してきたバンクオブアメリカが大変だとかいったところで「それがどうしたの」という話になるでしょう。日本の金融業界がシステミックリスクで世界経済の弱い環だなんて言われていた時代に、アメリカ政府は格付け会社に圧力でもかけてジャパンプレミアム解消に手を貸してくれましたか。民間には介入しない、だから日本は銀行の不良債権問題に日本自体が責任もって対処するべきだと突き放されたわけでしょう。


 HSBCであれシティであれあれだけ無茶苦茶やって、コンプライアンスとかほぼ無視で数年間は野放図に膨らませるだけ膨らませて、ボーナスはしっかり取って、いざ弾けましたといわれても、というのは感情論でしょうか。シティにいたっては日本で一部上場したあとすかさず一兆円の損害を発表しましたね。日本の投資家をコケにしたといっても過言ではない。


 むしろ、いま米欧でやってる協調融資ってのは、見えようによっては徳政令であって、これからきっと魔女狩りが始まるんでしょう。ARMを売った人とかね。そういう鉄火場に入り込んで博打を打つのは民間の自由ですが、世界の一大事だから博打を打つべきだ、という議論はやや微妙です。打ちたい奴が打てばいいんじゃないのと思います。


 そうなりゃ消費税増税もインフレターゲットも吹き飛んじゃうんじゃないですか。そういう国際的な圧力に抵抗できるだけの内紛を国内に作らなきゃいけないから。憲法解釈問題でごたごたいって軍隊出さなかった事例と同様、「すいません。いまちと自民と民主が解党的出直しして総選挙しようかと思ってるんでまた後日にしてください」ってやるでしょ。つーか誰も仕切らん。当事者能力なし。それが日本って国のシステムなんだから、世論がクソだ、危機感がないと喚いたって無駄。最初からそういうことであると判断したうえで立論しなくては。


 思うに、状況を転がしているルールについては物凄く詳しくて、過去から現在までの整理はかなりしっかりできる人がいても、そのルールに乗っ取って成果を出す、利益を上げるというような博打&度胸や、ルールそのものに手を加えてゲーム自体を有利に持っていくかひっくり返そうということを考える人間が少なくて、しかもだいたい役人や役人上がりだったりして、地味すぎて虫眼鏡で見ないと分かんないとかそういう状況なんじゃないですか。


 つまんない煽動やって焚きつけるのは諦めていただいて、博打は手金でやって欲しいけど、でも自分でやるのは嫌だから、誰か前に出て手を出してくれないかなあ、というのが米百俵なのかもしれません。


(11:44 補足) 「何でパッシングなのか」というメールも来ましたけど、読んでいただければ分かるとおり「日本には相談されず、先に中国に要人が訪問したから」です。