MLで話題になっていたので遅れ馳せながら見物に逝ったが、なかなかの逸品に仕上がっていて驚いた。固定リンクがどこにあるか分かんないので全文引用しとくけど。


http://hoshino.ntciis.ne.jp/


 正論である。が、この異様な感じはなんだろう。なぜ… なぜ星野仙一にそんなことを言われなければならないのか。星野仙一が腕組みして「そうだろう?」と面と向かって言うわけではないのに、この目から入って全身に抜けて逝くような虚脱感。かつて着飾った黒柳徹子女史が恵まれない子どもたちを訪問している映像が流れて得た心境や、亡くなった笹川良一氏がテレビで拍子木を叩きながら一日一善とか平然と垂れ流していて子ども心に某は良く眠る的思考のあったころの、ミもフタもない日本とは違う別の艶やかな黒さである。


 これが、例えば王貞治が言ったのであれば、あるいは長島、野村、などなど他の野球人が述べた言葉であったなら、やや半笑いになりながらも受け入れる余地はおおいにあったかと思うのだが、星野… いやーどうなんだろ。北京五輪で負けたときの予防線なのだろうかと邪推するのも面倒になるほど、文章っつーかサイト全体から伝わってくる光沢のある黒味が異様なんである。


 一言で片付けるなら「好事魔多し」とか「衆愚」とかいう話だろうが、ことメディアについてこの正論をよりによって星野が語るとはなあ… もちろん、その後に続く言葉は「だから何だ」と「お前が言うな」の二択であって、途方に暮れる。
 なるほど人間歳をとるというのはこういうことなんだ、と。


--引用

日本は「勝手主義」の時代になった

 民意、民意というけれど、今の日本の「民意」というのはメディア、特にテレビが作っているものじゃあないのか。10年ちょっと前に民放の報道局長が「政局はわれわれテレビ局の人間が作っている」というような発言をしてクビになったことがあるけれど、テレビが繰り返して流すものによって無定見な大衆が誘動されるという今の時代。民意というものはなんなのかと、いつもそう思ってテレビのニュースを見ている。

 民意というなら訊いてもらいたいと思う。なにひとつ落ち度や欠点のない精廉潔白な人に大臣や首相をやってもらえばいいのか。それとも多少の失敗やキズ、弱点があってもきちんと結果を出してくれるような有能な人、職責に身命を賭けて努力してくれる人がいいのか。普通の大人なら、政治家にだって精廉潔白な人なんて滅多にいないことを知っている。誰しも一個の人生を築いて、それなりの力を発揮するところまで行く過程の中でなんの波風もない、ひとつの過ちや落ち度も犯さないような人間なんて、まずひとりもいないことを、普通の大人なら知っている。出てくれば自分たちで持ち上げて、押し出しておきながら、すぐにマイナス面、うまくいっていない面ばかり強調して、叩いて潰していくという最近の政界人事の繰り返しに、大きな失望感を味わっている。

 若い安倍総理もあれだけ期待され、国民にも支持されながら、1年足らずのうちに、今度は決断力がないとか、人を見る目がないとか坊ちゃん気質だとか、ひとりで全責任を負った上バカ者扱いをされて、あっという間にボロボロになって辞めさせられていく。自分から辞めたという形ではあるけれど、心身ともに余程追いつめられていたのだろう。タイミングが悪い、無責任だというが、本人は命懸けでやっていただろうと思う。この間まで日本人の「武士道」や日本人の「品格」についての本がベストセラーになって、多少は武士の情けや人間の品位を問い直す風潮が出てくるのかなと、淡い期待ながらそんな思いでいたのだが、寄ってたかって魔女狩りみたいな、弱い者いじめの世界ばかり見せられている。

 「出る杭は打たれる」は昔のことで、今は「出る杭は抜かれる」時代だ。倒れた者になおのしかかって、パンチを浴びせ、ひねりワザまでかけるようなマスコミの報道の偏りに、世間の態度に、わたしもテレビに出ている人間だが胸くそが悪くてたまらない。

 正体がすぐに揺れ動く、すぐに風向きが変わる民意とやらを、テレビが一斉に拡大し強調して、そうして世の中が動いていくのだとすると、日本は「勝手主義」の時代になったとしかいうほかない。
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