何か無茶苦茶になってて、どれをどう考えればいいのか分かりかねる展開になってるみたいだが、正直表題の通りのことを思ってる。どのマスコミも、現段階では「麻生太郎対その他」と言う構造になっているし、安倍首相の辞意とその背景についてもいろいろ報じられているのを見てはいるがどれが正しいとかどれがおかしいというほどの情報も出回ってない分、あまりにも一気に麻生太郎待望論みたいなものが沸き上がって、腹に落ちないうちに流れが決した感じ。ほんとに麻生太郎氏でいいのだろうか。


 麻生太郎氏が能力的に問題だとか言いたいわけではない。


 むしろ、背景も流れも本人的な力も宰相の器として認められているから本命に見られているのだという点で、非常に幸せなことではある。


 ただ、状況として、麻生太郎氏の作る政権が、仮に短命に終わった後… 誰がその跡を負うの? 誰? 率直に言えば、安倍首相はいまの状況を背負いきれない精神状態or健康状態になったから辞した、その状況とは、これからどんどん悪くなっていくだろう景気であり、どんどん先鋭化していくだろう東アジア情勢であり、どんどん露骨になっていく日米関係であり、どんどん衰退していく自民党であるわけだ…


 だからこそ麻生太郎氏が良いのだ、という向きもあるけど、保険がどこにもない。安倍氏を担ぐときは麻生氏がいた、二階氏がいた、与謝野氏がいた、片山氏がいた、じゃあ麻生氏は? 平沼氏復党してどうにかしようというのだろうか。二階氏や与謝野氏は専門職として要職に就くだろうにしても… 要は、小泉改革の幕引きを安倍首相が仕切れなかったorやる気がなかったので、党人派として麻生氏がやりましょうということなのかと漠然と思ったりもする。


 何より、麻生氏は金が集まらない。選挙どうすんの。何か適当に争点捻り出すのだろうか。前の総裁選はどうだったか、麻生派を立ち上げようとしたとき幾ら集まって、何人が集結したのかってあたりも含めて推移を見ないことには何事も動かない気がするんだけどなあ。


 無論、待望論をずっと前からブチ挙げてきた人たちは依然として麻生支持をするだろうし、それはあまり悲観的には見ていない。前よりは宰相の椅子に近いのだから、かねてから自民党に近かった人たちは協力を惜しまないかもしれない。ただ、麻生氏ってのは小泉氏以上に頭が良い分、官僚の意見を「聞き入れすぎる」だろうし、党人の意見に「配慮しすぎる」だろうし、直截的な物言いで国民を挑発しながら小泉以上のポピュリズムの方向へ舵を切るのを当然のようにするだろうと思う。


 麻生氏というのは我々が考える以上に一種の冒険主義と現実主義を兼ね合わせた人間であって、表現はやや不遜不敬ながらナジ・イムレ首相みたいに麻生氏がならないといいなと思ってしまう。金が集まらなくなった、それはシステムが時代に追いつかなくなったからだ、じゃあシステムを根底から変える準備をしよう、みたいなことを言い、しかし実働は党人と官僚との調整でやるわけだから、現実は冷徹なまでの政治のプロフェッショナリズムで動きかねない。


 で、それはいいのよ… そういう人がこういう状況で必要とされて出てくるのは必然だから。ただ、例えば効果が出て支持が回復する途上で選挙になりました、負けました、ってときに、その路線は国民から否定されたという議論になったら… 麻生氏なら降りちゃうわな。その後は誰がやるの。福田氏ですか。谷垣氏ですか。


 というか、消費者金融業界が壊滅したり、人材派遣業が摘発されたり、食肉業界にメスが入ったり、日本の昭和経済史の闇の部分が少しずつ明るみに出され、少しは健全な日本になろうかという途上で、あまりそのような適正化に熱心でない政治家しかウェイティングサークルでバットを振ってないというのは正直ヤバい。小泉元首相は確かに壊すべきものは壊したけれども、そこからきちんと壊しきる、そして新しいモノを作り上げるための人材を自民党内に用意しなかった(育成できなかった)ことが今回はっきり分かった気がします。


 結局、どのマスコミも麻生氏対「誰か」であって、対抗が誰なのかはまったく分からない。が、本命は麻生氏であることだけは分かっていて、何かの間違いで本命が転がったらそのあと命綱がないですよというのが党人派の共通した見解なんじゃないでしょーか。麻生氏で負けたら、本当に自民党はなくなるんじゃないかと。だって次がいないもの。選挙に勝てて、日米関係を軸とした安全保障を考えられて、経済効率や治安対策まで網羅する浅くても広い政治家のストックがもうない。だから平沼氏を呼び戻したんだといっても国民が納得するのかどうか… そうなると、麻生氏は政権についたら全力で民主党を割ろうとすると感じます。でも金がないんだよね。


 だから、いまだに小泉再登板という亡霊が湧くんじゃないかと。いや、担ぎたい人は山ほどいるだろうけどね。茶坊主使って飯島氏あたりが画策してるのは、何かあるんだろうと思っているけど、全体的にそういう暗躍系の人たちっていったいどこからジャリ銭が出ているのか不思議でならない。


 その意味では、半年でも一年でも、”落ちる役”がもう一枚挟まるべきだと考えます。安倍首相は折れちゃったけど、できれば精神的に頑丈で選挙に勝てる見てくれの人がいいと思うんですけどね。選挙に勝つor任期持てばオーライ、駄目なら地ならし完了で麻生氏登板ってのがいいなあ。