近場の旨くもまずくもないが値段が手ごろなラーメン屋を訪れ、土曜のオフィス街のため客が一人も居ない状態で平凡な醤油ラーメンを食したあと、伝票持ってレジに逝ったら何か「ラーメンにチャーハンセットで千円になります」とか言ってるんです。


 チャーハンセットなんか喰ってねえよ。


 喰ってないので、醤油ラーメンだけだろと言ったところ「日本語分かりません」とか東洋風の顔つきをしたレジ女がグダグダ言う。いやだから私の喰ってたテーブル見てみろ、ラーメンの丼しか残ってねえだろ。どこからチャーハンセットが湧いて出たんだよ。お前の脳内か?


 二三言押し問答してたら人の気配を感じてレジ女の横を見ると似たようななりのバイト女が。少しは話の分かる奴が出てきたかと思ったら伝票にはチャーハンセットと書いてあると一点張り。いやそんなわけねえだろだから私の食べたテーブルを見てみろと言ってる傍からもう片付け始めてやがる。いやだから私はチャーハンセットなんか喰ってねえんだよ。何度言えば分かるんだこの店は明朗会計の四字はないのか。


 さらに奥からもう一人バイト女が出てきて聞きなれない言葉でニダニダスミダとか言いながら議論してやがる。客の前でハングル喋ってんじゃねえよ。こっちは忙しいんだ。いますぐお前ら死ねと言いたい。必死にチャーハンセットの無根拠について身振り手振りを総動員して事情を解説していると、男女二人連れの客が入店。やめておけ。この店はやめておくんだ。いま私が決死の覚悟で身を挺して防いでいるから逃げろ。と声のボリュームを少し上げ気味で話してたら、ついにエプロンつけた料理人が。お前がラスボスか。ラスボスなのか。


 「あー、お客さんラーメンだけでしたよね」って言われて帰された。分かってんなら最初から出てこいよ。