爺はどちらかというとガトームソン育毛剤ドーピングについての私の見解を聞きたかったようだが、今回は多少真面目に以下エントリーに付け加えてみたくなった。


また失われる10年かな
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2007/08/post_694b.html


 ニューズウィークの記事”蘇る「失われた10年」の悪夢”は購読&立ち読み推奨。政治的な立場を問わず率直にアジアが抱える向こう数年間の確度の高い考察がコンパクトに書いてある。


 「中国経済がバブル状態であって、崩壊に向かって予断を許さない状況である」という基本認識は、もうデフォルトで持っていていい。私も文春新書『俺様国家・中国の大経済』でも語ったし、最近でも『中央公論』ほか何誌かで実情を紹介している。ただし、中国がもたない理由はともかく、その後のシナリオというのは幾つかに分かれる。大きくは基点は二つあって、中国の政治が中国経済を統制できなくなることと、中国経済と一括りにするには中国は人口も土地も多すぎることだ。


 間接的に、米国発のサブプライムローンがびっくりな状況になったとか、吹っかけてみた資源戦争が最終的には経済効率の低いまま多くの資源を消費する中国に実は不利に働くとか、そういう事情もある。だから、中国経済のバブル崩壊の問題というのは中国経済固有の問題というよりもアジア全体の経済、とりわけ投資の仕組みをどう解釈するかによって捉え方が異なるし、処方箋も変わってくる。ウェアフリッツ氏はアジアにおける日本経済のパラメータを堅牢で大きい影響力だとしたうえで立論している。無論、そうでない考え方も存在する。


 ウェアフリッツ氏は、小泉改革路線が安倍政権時点で破綻し、その後は派閥主義の政治に戻って90年代の状況に戻ることを懸念している。ただ、個人的には小泉改革路線の崩壊は言われているほど大きな障害を日本政治に与えるものではないと考えている。首相が強力なリーダーシップを発揮するといっても、では小泉首相のリーダーシップがあったとして、その具体的な政策の中身は誰が引き受けてきたのかという疑問を持つのは当然のことだ。当初は竹中平蔵氏に丸投げと言われ、その後は与謝野馨氏や二階俊博氏、麻生太郎氏といった実質的に党人政治に戻っていった。


 むしろ、中国経済が崩壊の方向に逝ったとして、中国特需で吹き返した日本経済がまた景気の大幅後退局面となって、また不良債権の山になって「どうすんだよ」という話になる。しかも、前回は法人が抱えた不動産が焦げ付いた話であるが、今回はかなりの部分を投資で欠損を出した個人、つまり家計も直撃するうえ、個人債権を抱える性質の違う不良債権がたくさん出てくる。これが解決できるかどうかは、日本政治がリーダーシップによってハンドリングされているかとは直接の関係はないのでは、と思えるわけだ。


 では、中国経済が実際に危機的問題になったとき、日本は緊急の経済政策をどこまで準備しておくかという別の課題を抱える。はっきりいって、日本一国で中国崩壊後のアジアを何とかできるなんて夢物語は誰も信じちゃいないよ。中国政府は崩壊するかもしれない、内乱状態になったら百万人単位で政治難民が日本にやってこようとするかもしれない、そういう話だ。爺は上海閥や北京閥の抗争の行方について気にしていたが、本当の経済混乱が起こったらいまのテーブル下の権力闘争のルールなんか誰も守りっこない。


 そういうことを予見しているからこそ、中国高官たちは家族親族に法人作らせたり海外に移住させたりしてせっせと資金を中国国外に流しているのであって、我が国の地価が今年上期までは随分上昇局面だったのは、単純に中国人が日本の不動産を買っているからだ。


 この状況下で、政治的リーダーシップとか言ってもあまり意味はなく、本当の語意での危機管理、それも経済面での緊急出動や近隣諸国に対する説得、協力の取りつけといった工数を、事前にどれだけ準備し用意しておくかということなのではないかと。


 むしろ「中国経済はもうもたないだろう」という共通認識が実体を伴って並存している状況って、ああ我が国のバブル経済も他国の人間はそう観察していたんだろうなあと思えて納得。