寝る直前にコメント欄に次のような記事が出ていたのを知り、正直げんなりしているわけだが… 読み手に分かりやすく書くのは困難なネタだなあ。


http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070701ia22.htm


 アメリカで問題になっている慰安婦事案ってのがあって、要は、予算面、方法の巧拙において、日本は韓国や中国に比べてやや劣っていた経緯があった。もうとっくの昔から、そういう傾向が見え始めていて、いろんな人が指摘していたから敢えてここでは書かない。ある種の「インテリジェンス病患者」みたいなのが最近増えたから。


 民主党としては、次の選挙はどう転んでも負けることはない、少なくとも、現指導者が、責任を取らされる形で退陣する予測はあまり立たない。それゆえ、民主党には現在「ターンが回ってきた」状態で、何をするにもフリーハンドですよ、ということ。


 で、何をしたかというと、敵失を突いてきたというのが引用の読売新聞記事だ。


 「アメリカは謝罪すべき」というのは、現在炎が盛り上がってしまった従軍慰安婦問題に、さらにガソリンをかけるタイプの発言であり、これを引用して日ならずアメリカのメディアは日本の最大野党の有力者のコメントとして掲載するだろうという。


 その失策というのは、ほかならないワシントンポスト意見広告のことである。実質、慰安婦問題を活用した「日米の離間策」であって、意見広告を出すこと自体が”寝た子を起こす”だけじゃなくて、場に出ている従軍慰安婦問題の米下院批難決議案という事案そのものの”掛け金を引き上げる”ことを意味してしまう。


 逆に言えば、この離間策にもろに引っかかって、善意や真心から日本の従軍慰安婦問題のことを良く知って欲しいと良識的にアメリカ国民に知ってもらおうと協力してしまった人物もいれば、あらかじめ全体の構造や目論見を知った上で本件が日米関係の緩やかな悪化を知識人に印象付けることになるだろうと周辺の人間を炊きつけようとした人物もいたということにほかならない。確信犯なのか故意犯なのかは措くとして、今回の意見広告に賛同したリストは、それそのものが「行き過ぎた民族主義者たち」リストとなってしまう可能性を秘める。


 この踏み絵を決定的なものとするべく、誰かの助言を得て小沢さんは自分の手番でそういうことを言ったのであり、あわせて某久間氏が脈絡もなくあんな発言をしたものだから、本来ならどうとでもブーメランにできたものをこじらせてしまう結果となった。


 何よりの問題は、安全保障を飯の種にしている言論人の一部が、ある程度状況を理解しているにも関わらず、それを損ねかねない活動に積極的に従事しているように見える点である。万一、ただの馬鹿であって物事の本質に気づくことなく加担してしまったのであれば無能の謗りはまぬかれ得ないし、良く分かったうえで納得づくだったとするならただの犯罪者に近い。どちらに転んでも望ましい人物であるとはいえないことになる。


 本件は、当然今回の選挙の争点にはならないし、日本国民の関心は決して高くないだろう。だけど、あらかじめアリバイ的に民主党の有力者が本件について言及しておいて、選挙に勝ち、国民の信託としてそのような方向に国を導くことが支持されたのだと喧伝したとしたら、非常にややこしいことになる。日米間の懸案となっていることを日本人が理解を深めるごとに、充分に掛け金が上がったところから負け銭を支払わされる羽目になる。どおりで次期戦闘機を売ってくれないはずである。


 最悪、テッシーの言うように同盟国としての関係よりも戦略的パートナーシップを中国と構築しようという思考に傾く人たちがアメリカで増えるかもしれない。しかも、その引き金を引いた一部の責任は、確実に我が国内部の人間がやっちまった失策の中にあるのだ。さてどうしましょうかねK下さんよー。


 なお、意見広告で書かれた内容が事実かどうか、正しいか間違ってるかはどうでもいい。正直、そんなもん私には分からん。ただ、従軍慰安婦問題を戦争における一般的な事象としてしまったのは馬鹿の所業としか思えない。アメリカ人に対して「慰安婦ならお前らの国だってやってたじゃないか」というに等しい意見広告を掲載されて、良い方向に転がるとでも思っているのだろうか。


 良い方向に転がしたくない人は、当然、踏み絵としてこの失策を最大限活かそうとするだろう。仮に民主党が将来政権を採ったとして、その政権担当者は七転八倒の苦しみを味わうことにならないことを祈るのみだ。