太平洋は広い。


 さて、ニフニフ動画である。


http://nifnif.nifty.com/


 ええと。どうなんでしょうか。出オチはいかんだろ。昔、キヌガサというSNSがスタートしたというので見物に逝ったとき、当時あまりにもアレだった映画キルビルにデザインが酷似していて、出足からプリミティブな絶望を感じさせた物件があったが、今回はそれ以上のようで。いま見る限り、どっかのアニヲタがスクリプトか何か使って著作権侵害ソフトを大量うpしているところである。違法行為を平然とやる馬鹿は死ねと言いたい。ただ、それ以上にニフニフ動画という物件自体のアレ具合が利用者の質問題を上回っているように見える。


 さっそく、ニフティOBの小鳥さんがブログで感想を余すところなく書かれておりまして、まあそう思うのもあるかなあと思ったんですけど、私が感じたのはもっとエネルギー値の低い、どっちかっていうと諦観というか、ああ、やっちゃってるなあというため息に類するものだ。


http://coolsummer.typepad.com/kotori/2007/06/post_12.html


 「動画サービスをニフティがやるべきではない」とか、あるいは「デザインからコンセプトからニコニコ動画をモロに持ってくるなんて志が低い」とか、そういった直線的な批判ではなくて、もっと深いところにある何かな気がするのである。それも、全部疑問系であって、例えば「どうしてそうなってしまったの?」とか、周囲を見渡して「いま何が起きているの?」というような心象風景であって、間違っても「私たちが支持してきたニフティがこんなことをするとは!」というような、ボルテーションの高いものではないのだ。


 ニフティユーザーが何故パルチザン化しないのかという点については諸説あるが、従来はパソコン通信で儲かっていてコミュニティもビジネスとして成立していたころに成功体験を培って、それがネット時代への移行で流れから取り残され、パレットとか中途半端な微妙サービスを連発し、ごっそりとニフティのフォーラム会員などがネットに移民して逝った後だけに、いまさらニフティに何を期待するのだというような感じだ。Kusakabe師が本件をどう解釈するか膝詰めで聞いてみたい気分である。


 質量が足りなかったゆえに超新星爆発できずに白色矮星化したが如きニフティにおいて、細り逝くプロバイダ課金料金が磨り減る前に何がしかの画期的なサービスで一儲けしておかなければ立ち逝かず、悲願のプロバイダ合従連携で非NTT系のリーダーたらんとする野望は分からないでもないが、その野望の経過点がニフニフ動画なのだとすると視界が暗然としてしまう。


 過去にもニフティは様々な絶望の姿を私たちに垣間見せてくれたが、その深淵もかくやと思わせる物件のひとつに、壮大な企画倒れに終わったと思われるアラジンがある。いまなお社長ブログが思い出したように更新されているが、どう読んでも絶望的である。一体どうなってしまっているのだろう。この手のサービスがコケるたびに、ニフティ社内の組織というかコスモのなかで、どのような派閥争いが繰り広げられ、結果として誰が失脚してしまうのかといった人間ドラマが繰り返されているに違いないと思うのだが、外部からは社員の煽り書き込みのひとつも見当たらない閑散とした社長ブログからしか推測することができない。


http://hh.cocolog-nifty.com/blog/


 ニフティはさまざまな画期的なサービスを開始し、その大半が微妙な状況に終わっている事実上のネット企画の肥やし状態なのだが、たいていサービスインした直後はネット上のリリースをわいわいやるものの、そのうちほかのサービスに話題をさらわれ、初動の顧客が一定数確保でき自走し拡大ラインに乗る前に忘れ去られてしまうという黄金の失敗パターンを貫徹する企業スタイルを貫いており好感が持てる。そのニフティが、次にいったい何をするのかと思えば「ニフニフ動画」である。何この脱力感。営業数字が上がらない営業マンを大声でドヤしつける管理職のそれではなく、数ヵ月後の資金繰りに思い悩む経営者が頭を抱えるタイプのダウナー系のインパクトを見る者に与えることにかけては、やはりニフティには一日の長がある。


 発表当初からすでに観客一同無表情傍観である場合、どうやって始末をつけるかというあたりも見所である。普通に逝けば何事も起きずにフェードアウトするのだろうと予測されるが、せっかくゼロスタートコミュニケーションズから企画協力を仰いでいるのだから、何か別の凄いネタを持ち合わせているかもしれない。ニコニコ閉鎖→ニフニフに移民急増→大森炎上とか。


 何より、問題は「はみだし@nifty」とかいってる点だ。


http://hamidashi.nifty.com/


 何かニフティからはみ出した、などと称してあと三つもサービスメニューがカミングスーン状態になってんすけど。左上で自転車乗ってるおっさん誰。常識的に考えて、一発目でこれだけ微妙なネタ繰り出してネット内に時間停止(ワールドとルビを打ちたいぐらいだ)を引き起こしたのだから、二発目はもっとしんどい企画が出てくるものと予測される。二番煎じをするなと言いたいわけではないが、ほかにやることはなかったのかと誰からも突っ込まれなかったんだろうか。まさに外道。


 更新頻度がめっきり減ってしまった本家社長ブログが懐かしい。ニフニフ動画がリリースされてから数日が経過したが、古河シャッチョーからは何のリリースコメントも掲載されていない。


http://furukawa.cocolog-nifty.com/


 今日も今日とて朝から清々しい気分になりました。