義塾のOBでかつ新聞社OBの皆様と酒を飲み、言論の世界で「ネットの言論はクズだ」と文字通りボコボコにされたのであります。仔細は省きますが、いや、ご説ごもっともでして。まあ、たまたまGIGAZINEさんの微妙陰謀論を引き合いに出したところ、肝心の「拒否できない日本」の核心をやった編集者の話に流れまして、あれは頭に血が上りやすいが理の通ったやけに話の長い男だそうだそうだという話になった挙句、finalvent爺が毎日社説の解説をやるのを回覧、しかも紙でプリントアウトさせてから読むデスクに対する罵倒まで一通り出たのち、表題の内容になったのであります。


 平たく言えば、あんな程度の知識レベルでネットに読者を奪われる新聞社ってどうよという話と、押し紙(残紙)やリベートで百億単位の銭を浪費してなお「新聞は危機でない」とのたまう一部業界守旧派の皆さまのクオリティに関する話題が並存したのであって、ネット業界でキャズム(笑)だのデジタル・ワークスタイル@徳力さんだの言ってるレベルじゃ新聞上層部は心理的に焦らない、もっとガツーンと逝けガツーンと、といった趣の話であります。


 いまのネット業界の各社レベルの話だと、確かに新聞社が抱えている千億単位の話はスケールが大きすぎてピンとこないのだろうなあというのは分かります。「はてな? あんなの子供が遊ぶ砂場の話じゃねーか」とか、ポンと出るあたり、気にはするけど相手にはしない記者風情(言い方は悪いけど、ブン屋の真骨頂みたいな意味合いも含め)の硬骨を感じます。一方で、こんな本も出る。


http://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%A4%BE%E2%80%95%E7%A0%B4%E7%B6%BB%E3%81%97%E3%81%9F%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB-%E6%B2%B3%E5%86%85-%E5%AD%9D/dp/4106102056/ref=sr_1_1/249-1144556-7693140?ie=UTF8&s=books&qid=1180979347&sr=1-1


 そんで、そこのレビューに、明らかにモノの分かった人間が出入りして、本書を酷評しているさまについて、新聞記者上がりの皆さまが冷静に論評していて、当然、そんなものを事前に読んでいるわけのない私は話を聞くだけであり、帰宅してみて、酔っ払っていたくせにこいつら議論の軸線が1ミリもずれていないことに気づいて愕然とするわけであります。


例:

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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。

新聞記者は社長になるべからず, 2007/6/4
レビュアー: 佐藤雄司 (北海道札幌市) - レビューをすべて見る
北海道の某新聞社の営業に20年以上勤務し、その経営のいい加減さに呆れて退職した私とってみれば本書も「エリート新聞記者の戯言」としか思えぬ。販売店と新聞社の爛れた関係、クライアントと広告代理店と新聞社の常人では理解できないあり方について告発するつもりはないがとどのつまりは理想論を振りかざして見てみぬふりをする新聞記者上がりの幹部連中に問題がある。金と経営について無知な著者のような人間が経営幹部である以上、新聞などというアナクロマスコミュニケーションに未来などある筈がない。あくまで架空の数字(部数や売り上げ)を計上することに腐心している新聞社の現状は架空の視聴率に踊らされているTV業界や出鱈目な部数に振り回されている出版業界と五十歩百歩だ。「新聞に未来はあるのか」ある、と少しでも思っていたら20年以上勤めた会社を辞めたりはしない。重要なことは本書の終わりで著者が語っているとおり、「記者上がりを社長にしないこと」それに尽きる。

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次作は生の事実を, 2007/6/3
レビュアー: あまカラ - レビューをすべて見る
 毎日、産経、中日の三社連携案など、面白く読んだ。他の読者が挙げていない点を指摘しておきたい。

 著者が毎日新聞社の常務取締役を退任した理由があとがきに書かれているのだが、奥歯に物が挟まったような書きかたでよくわからないのだ。毎日新聞社内で販売に関する新たな改革案を提示し、激しい抵抗に逢い挫折したようだが、詳細は不明だ。著者は冒頭で本書は暴露本でも内部告発でもない、としているのだが、やはり著者が直面した事実こそが、一般論よりもはるかに面白い部分ではなかったか、との思いはぬぐえないのだ。いわばマグロのトロだけ食い逃したような気持ち。

 関係者に迷惑をかけたくない、という気持ちはわかるが、それでは結局あたりさわりのないことしか書けないマスメディアと同じではないか。本書で著者は新聞社の販売局は伏魔殿といわれていると書いている。時期を置いて、今度は伏魔殿とぶつかった生の事実を語って欲しい。

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 確かに、ネットで流通している、ネット上で読める議論と、彼らの目線はレベルが違う。新聞記者も二十年選手になってくると吸収する力も衰えてくるし、新しいモノの見方も合点がいかなくなる、でも、ネットでいくら良質だとされる議論でもバラして構造を見るとまだその程度のレベルなのか、ということになってくる。私なんぞと酒席を共にするのも彼らの「ネット社会って何よ」という興味の延長線上にあるのだろうと思うが、それはさし措いても紙面にしない各種事情に対する考察の深さはネットをネットでしか見ない人間のそれとはかなり隔絶した品質の高さなのだなと思った次第であります。


 結局、「『若い人から見た渡辺恒雄論』を書け」とか途方もないお題を出されるわけで… まあ、そのうちどっかの月刊誌にお願いしておきますわ…。