だいたい物事が流動的な状況から収束に向かい、誰もが関心を払わなくなるころ、決まって登場する爺がいて、突発的な事件でも何がしかの教訓にまとめてしまうわけである。爺はまとめるために議論に参加するため、流動的な状況でははっきりと指し示さず、抽象的なことをいい、あとになって「ああ。爺は読み解いておったのだな」と思い返す人々があるものらしい。


 先日の「読み逃げ」問題でOKwaveで出火し、ITmediaの岡田女史の記事に延焼した件について、佐藤信正氏がオチをつけている。


http://arena.nikkeibp.co.jp/col/20070330/121427/


 「ニュースサイトは反省を!」という魅惑的なタイトルがつけられているが、今回の物件の場合、釣られてニュースサイトが反省するというよりは、提示された問題(ネタである可能性を含む)がどれだけキャッチーで、ネットの論争を呼び起こしうるのかという点でおそらく「分かっててやってる」部分は少なからずあろうと思う。


 同様に、次のような記事もある。


http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/30/news070.html


 もちろん、ネタである。どこがネタかというと、前フリのところに書いてある。ドコモ公式の、当時9サイト選ばれた検索エンジンのひとつがF★ルートなのであって、ケータイの需要が旺盛だから”良いサービスさえ提供できれば”100万ユーザーが簡単につくなんてことはありえない。F★ルートは120万会員だが、それだって「ドコモのiモード検索で連携している」という一種の既得権益みたいなものを獲得しているから達成できている部分もあるだろう。当然、iモード検索で連携したところは当然それなり以上のアクセスを持ち、それらをコアにしたサイトグループ構成で各々100万登録会員を超えるサービスを抱えているはずだ。


 モバゲータウンやmixiモバイルみたいに突然化け物になるケースを除いては、小さく産んで大きく育てる的な地道な作業の連続になる。ニュースサイトしかり、コミュニティしかり、音楽や漫画などのコンテンツサービスしかり、ECサイトしかり。もちろんビットレイティングス佐藤氏は聞かれたことを誠実に答えているだけだろうが、切り取り方ひとつでこんな不思議状況に見えてしまうというのは私だって驚く。


 そこを抜きにして、ケータイで検索かけないと死んじゃう連中なんてそういう顧客層なのだから、そういう行動様式があって、そりゃあ30代も半ばに差しかかろうという私からすれば異常すぎるのは当然だ。渋谷でヤマンバを見て腰を抜かす地方高校出身理系大学男子みたいなもんだ。


http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/18/news090.html


 では、3キャリア+Willcom向けの有料サービスで実働100万個以上(一週間に15分以上のアクセスをしていると予想される)のメールアドレスを確保しているサービスはどれだけあるの? といわれたらどうだろーね。また、F★ルートが今回取り上げられたけれども、じゃあIxen(旧シーフティ)はどうか? gooモバイルは? といったとき、まったく違う顧客属性が織り成す別の行動様式があるのかも知れんぞ。


 別にビットレイティングスが良いとか悪いとかではなくて、恐らく聞けた話のうち、もっともエッジの効いた、尖ったところを並べて書いているから実態とかけ離れたようにも見える不自然な記事のように感じるのだろう。モバゲーが成功したあとで参入したのは事実だとしても、PC系サービス大手がそんな急にケータイ参入できるわけもないしな。もっと前から準備はしておったわけだ。だが、そこらへんだけ抜き出すと、あたかもケータイビジネスが「10代の田舎者に振り回される馬鹿の巣窟で井戸を掘る人々」と思われかねない。異様だな、と。


 その下の記事でサーチテリアの奴もあるけど、こちらも何か凄いことになってる。確かにサーチテリアは頑張ってる会社に見えるがこの記事ではレップの基本的な機能を難しく書いて記事にしてるだけだって。媒体広告枠仕入れてきてマッチングする仕組みがそんな大層なのか? という話だ。


http://bizmakoto.jp/bizmobile/articles/0607/11/news042.html


 ただし、ネタ記事、すなわち本質的でない事案をコアにして分からない人向けの解説をこしらえたり、「読み逃げ」のようにそもそも存在しないように見える問題を取り上げてしまったり、という読者としての判断は、ある程度その世界に通暁していないと分からない。そして、本当に稼げているモデルをネットで誰もが知ることのできる形で開陳することなどありえない。すべての記事は、結果をもとに書かれている以上、過去の延長線上にない未来を読み解くのに役立つとは限らないのである。


 きっと佐藤信正って人は、そういうことを私たちに言いたかったに違いない。