落語 天王寺詣り -8-
(大阪2番 四天王寺)
いろんな店がぎょ~さんに並んでおりますが、
前 回 の つ づ き
ひときわ目に付くのがこの握り寿司屋さんでございまして。
「ほぉ~ら、下ろしたて、うまいのん下ろしたて、どぉじゃい。ほぉ~ら、握りたて、うまいのん握りたて、どぉじゃい。江戸寿司じゃいな、早や寿司じゃいな。こんなんどぉじゃいな、こんなんどぉじゃいな……。ほぉ~ら、下ろしたて、うまいのん下ろしたて。握りたて、うまいのん握りたて。江戸寿司じゃいな、早や寿司じゃいな。こんなんどぉじゃいな……(へぇ~ッくしょいッ)」
鼻まで握っとぉる。
こっちの方を見ますと
「本家ぇは竹独楽屋でござい (ウゥ~~ッ) 本家ぇは竹独楽屋でござい (ウゥ~~ッ) 」
隣りを見ますと
「亀山のチョ~ン兵衛はん (ピョンッ、コロコロッ) 亀山のチョ~ン兵衛はん(ピョンッ、コロコロッ)」
向こぉの方を見ますとサーカスでございますなぁ、何々洋行と緞帳に書いたんを吊りよって客の呼込みしとぉる
「さぁいらはい、いらはい、ただいま空中サーカスの始まりはじまり (♪チ~タチタタ、チ~タタ……) 」てやってます。
向こぉの方見ますと、こら覗きカラクリで
「♪えぇ~ぇ、三府の一の東京へ、波に漂う益荒男(ますらお)が、拙い恋に漂いしぃ、父は陸軍中将で、片岡子爵の長女にてぇ、その名片岡浪子嬢……」
てやっとぉる。
向こぉの方を見ますと、お乞食さんです。こらまた子どもを横手に置きまして、頭へ手拭い乗せてからに
「♪帰命ぉ~、頂礼ぃ~、地蔵さぁん~、賽のぉ~、河原のぉ~、物語ぃ~……、泣いてんねやあれへんやないかいな、今もぉたるがな、ちょっと待ってなはれ……、一つぅ積んでは父のためぇ~、二つぅ積んでは……、大きぃやっちゃなぁこれ (プチッ) 母のぉためぇ~」
こっちがわで御詠歌上げて、こっちがわで観音さん殺しとぉる。
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つ づ く
下ろしたて=ワサビを摩り下ろす。
竹独楽=主に九州地方の郷土玩具。サイドにスリットが切られ回すとブ~ンという音を立てる。
亀山のちょん兵衛はん=竹細工のオモチャ。竹片に小さな人形が乗せてあり裏に竹ひごで細工を施し、手を離すと回転しながら飛び上がる。
♪チ~タチタタ、チ~タタ……=作詞・武鳥羽衣、作曲・田中穂積「美しき天然(天然の美)」1902(明治35)年。サーカスのジンタとして有名。
ジンタ=街頭宣伝やサーカスの人寄せなどをする小人数の吹奏楽隊、またその吹奏楽をさす 大正期以後の俗称。「ジンタッタ、ジンタッタ」という3拍子のリズムが語源だといわれる。
♪えぇ~ぇ、三府の一の……=徳富蘆花・著「不如帰」
御詠歌=霊場の巡礼者や浄土宗信者の歌う、仏や霊場をたたえる歌。和歌や和讃に単調で物悲しい節をつけ鈴(れい)を振りながら歌う。巡礼歌。詠歌。
観音さん=虱(しらみ)の隠語。シラミの足が千手観音の手を連想させるところから生じたのかも?
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