「クワイ河に虹をかけた男」の取材の中から登場人物やエピソードから印象的なシーンを紹介します。きょうは5回目です。
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永瀬さんには握手を求めたデイキンさん。しかし、彼の日本人や日本に対する態度はこれとは違い、激しいものだった。
それを象徴する出来事が翌日にあった。
泰緬鉄道は国境部分は廃線になり、全長415㌔のうち130㌔が営業しているが、廃線区間に残るヘルファイアパスという難所がある。
泰緬鉄道は全線を通じてトンネルがなかったが、切り通しを何ヶ所が造らざるを得なかった。中でもヘルファイアパスは約400mに渡って切り通しを通すために、夜間の突貫工事でカンテラの灯りがまるで地獄の業火のように見えたため、捕虜たちはそう呼んだ。
この区間だけで捕虜約400人が亡くなったという。
元捕虜たちはここを巡礼の場所として大切にしていて、のちにオーストラリア政府が博物館を造っている。
国道を約100m西に入って階段を下りると、路盤の跡があり、切り通しが見えてくる。
永瀬さんの一行は花束を持ち、歩いて行くと前方に人影が見えた。
