Fさんと陳さんはデートすることにしました。寒いですが外出します。日が照っていますが軽く氷点下です。ハルピンでは氷祭りが開かれていました。氷の彫刻を二人で見て回ります。通訳が同行してくれているので安心です。
ご飯を食べて、市内を流れる大きな川を見に行きます。川が凍りついて多くの人がスケートや、魚釣りをしています。
繁華街には多くのロシア人が観光に訪れ異国情緒もばっちりです。Fさんは繁華街で100元ぐらいのアクセサリーを買ってあげます。陳さんは大喜びでそれを見つめて離しません。店を出ると、Fさん腕を陳さんがつかんできます。
Fさんは生まれて初めて女性と腕を組みます。ダウンジャケットの上からですが心地よい感触が伝わってきます。ホテルに帰ると陳さんの両親とお兄さん夫婦がいました。
親族との対面です。通訳を介してお父さんは娘をよろしく頼むといいます。
両親は40代半ばでFさんと年齢はそんなに離れていません。着ている服は上等とは言えませんが小ざっぱりしています。家族のやり取りを見ていると、ちゃんとした家庭が伺われます。
そのまま婚約の食事会になりました。
お父さんは上機嫌です。乾杯を繰り返しFさんもしこたまお酒を飲まされます。婚約者の陳さんはハラハラしながら二人を見つめます。3時間ほどで食事会は終わりました。
家族を見送り、陳さんと二人でホテルのバーで一休みします。通訳やQさんは気を聞かしてちょっと離れたところで知らんぷりしてます。
Fさんが陳さんの手を握ると彼女は体をくっつけて肩に頭を置きます。お酒と陳さんに酔ったFさんはボーとした頭でこの2日の出来事を思い起こします。恋人ができて付き合って婚約するまでの過程を昨日今日で経験しました。不思議な体験です。半分夢のようです。でもそれは現実です。
翌日 ハルピンの最終日、Fさんは婚約者の陳さん宅に訪問します。
一面 真っ白な平原のようなところに5軒ぐらいの家がありその中の1つが彼女の家いでした。平原は夏になるとトウモロコシ畑になります。
小さな家の中には昨日会った陳さんの両親がいました。ニコニコしてどうぞどうぞとあったかい部屋の中に招き入れてくれました。質素な暮らしが伺える室内でした。あったかいミルクをごちそうになったあと、Fさんは空港に向かいます。彼女と彼女の家族も見送りで一緒です。
車の中、二人はずーっと手をつないでいました。次に会うのは結婚式で1ヶ月後になります。しばしの別れです。空港での別れ際、陳さんは言葉もなく、目に涙をいっぱいためていました。
Fさんは改めて彼女を見ると、清楚でかわいらしくてAKB48のメンバーの一人のようです。
そして、またすぐに会えるとFさんが通訳を介して話すと彼女のほほに涙があふれてきました。彼女は人目をはばからすFさんの胸にしがみつきます。
Fさんは頭の中では大好きな浜田省吾の音楽が鳴り、ドラマの主人公になった気分になります。後ろ髪、引かれる思いで飛行機に乗り込みます。
夕刻、日本に降り立ちました。しかし3日前の日本と違って見えます。
Fさんの将来は明るく輝いています。自分に自信を持って生きていける気がします。
Qさんを交えた家族会議を開きます。両親はFさんが結婚できることを心から喜んでいます。元ヤンキーの妹P子もしんみりと「お兄ちゃんを見なおしたよ」と言い金髪の前髪から覗く目がうるんでいます。
結婚式は3月の後半に決まりました。結婚後の生活ですが両親は、これを機会にFさんのUターンを希望します。でも、Fさんは20年以上続けた仕事を変えることと、給料が下がることに懸念があります。少ないですが気の知れた友達もいます。
しかし、一方で都会での新婚生活には不安があります。日本に不慣れな中国妻との2人だけの生活。Fさんへの負担は大きなものがあります。
Qさんが口を開きました。
「ハルピンの女性でも一度、都会に出てしまうと日本の田舎には行きたがらなくなりますよ。FさんがUターンする意思があればこの機会がいいでしょう」と言いました。
P子が「お兄ちゃんのお嫁さんと友達になってあげるー」と言います。
Fさんは内心、友達じゃないだろ義理の妹だろと思います。P子より奥さんが15歳も年下の義姉になります。
Qさんは、「村に先に嫁いだ3人の中国人妻にも呼びかけて生活面で全面的にバックアップしますよ。この村なら私の目も届きやすいです。」と言います。
その言葉にFさんはUターンを選びます。
Qさんと家族はFさんに気付かれないようお互い目でシメシメといったサインを交わします。Fさん結婚+Uターンのシナリオはもうすでにずいぶん前からQさんとご両親で描かれていました。

