私がお気に入りのデザイナーズマンションから、山奥の安い古いアパートへ引っ越したのは、本当に重要なプロセスだったのだと思う。


全捨離の世界に足を踏み入れられたのは、間違いなくこの選択をしたからだ。


お気に入りのデザイナーズマンションでの暮らしは、一言で言って『贅沢』だった。


当時の私は信じていた。


豊かさとは、持つことだと。


良い家に住むこと。


良い家具を持つこと。 


良い服を着ること。


良い車に乗ること。


良い物に囲まれること。


それが豊かさだと思っていた。


「高いものを選ぶ自分で在りたい。」


本気でそう思っていたのだ。


それらを持っていない自分には、まるで価値がないような気さえしていた。


そんな私が、全捨離という言葉に出会うのだ。


なくなるのに、豊かになる?


持たないのに、満たされる?


減っていくのに、幸せになる?


それは、私の常識がひっくり返るような話だった。


それと同時に私は、その未知なる価値観に、


初恋すらも超える衝撃と、ドキドキと胸が高鳴るのを感じたのだ。


なぜなら私は、生まれて初めて「持たない豊かさ」という概念に出会ったからだ。


持たない豊かさ。


そんなものが本当にあるのだろうか。


あるとしたら、


私の世界にも存在するのだろうか。


期待でもない。


好奇心でもない。


その得体の知れないときめきは、日に日に強くなっていった――