こんにちは。

 本日も楽しんでいただけたら幸いです。

 今回だけ読んでいただいても大丈夫。

 セリフだけの小説なのでサクサク読めます。

 今回はとくに短い。

 朝30分で書きました。^^

 

 

 

 連続創作小説「病気屋のおばあさん」

  CASE11

 あたしかい? 疫病神さ。いろんな病気を売ってるよ。あんたの家のそばのガード下やら高架下で商売してるからよろしくね。あ、あたしも一応神様だからさ、見えなかったらごめんなさいよ。次元が違うからね。どうしても会いたかったら泥酔するか睡眠不足とか飢餓状態とかでおいで。え? 病気なんて要らない? 買う人もいるのさね。だってタバコがそうだろう? 金出して病気の素を買ってるのさ。ひっひっひっ。さて本日は誰が何を買いに来るのかねぇ、楽しみだよ。

 

              *

 

「おばあさん、ここは病気を売っているとかいう場所かい?」
「そうだけどさ、あんたあたしが見えるのかい?」
「見えるけど」
「睡眠不足かい? それとも薬やってるのかい?」
「睡眠時間はまぁ四時間くらいか。あと鬱病の薬飲んでる」
「日本人てのは本当に睡眠時間が短いね。鬱の人も多いし。はい、いらっしゃい。なんにいたしましょうかねぇ、ひっひっひっ」
「そ、早漏になりたいんだが」
「ほう? ま、あれも性機能障害だから病気だね。一応理由をきいておきましょうかねぇ」
「私は、会社まで通勤時間が往復3時間半、残業もある。で、帰ったら疲労困憊でバタンキューだが、妻とのセックスは愛情のために欠かせないものと考えている。しかし私はどちらかと言えば遅漏でね」
「なるほどね。時短。なるべく早く終わらせたいと?」
「そうだ」
「わかりましたよ。ひっひっひっ、奥さんの立場としては微妙だろうがねぇ」
「妻を愛しているからセックスレスというわけにはいかない」
「そうだね。お代は月一万円でいいよ。財布に現金いれておきな。あたしが好きな時に失敬するからさ」
「了解した。電車内で仮眠をとるから、隣に座って私の財布から抜いていけばいい」
「あたしはスリじゃないんだよ。まぁいいか、そう考えておけばいいよ」
「それじゃそういうことで」
「はい。まいどありぃ。さてさて今夜はもう店じまいするかねぇ」



「あの、おばあさま、こんばんは。ここは病気を売っているって場所でしょうか?」
「ええ、そうだけどさ。帰ろうとすると客が来るねぇ。ひっひっひっ」

       *

「おばあさん!」
「おや、あんた先日の、働きすぎの旦那さんだね? 待っていたよ。文句言いに来たんだね?」
「そうだよ。いったいどういうことだ? 私は早漏にしてくれと依頼したが、勃起不全にしてくれと頼んだ覚えはないぞ」
「実はねぇ、あんたが帰った後あんたの奥様が来てねぇ」
「家内が?」
「そう。うちの主人をEDにしてくれってさ」
「な、なんで妻がそんなことを? そ、そうか、私とセックスするのが嫌だったんだな? くっ、それなら私が無理をして毎晩抱いていたのは全く意味がなかったのか……」
「違うよ。奥様はあんたを愛しているね」
「じゃ、なんで………」
「愛しているからさ、あんたに無理をして欲しくないんだよ。わからないかねぇ? あんたの身体を心配しているのさ」
「………」
「早漏にせよセックスのエネルギーは半端じゃないよ。勃起しないならセックスしなくてもすむだろう、と奥様はお考えになられたのさね」
「………そうだったのか」
「どうするね? それでもあんた奥さんとしたいってんなら早漏に変更してやってもいいけどねぇ。過労死も怖いし」
「いや、勃起不全と早漏、両方キャンセルしたいが、わがまま言っていいかい?」
「! かまわないよ。でも本当にいいのかい? 腹上死とかしちゃわないかい?」
「ああ、今の会社はブラックだし、辞めるにはいい機会だと思う。近くでどこか探してみる。収入は減るだろうが、妻と仲良く暮らすのが一番だ」
「あたしもそれがいいと思うよ。両方キャンセルね」
「あ、それと、妻にはこのこと内緒にしといてくれるか? 悪いけど、家内が来て理由を尋ねられても、おばあさんの方のミスで勃起不全にはできなかったってことにしておいてくれるかい?」

「わかってるよ。あたしが悪者になって、あんたの男が立つならね、ひっひっひっ」

       おしまい