#227 髪は女の命 ~「三年目」~ | 鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。

夫婦が登場する落語は実に多い。来11月22日は“いい夫婦の日”である。これからしばらくは夫婦が登場する噺を鑑賞し、「落語世界における夫婦観」について一考察を加えて行くことにしよう。先ずは「三年目(さんねんめ)」という人情噺から。

 

相思相愛の、結婚2年目の若夫婦がいた。ところが妻が重篤な病に罹った。夫は懸命に看病して奇跡を待つがとうとう医者に見放された。これを知った妻が「あなたはまだ若いから私が死んだらすぐに後添いを貰うのでしょうね?」と訊く。「私はお前一筋だから再婚はしないよ」と夫が真情を吐露する。「でも、あなたは持てるし、親戚も黙っていないでしょう。そう思うと、死んでも死に切れませんわ」「そんなことは絶対にしないが、もしそうなったら、婚礼の晩、八つ(午前2時)の鐘を合図に幽霊となって出ておいで。そうすれば花嫁が怖がって逃げ出し、縁談はご破算になるよ」「わかったわ、約束よ」「約束したよ」。この会話に満足して気が緩んだのか、間もなく妻は他界した。

 

百箇日の法要を機に夫の親戚筋は再婚相手を勝手に選んで執拗に再婚を勧めた。夫は抗しきれず、新婚初夜を迎えることになった。夫は先妻の幽霊を秘かに待った。ところが八つの鐘が鳴っても先妻は現れない。「口先だけのことだったのか」と思いつつ念の為20日間、幽霊の登場を待ち侘びたがとうとう先妻の幽霊は現れなかった。

 

夫はいつしか先妻のことを忘れて後妻との暮らしを楽しむようになり、可愛いい子供も産まれた。

 

先妻の死後3年が経過したある深夜、八つの鐘と共に先妻の幽霊が現れた。「何で3年も経った今頃なんだ?約束が違うではないか」と夫が難詰すると、先妻が答えた。「だって納棺の時、剃髪されてお棺に入れられたでしょう。坊主頭であなたに逢うと愛想尽かしをされると思い、髪の毛が伸びるのを待っていたの」と。

 

  昔はというか所によっては、死者は剃髪され、棺桶に入れられて葬られる風習があった。このことを知っていないと理解に苦しむ噺である。落語に登場する女房は亭主を亭主とも思わない、生活疲れをした嬶(かかあ)タイプが圧倒的に多いが、この噺の女房は珍しく“可愛い女”と言えようか。“髪は女の命”ということから思いついた一席であって“可愛い女”を意識したものではなかろうが、「落語に登場する可愛いい女ベストテン」を選んでみたいという気を起こさせてくれた。いずれチャレンジしてみたい。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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