#204 四万六千日の出来事 ~「船徳」~ | 鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。

 毎年7月9、10日は浅草・浅草寺の「四万六千日」という縁日で、境内では「ほおずき市」も開催されて大勢の人出で賑わう。この期間にお参りすると46,000日(約126年)お参りしたと同等のご利益があるというから「参らにゃ損」ということで、私もお参りしたことがある(写真 2007年)。

 

 

落語の「船徳(ふなとく)」はこの縁日での出来事を一席にした滑稽噺である。

 大家(たいけ)の若旦那の徳さん、遊びが過ぎて勘当となり、父親が贔屓にしている柳橋の船宿に居候している。毎日ぶらぶらしているのにも飽いて、格好の良さに憧れて船頭を志願し、技術を教わることにした。

 

四万六千日の書き入れ時、船宿の船頭が出払っていて、若旦那の出番となり、二人の客を大桟橋(駒形橋、演者によっては吾妻橋)まで乗せていくことになる。一通りの技術を教わったものの一人前にはほど遠く、石垣に寄ったり、ぐるぐる回ったりの連続で船を操ることが出来ない。挙句の果てには「お客さん、向こうから船が来たら避けて下さい」と言う始末。この船中での若旦那と客とのやりとりや仕草がこの噺の聴き所、見所である。

 

なんとか大桟橋の所まで行き着くが桟橋に着けられず、川(隅田川)の中で客は降ろされる羽目になる。胸の辺りまで水に浸かって岸に向かいながら「おーい、若ェ衆、大丈夫かい?」と客が叫ぶと、「へェ、お客さん! 岸にお上りになったら船頭を一人雇って下さい」。

落語によく登場する「若旦那もの」の代表作の一つで演じ手の多い噺であるが、八代目桂文楽の高座が出色である。また、噺上手の六代目三遊亭円楽が楽太郎時代に演じた一席も秀逸であった。若かった楽太郎自身が徳さんそのものであったから違和感な噺に溶け込めたということであった。

 

柳橋から浅草寺まで2Km足らずの距離で、歩いてもしれているが、砂埃と暑さを避けるために船を利用したのであろう。柳橋界隈(写真、神田川が隅田川に流れ込む辺り)には現在でも船宿が多く営業しており、「屋形船での隅田川の旅」を楽しむことが出来るようである。夏の宵に、徳さんの姿を思い浮かべながら屋形船に乗る、落語ファンならではの楽しみ方であろう。

 

 

ほおずきは見ることが少なくなったが、私の子供の時分は中をくりぬいて口で鳴らすという遊びをよくやったものである。懐かしさの余り一鉢買って帰った。そう言えば、海ほおずきというものも同じように口で鳴らした遊んだことも思い出す。昔は単純な遊びを飽きもせずによくやったもので、現在の子供たちとの大きな違いを感じる。

 

 

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