渡月さん、おかっぱ美少女綺麗に表示されてますよ~……ところでアメって?
まだアメブロをよくわかっていない。 駱駝家の文字書きの方、杏月です。
母の知人の旦那様が蔵書を譲ってくださるということでいそいそとお宅へ伺った。
広い敷地の一角に小さな小屋があり、そこを旦那様の書斎にしているそうだ。
引き戸を開けて覗いてみると作り付けの本棚があり、そこに入りきらない本が床に積まれていた。
「ねえ、呆れるやろう。わざわざ小屋作って本に占領させとんのやで」
と奥さんが溜息まじりに言うが本好きにとっては夢の部屋である。
「いや、この子の部屋も似たようなもんなんよお。部屋の半分、本棚が占領しとんねん」
ふいに母が口を挟んできた。本当のことだがばらされたくはない。
「しかも、一応女やのに部屋に本棚はあっても箪笥がないんよ。もうどうしようかねえ」
ふう、と母がわざとらしく息をはく。一応とはなんだ。多少枯れているが生まれた時から女以外の性別になったことはない。
あと、言わせてもらうがちゃんと箪笥も一棹置いてあるぞ。隅においやられてはいるが。
……とは思いつつもいい年こいてこういう状態の娘を持ってしまった母の気持ちは察するに余りあるので笑顔を貼りつけたまま無言でいた。
旦那様から本をたくさんいただき、美味しいお茶をいただいたあとほくほくとお宅をあとにする。
「あんたもああいう小屋建てたいと思ってるんやろ」
帰りの車のなかで母が言うので、もちろんだと頷く。出来れば小屋だけでなく一軒家が欲しいくらいだ。
「その前に、せめて箪笥を買え」
と母が呆れたように言う。
だから一棹ちゃんと持っている。部屋の隅にあり下から二段はぎっしりと文庫がつめられているけれど……。