品質良すぎてこれでもコスパ


一時期、成城石井ワイン巡りにハマっていた

その中で1番ハマったのがこのワイン















〜ワイン選挙 ドイツ編〜

俺はドイツのワイン代表人、独道のもとを訪れた。


独道はA大学の研究室に泊まり込み、研究に没頭しているらしい。

学者としても有名で、香り成分に関する論文を数多く発表しているそうだ。


取材を申し出ると、独道はいきなり一方的に話始めた。


「ドイツワインの魅力はエレガントだ!

エレガントとは何か、それは“美しさ”だ!

クリスマスや記念日にワインが定番なのはなぜか?

それはオシャレだからだろう!

その“オシャレな味、美しさ”を最も兼ね備えるのが、ドイツワインだ!」


迫力に押され、返事もできずにいると、さらに独道は一方的に語り続けた。


「ドイツは日照時間が短い!下手をすればチリやスペインの半分だ。

完熟なんてしやしない。管理だって大変だ。

だが考えてみろ……“完熟”しなきゃダメなのか?

“早くできること”が正しいのか?

現代人は“効率”に囚われすぎているのではないか!!」


……演説かよ。俺の心のツッコミをよそに、独道は悦にいった顔で語り続ける。


「果実味なんて、日光さえあれば簡単に得られる!

だが香りの“美しさ”は違う。

時間をかけて積み重ねる香りの繊細さと深み、それがエレガントとなるのだ!」


今回の取材、会話にはなってない。……まあ、ええか


「日射量に甘えていると、南アフリカのように“熟して甘いだけ”のワインになる!

俺から言わせれば、あんなのはジュースだ!

“エレガント”がなければワインではない!」


……はい来ました、他国ディスり。やっぱりこいつもワイン代表人だ。


ようやく話の隙を見つけて、なんとか「コスパワイン」の話題へと持っていった。



〜コスパワイン〜


独道が出してきたのは意外にもスパークリング。

グラスからはじけ飛ばんばかりに泡がシュワシュワしている。


独道は得意げに語り始めた。


「確かにドイツにはコスパワインが少ない。だってそうだろ寒くて日射量が少ないんだから。

だが、困難だからこそ“ものづくり魂”が炸裂するんだ!日本人なら分かるよな!

これがゼクトだ!

なんと“ドンペリ並みの8年熟成”を経てもなお、2500円程度!

成城石井ではお手頃価格に入るが、品質は高級帯にも引けを取らない!」


うるせー。半分聞き流して、グラスに口をつけた。


「すごっ……」


思わず漏れた。

強烈な酸味と炭酸。

それでいて、最後に残るのは不思議な“キレイさ”だ。


「何がすごいのか?」

余韻に浸る俺に、独道が食い気味で問いかける。


「えっと……酸がすごいです」

「どうすごい?他のワインと比べてどう違う?」

「……キレイじゃないですか?」

「なぜキレイと思った?その根拠は?!」


詰問されている。


「え、えっと……あと甘いですね」

「どう甘い?数値上は人間の舌が感知できないレベルの糖分だぞ!

何をもって甘いと言う?下手な食レポみたいにただ“甘い”と言っておけば通じると思ったか!?」


理詰めで追い詰めてくる独道。胃がキリキリする。


「ドイツワイン=甘口、と思ったら大間違いだ!

確かにドイツは甘口の頂点にある!だが、それだけではない!

どうせ君の頭の中のドイツは“ポテトとソーセージとビール”しかないんだろう!」


……ごもっともです。


「柑橘の香りがして甘く感じました」

「柑橘とは何だ?ゆずもレモンもオレンジも柑橘だ!どれだ!」

「……レモン、ですかね」

「何レモンだ!?マイヤーかユーレカかリスボンか?“レモン”というレモンは存在しないぞ!?」


……もう無理。嫌いだこの人。


「なんだ、取材に来て、飲んでおきながらダンマリか」

「で、でも俺ソムリエじゃないですよ!」


つい言い訳すると、独道は指を突きつけて言い放った。


「ほら出た!“でも”“だって”!それは言い訳だ!

次は“人のせい”にするんだろう!

やれ教えてくれなかった、やれ説明が悪いなどと!

言い訳も他責も誰でもできる!そんなことしか言えない時点でそいつはもう終わりなんだ!!

はっきり言おう!君にワインを飲む資格はないっ!!!」


……俺、そんな悪いことしたか?

涙を堪えつつ、取材は終了した


〜続きはインスタへ〜