今回は、個人的に最もきちんと知っておきたかった話である、Wash Sale Ruleについての説明です。


一言で言えば、損失の出ている銘柄を、税金対策として損失を確定させるためだけに売り払って即買い戻すようなことは認めませんよ、という話だったかと思います。


詳しく見てみましょう。


(その3:キャピタルゲインにかかる税金 / 番外編:ウォッシュ・セール・ルールをもうちょい詳しく


----------
税と投資~個人投資家へのガイド~
(http://www.optionseducation.org/content/dam/oic/documents/literature/files/taxes-and-investing.pdf)


p. 9 Wash Sale Rule


Wash Sale Ruleとは、納税者が、損失を抱える株式または有価証券(オプションを含む)を売却し、売却が行われる前30日間または売却が行われた後30日間に、『実質的に同一の』株式または有価証券(または、実質的に同一の株式または有価証券を購入対象とするオプション)を再取得することを妨げるものである。Wash Sale Ruleはまた、納税者が、ポジションを畳んだ前後30日以内に、実質的に同一の株式もしくは有価証券を売却した場合、または実質的に同一の株式もしくは有価証券に対して別の空売りを行った場合、空売りポジションを畳む時点においての損失を計上することも防止している。『実質的に同一』という用語の意味は、10ページで議論されているように、一般的にはショート・セール(空売り)ルールの場合と同一である。


Wash Sale Ruleが適用される場合、その損失は認められず、代替資産のベース価格は、元の資産のベース価格から、代替資産のコストと古い資産が売却された時点の価格との間の差次第で、場合によっては増大または減少された価格、とみなされる。元の資産の保有期間は、新たに取得された代替資産の保有期間に加算される。


IRS(国税庁)は、株式売却の前後30日以内に、納税者が、株式に関して『インザマネー』のプットオプションを売却し、かつ、プットが売却された時点の客観的要因に基づいて、そのプットの権利が行使され得る公算が極めて高かった場合、Wash Sale Ruleがその株式の売却に伴う損失を認めないという立場を取っている。これらの要因には、プットが売却されたのが対象株の株価およびプットの行使価格の間であるようなスプレッド、支払われたプット価格(プレミアム)並びにその株式のヒストリカル・ボラティリティ (HV) が含まれる。


IRSはまた、納税者が株式または有価証券を損失を含む形で売却し、売却前後30日以内に実質的に同一の株式または有価証券を、その納税者の所有する個人退職金口座(『IRA』)で購入した場合、Wash Sale Ruleが適用されるという立場を取っている。IRSはさらに、この状況では、IRAにおけるその投資家の取得ベースは、認められない損失を反映して増加することはないと定めている。


例:
XYZ社の株式100株を、70ドルの取得ベースで保有。2014年12月15日、100株を1株20ドルで売却し、50ドルの損失を被る。2015年1月10日、XYZ株100株を1株25ドルで購入。
→Wash Sale Ruleでは、2014年12月の株式売却による損失は、認められない。この投資家は、1株あたり75ドルの新しい株式取得ベースを持つことになる。

※注コメント: 説明するまでもありませんが、年末に5000ドル分の損失を確定させたつもりが、30日以内に同じ株を買い戻してしまうと、未だ『XYZ株からは損失が出ておらず、1株75ドルで購入して含み損を抱えたまま』とみなされてしまう(→よって、確定したつもりの損失を、同じ年に上げた利益と相殺させて税金を減らすということはなされない)、という話ですね。売却後30日以上間を空ければ、その時点でようやく損失が確定する、という形でしょうか


例:
2014年1月6日、XYZ社の株式100株を1株50ドルで空売り。2014年4月5日、XYZ社株式100株を1株55ドルで購入し、その株式を用いて空売りポジションを閉じる=500ドルの損失。2014年4月28日、XYZ社の株式100株を1株52ドルで空売り。
→損失を計上した空売りポジションを閉じて30日以内に実質的に同一の株式の別の空売りを行ったため、最初の空売りを閉じた時の500ドルの損失は認められない。

----------

 


…難しい!!単純に言えば、「損失状態にある株を売って損失を確定させて、その年に他の取引で得た利益から支払う分の税金を減らす」ということはよくやられているのではないかと思いますが、損失株を売った後即買い戻した場合、米国市場では、『損失を確定させるためだけに売って、すぐ買い戻したね?節税目的だね?そんなのは確定損失とは認めねーから』とIRSが難癖をつけてくる、というお話ですね。その『すぐ買い戻す』という期間は、前後1か月ということだという訳ですね。


原則は分かりますが、何というかこういう教科書的な解説を読むと頭が混乱するというか、実践的にどの場合にWash Sale Ruleが適用されてしまうのかは結構難しいように思います(一応同一銘柄を売買するにあたり前後1か月間を気をつければいいだけなのかもしれませんが、実際1か月は結構長いですし、思わぬ所でこのルールを食らって色々複雑になっちゃいそうな気もします)。


正直ここまで来るともう素人がアレコレ考えるより、税理士に丸投げした方が良さそうな気もしますが(というか基本証券会社が勝手に計算してくれるだけだと思うので、それに従えばいいだけかもしれませんが)、明日は市場がお休みなため、探してみたら親方星条旗・IRSの公式文書、Publication 550に今回の章よりも豊富な例での説明があったので、多分どうせ同じぐらい分かりにくいだけだとは思いますが、そちらも読んでおこうと思います。


というわけで、2日連続でWash Slae Ruleについて見ておく予定です。