あらゆる予想が垂れ流し状態で誰も責任を取らない昨今、過去の『注目銘柄予想記事』を振り返って、どの程度当たることもあるのかをちょっと確認してやろうじゃないかと思い立ち、軽く調べてみることにしました。

 

といっても予想記事など無限にあるわけですが、ここはやはり自分の好きな、バクチ要素の大きいバイオ低位株に着目してみようかと思います。

 

2011年ぐらいからの5-6年、「biotech top penny stocks 20xx(年)」みたいな検索でヒットしたサイトを適当にピックアップしていく形です。


…と思ったんですが、意外とわずか1記事を見るだけで結構なボリュームになったので、今回は2011年の1記事のみで、続きはまた次週以降の週末にでも取り上げようかと思います。結構面白かったので、ちょうど書くことのない週末を埋めるのにはもってこいの企画かもしれません。

 


挙げられた銘柄の、ニュース記事翌日の株価1年後の株価とその損益率・現在の株価とその損益率・取り上げられてから現在までの最安値・最高値ぐらいを列挙してみようと思います。


100%アップの可能性もある、9つのHOTなバイオ・ボロ株(2011年3月25日)
(http://investorplace.com/2011/03/biotech-penny-stocks-to-buy-rptp-raptor-ibio-aeterna-aezs-inhx-inhibitex/#.V1yjK6L5nII)

 

 

Raptor Pharmaceuticals Corp. (RPTP)
翌日: 3.37
1年: 6.76 (+100.59%)
現在: 5.40 (+60.24%)

最安-最高: 3.26('11年4月)-16.18('14年2月)


いきなり予想通り、本当に1年で100%アップを達成していて、たまげました。


その後一時は5倍程度の株価にまで膨れ上がっており、昨年中旬あたり以降で結構な暴落にあってしまったようですが、それでも5年経った現在でも当時の株価より60%も高値をつけています。

 

この会社自体は、希少・難治性の発達障害に対する薬を開発しているようです。

 

 

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PharmAthene, Inc. (PIP)
翌日: 3.11
1年: 1.77 (-43.09%)
現在: 2.16 (-30.55%)
最安-最高: 1.03
('12年11月)-3.92('11年5月)


この記事によると、当時3日で115%アップを叩き出し、勢いを感じさせる株だったようですが、こちらはRPTPとは違い残念な結果になっています。

 

アナリストによると2ドルから20ドルまでいく可能性のある株だ、と紹介されていましたが、悲しいかな低い方が当たっちゃいましたね。

 

 

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iBio, Inc. (IBIO)
翌日: 2.98
1年: 1.12 (-62.42%)
現在: 0.61 (-79.53%)
最安-最高: 0.29
('13年10月)-3.40('11年4月)


こちらもちょうどこのニュース記事が出された時に上り調子だった株のようですが、上に同じく散々です。

2014年10月あたりに一瞬来たか!?というピークが見られていますが、これは当時のエボラ騒ぎの混乱で一時的に上がっただけだったようです。

 

これは個人的な意見ですが、やっぱりキャッチーな名前の会社(いかにもiMac, iPodの真似)あるいはティッカーシンボルって、あんまり上手くいかないことが多いような気がします。

 

 

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Aeterna Zentaris Inc. (AEZS)
※2012年10月と2015年11月に株式併合が行われています(1:6と1:100)。
翌日: 1176 (600倍の併合を考慮すると、当時の株価は1.96ドル)
1年: 1284 (+9.18%)(ただし、この2, 3日後に、480ドルに暴落しています)
現在: 3.53 (-99.70%)
最安-最高: 2.67
('16年1月)-1452('11年5月)


典型的な、上場廃止を免れるために株式併合を繰り返す(NASDAQでは、株価1ドル未満の状況が長く続くと、小形株専用の市場区分・NasdqaCMへの移行勧告が行われ、なお基準に満たない状況が続くようだと最終的には上場廃止処分につながるため、企業はそれを避けるために、株式併合を行って見た目の株価を上げることが多いようです)、終わってる企業ですね。

 

残念ながらこれは今回の中で最大の失敗銘柄です。5年前のわずか300~400分の1の株価になってるっていうのもなかなかひどいですね…。

 

 

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Inhibitex Inc. (INHX)
2012年1月に、Bristol-Myers Squibb社によって買収済み。


開発中のC型肝炎の薬が受けたようです。…が、実はその後すぐ、2012年8月には、この薬の開発を打ち切ると発表されています(臨床試験で、心停止による死亡事故を出してしまったようです)。

しかし、Bristol-Myersは、2014年に同じC型肝炎薬・Daclatasvir/Asunaprevirの開発に成功(ただし、ヨーロッパと日本でのみ承認、アメリカでは承認断念)しているので、INHXの買収が功を奏したのかは分かりませんが、研究が実ってよかったですね。


(ただやはり、C型肝炎といえばGileadですね。あまりにも効きすぎて患者が激減してしまうのがネックとまで言われているSofosbuvirですが、日本にも昨年上陸して、よく売れているというニュースを見た記憶があります。)

 

いずれにせよこの買収で、INHX株主には、その時株価9.87ドルだった所を、1株あたり26ドルが支払われたそうです。


当時のチャート等は既に見られませんが、今回取り上げたこの記事によると、2011年3月末時点で、直近52週最高値の3.10ドルあたりで取引されていたようなので、わずか9か月程度で約8~9倍になったという感じのようですね。

 

これは大当たりです。

 

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Dynavax Technologies Corporation (DVAX)
翌日: 27.30
1年: 50.30 (+84.25%)
現在: 14.59 (-46.56%)
最安-最高: 10.80
('13年7月)-51.50('12年4月)


こちらは、現在の株価こそあまり冴えないものの、記事が出てから1-2年あたりで手仕舞いしておけば結構な利益が出せた形で、予想は当たっていたといって差し支えない感じですね。


記事によると、当時の最新の収支報告では、四半期収益率が302%も成長しており、間違いなく『買い』であるとされていました。

 

B型肝炎ワクチン他、幅広くワクチン開発を行っている会社だそうです。

 

 

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Zalicus Inc. (ZLCS)
2014年7月に、Epirus製薬 (EPRS) と併合したようです。


併合ニュースを見ても、『併合後、ZLCSホルダーが19%の株式を、EPRSホルダーが81%の株式を保有することになる』といった話のみで、具体的にどのように保有株式の調節が行われたのかがイマイチ分からなかったのですが、調べてみると、併合前日のZLCSの株価は1.18ドルで、EPRSとして新たに出発した併合日の株価は11.48、しかし会社併合日に1:10の株式併合も一緒に行われているので、株式併合前の株価にならすと1.148であり、持ち株の実質価値は併合の前後で一切変わらなかったようです。

 

 

見ての通りEPRSの株価はその後さっぱり冴えません。


今回のニュース記事では、鎮痛剤であるナトリウムチャネルモジュレーターのZ212が本年中にフェーズIに入ること、会社の抱える他のチャネルブロッカーもほぼ全て良好な結果でフェーズIIaを迎えており、これまでも多くのパートナーシップを締結してきたこと、鎮痛剤関連の市場は140億ドル規模と非常に巨大であること等、全ての因子が素晴らしく、2011年オススメ株10選の内、ZLCSは堂々のナンバー1だ、などと書かれているのですが、調べた限りこの記事当時の株価は2ドル程度、その後上記の併合まで特に爆上げを経験することもなくずっと1-2ドルを行ったり来たりだったようで、この銘柄は完全に肩透かしであったようです。


一押しされていたものが外れてしまっているのは、やや残念ですね。

 

 

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YM BioSciences Inc. (YMI)
2012年12月に、先ほど話に出てきたGileadに5.1億ドルで買収されています。

買収を報道していたニュース記事によると、その前日の終値より81%アップの、1株あたり2.95ドルで株の買付けが行われたようです(=1.63ドルだった株を、Gileadに2.95ドルで買ってもらえた、という形でしょうか)。
今回取り上げた記事には当時の具体的な株価は載っていませんでしたが、「2011年に入ってから10%アップ、直近6か月で58%アップ、1年で123%アップしていた」とあり、かなりイケイケな株だったようですね。


研究内容としては、自己免疫疾患の一種である骨髄線維症に対する薬CYT387を開発していたようです。フェーズI/IIまでは成功し、2013年にはフェーズIII試験まで終えたいと述べられているのですが、探してみてもその後の報告がどうも見つかりません。少なくともまだ治療薬として商品化はされていないようです。


しかし、この化合物はリン酸化酵素の阻害剤であり、シグナル伝達経路に関する研究用の試薬として、いくつかの化学薬品会社から販売されているようです。

…が、研究試薬と臨床用治療薬とでは市場の規模が違いますし、この買収は、GileadにとってはSofosbuvir程の成功ではなかったのかな、という気がします(Gileadは、Sofosbuvirの開発元・Pharmassetを、なんと110億ドル(1兆円ぐらい)で買収しています)。

 

製薬会社の買収も、ややバクチ的な要素があり難しいですね。

もっとも、買収された会社の株主にとっては、既に保有していた株がプレミアム付きで買収されて大きな利益をもらっているので、その後どうなろうが知ったこっちゃない、という感じかもしれませんが…!

 

 

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Opko Health, Inc. (OPK)
翌日: 3.76
1年: 4.73 (+25.80%)
現在: 9.30 (+147.34%)
最安-最高: 3.29
('11年6月)-17.78('15年5月)


こちらは、記事が出てからしばらくはダラダラとした値動きだったものの、2013年あたりからじわじわ来て、一時は記事の時点の5倍程度まで記録するぐらいに伸び、直近では最高値更新後からやや下がってる感じはするものの、今でもまだ大きく成長する余地が十分残されているんじゃないかと感じさせるような動き(完全に根拠のない個人的な主観ですが)になっていますね。


アメリカのみならずチリ、メキシコ、ヨーロッパなどでも幅広く事業展開をしているようです。

チラッと見た感じの印象としては、治療薬のみに限らず、迅速で正確な新しい診断装置の開発にも力を入れており、他の企業・研究所とのコラボレーションも盛んで、かなりアクティブな会社な印象です。

 

 

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…ということで、正直、見る前は「多分全部倒産してるんだろうなぁ~」などとナメていたんですが、意外や意外、少なくとも記事から1年で見たら、結構な勝率で、本当に100%以上アップしているものまでいたりして、中々のもんでした。

 

具体的には当たり5、外れ4といった感じで、10倍程度までいった大当たりを含め半分も予想を的中させているのは凄いのではないでしょうか。バクチ要素の大きいジャンルであるにもかかわらず、倒産した企業が一つもなかったのも素晴らしいと思います。

 

そうなると俄然最近の記事が気になるわけですが、少なくともこのニュースサイト (InvestorPlace.com) からは、最近バイオのボロ株特集は組まれていないようで、残念ながら今すぐ飛びつきたくなる記事はない感じでした(もっとも、あったとしても言うまでもなく勝率100%ではないので、結局リスキーな投資であることに変わりはないわけですが)。


(しかし、同じおじさんによる記事、7つの、あくびが出そうなほど退屈だけど、最高級格付け株 (http://investorplace.com/2016/06/7-rated-yawn-inducing-stocks/view-all/#.V1ztY6L5nII)がこないだの金曜に出ていたばかりで、これはこれで別のタイプで面白い記事かもしれません。
これも取り上げてみようかと思ったんですが、実際見てみたらなるほど確かに退屈そうな株が多かった感じなので、やめておきました。)


上にも書きましたが、結果が分かってから昔の予想を見直すというのは結構面白く、また実際自分が投資する上で何かの役にも立ちそうなので、また次の機会に、別の予想記事の復習をしてみようかと思っています。