先日の記事(2016/05/20 ダブルウィッチングデイとは…?…魔の日?魅惑的な日?)で、日本でいうSQ日にあたるDouble Witching DayやTriple Witching Day(以下TWD)について触れたんですが、果たして個別株取引にその影響はあるのかどうか、自分自身気になったのでちょっと調べてみました。

 

 

【対象銘柄】
米国市場の代表的な株価指数であるS&P500の、トップ10採用銘柄と、あとついでに弱小株の代表として自分の保有銘柄であるNYMX、それからせっかくなんでS&P500を連動対象とした有名なETFであるSPY、さらについでなので、日経平均株価指数^N225の、計13の銘柄を見てみることにしました。

 

01  AAPL (Apple Inc.)
02  GOOGL (Alphabet Inc.)
03  MSFT (Microsoft Corp.)
04  XOM (Exxon Mobil Corp.)
05  JNJ (Johnson & Johnson)
06  GE (General Electric Co.)
07  BERK-B (Berkshire Hathaway Inc.)
08  FB (Facebook Inc.)
09  AMZN (Amazon.com Inc.)
10  T (AT&T Inc.)

 

 

【対象日】
調べる日については、もちろんTWDである3, 6, 9, 12月の第3金曜日(祝日の場合は第3木曜日)と、それから比較対象は何がいいのかなと思ったんですが、同じ金曜日にすべきかとも思ったのですが、米国株オプションの満期は毎週金曜日であり、いわばこれも一種のSQに当たる気もしたため、全然関係の無い、第3金曜日から一番離れていそうな10日前の火曜日(第2火曜日の場合と、第1火曜日の場合があり)の2日を取り上げて比較してみることにしました。

 

※ちなみに日経平均は、株価指数であるため取引量(出来高)は存在しないと思っていたのですが、データを使わせてもらったYahoo Financeの過去データ (http://finance.yahoo.com/q/hp?s=^N225) にはなぜか取引量の値も存在したので、今回ついでに見てみることにしたわけなんですが、こちらは、言うまでもなく第2金曜日がSQであり、比較対象は第3金曜日にしました。
しかし、このデータで示されている取引量って何の値なんでしょうね…?今月は5/9, 10, 19, 23の4日間だけがなぜか0になっているんですが、イマイチ何の取引量を示しているのかわかりません。ただ日経の何かの取引量であることは間違いないと思うので、このデータを使ってみることにしました。

 

 

【対象年次】
年については、過去5年(2011-2016年)+2008年(リーマンショック)、2005年(平凡な年)、2003年(前年不況からの回復)、1995年(90年代半ばを代表して・この辺りからSP500の伸びが目立つ気がします)をピックアップしてみました。


ただし、歴史の浅い銘柄で'95年が存在しない、などといった場合には適宜適当な年を追加しています。

 

ピックアップした比較対象の日も、年次も、特にこれといった理由もなく、とにかく色々適当です。
正直統計処理すら怪しいのですが、まぁ傾向ぐらいは見えなくもないだろ、と思い、まとめてみた次第です。

 

 

【結果】
棒グラフがvolume(出来高)で左の軸、オレンジ色のがTWD(またはメジャーSQ)、青色のが比較対象の平凡な日です。


日経平均以外は、オレンジのバーの比較対象(=10日前の火曜日)は、すぐ左にある青いバーになります。

日経平均では、オレンジのバーの比較対象(=1週間後の金曜日)は、逆に未来の日なので、右の青いバーになります。

 

株価は右軸のローソク足グラフです。Yahoo Financeのデータでは、終値 (Close) のみ株式分割と配当分を調節済の値が存在するものの、始値 (Open), 高値 (High), 安値 (Low) の各値は株式分割を考慮していない値しかなかったので、ここでは全て「株式分割のみを調節した値」を用いました。

なので、終値も分割の調整しかしておらず、配当を出している企業の終値は、Yahooのデータの"Adj Close"とは異なっています(それほど大きく違わないので問題ないと思いますが)。

 

 


トップのアップルですが、最初の方は一見オレンジのバーが高くなっているのが目立つものの、真ん中辺りは差がないようにも見える……微妙だな…ということで、それぞれの取引量の平均、標準偏差を出して、あと有意差検定も行ってみました。

 

火: 1236万±798万
TWD: 1367万±735万
p値=0.484


…ということで、p値 > 0.05であり、『TWDと平日の取引量の間には、全く統計的に有意な違いがない』ということが判明しました。


ちなみに、それぞれの株価終値を比較したp値=0.97だったので、株価終値にも、TWDの影響は一切ないという感じですね。

 

 

 


株価が上がりすぎて取引量が小さくなってきているGoogleですが、何となくオレンジは高そうだけど、'05年6月みたいなノイズがあるしどうだろう、と思えますが…

 

火: 797万±932万
TWD: 941万±636万
p値=0.452

…といった計算結果で、案の定TWDは特別取引量が大きいわけでもなんでもない感じになりました。青いバーに至っては、恐らく'05年6月のノイズのせいで、平均値より標準偏差の方が大きいというワケ分からん感じになってますね。

 

実は順番としてはNYMXとSPYを最初に調べて、次いでアップル、Googleの順で調査したんですが、この4つは全て有意差がないという結果になったので、「あ、もうこれ違いないわ……やめよっかな」と思ったりもしたのですが……

 

 

 


…という話の展開なので明らかかもしれませんが、一見しただけで、ほとんどのオレンジグラフがすぐ左の青よりも高いですね。数値では…


火: 5386万±2403万
TWD: 9148万±3205万
p値=2.32 x 10-7

 

…という感じで、正直「えっ?いくら何でもそんなにp値って小さくなるもんかね?」と感じるレベルだったんですが、少なくとも計算上、統計的には、『マイクロソフトの取引量は、TWDの日にかなり上がる』ということは間違いないようです。


ちなみに株価終値を比較して得られたp値は0.74で、株価には有意な差が見られるわけではないようでした。

(もっとも、調べるなら終値の比較よりも値幅の方が重要かな、とも思ったんですが、見た感じそんなに違いはなさそうかな、という気もしますし、株価についてはあまり突っ込んでも意味はなさそうだと思ったので深入りせずにおきました。)

 

 


以下もうほとんど同じような話ばかりなので、解析結果を一気に載せていきます。

 

火: 1578万±924万
TWD: 2726万±1187万
p値=1.50 x 10-5

 

 



火: 905万±346万
TWD: 1514万±505万
p値=6.08 x 10-8

 

 

 


火: 3800万±2380万
TWD: 6466万±3570万
p値=3.22 x 10-4

 

 

 


火: 276万±207万
TWD: 556万±461万
p値=1.47 x 10-3

バークシャーは、クラスAの方はさすがに取引量が少なすぎるだろうと思いこちらを選択しました。

 

 

 


火: 4118万±1961万
TWD: 6315万±5173万
p値=0.123

 

 

 


火: 527万±277万
TWD: 664万±258万
p値=3.38 x 10-2

 

 

 


火: 2040万±1263万
TWD: 3158万±1900万
p値=3.92 x 10-3

 

 

 


火: 70073±95394
TWD: 101276±103576
p値=0.186

 

 

 


火: 1.239億±0.9917億
TWD: 1.540億±1.100億
p値=0.220

 

 

 


3金:14.37万±5.029万
MSQ: 19.75万±5.309万
p値=3.69 x 10-5

 

 

 

ちなみに、株価終値を比較して、TWDと平日とで有意な差が見られる銘柄はありませんでした。
(株価の違いは深追いしないといったものの、やはりオレンジのバーの日は何となく値幅も大きい気がしますね。もっとも、取引量が多いのだから値幅も大きくなるのは至極当たり前の話でしかないのかもしれませんが。)

 

 


【まとめ】
出来高を比較して得られたp値が小さい順に並べると…

 

[TWD(SQ日)に取引量が大きくなる!]
JNJ(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
MSFT(マイクロソフト)
XOM(エクソンモービル)
^N225(日経平均株価)
GE(GE)
BRK-B(バークシャー・ハサウェイ)
T(AT&T)
AMZN(アマゾン)

 

[TWDでも影響はない]
FB(フェイスブック)
NYMX(ナイモックス製薬)
SPY(S&P 500 ETF)
AAPL(アップル)
GOOGL(グーグル)

 

 

…という感じでした。何となく、近年目覚しく台頭した会社はTWDの影響はほとんどなく、割と歴史が長そうな会社はTWDに取引量が俄然上がる傾向にある、という結論になったのかな、と個人的には思います(個人的にはAMZNのみが例外でしょうか。もっとも有意水準1%で取るなら、アマゾンも『影響がない』範疇にはなりますが)。

 


…という感じなのですが、正直「…で?っていう」で終わりになってしまうのが悲しい所です。TWDに取引量が増えるなら、じゃあどうすればいいのか…うーん、いっぱい取引されるから、見てて楽しいですよね、って感じでしょうか。


一応、デイトレをする方には、取引量は結構重要な因子になるかと思うので、意味のある情報かもしれないですね。しかし、米国株でデイトレをしている人なんてまずいないと思うので、どうでもいい情報に過ぎなかったかもしれませんが…。

 

どうも統計処理の方法等に不安が残る解析でしたが、一応意味のありそうな違いは見られたのでよかったかな、と自分の中では結論付けて終わろうかと思います。

次のTWDにちょっと意識して見てみると面白いかもしれないですね。