SNSや日常の会話の中で、
「この人とは分かり合えない」と感じる瞬間は誰にでもあります。
対立や分断という言葉が社会でよく語られる今、
違いに出会ったときにどう向き合うかは、
ますます大切なテーマになっていると感じます。
けれど、その違いにどう向き合うかで、
私たちの世界は狭くも広くもなるのです。
分断は、あなたの隣にもある
近年、世界的に「分断」という言葉を
よく耳にするようになりました。
アメリカでは政治的な対立が深まり、
日本でも選挙の結果が「社会の分裂」を
象徴するように報じられることがあります。
けれど、こうした分断は決して遠い国や
政治の話だけではありません。
私たちの日常にも、小さな分断の芽は潜んでいます。
たとえば、SNSでのやりとり。
違う意見に出会ったとき、
つい「わかり合えない人」と感じて距離を取ってしまう。
あるいは、職場や家庭でも
「なぜこんなことも理解してくれないのだろう」と苛立つ。
こうした積み重ねが、
人と人との間に見えない線を引いてしまいます。
働き方を変えて知った「多様性」の面白さ
介護職からフリーランスへと働き方を大きく変えたことで、
私はまったく新しい人たちと出会うようになりました。
介護の現場では、高齢者や障がいのある方、
そのご家族、関係職種の人たちと深く関わってきました。
そこで求められるのは、目の前の人に寄り添い、
その人にとって最適なサポートを一緒に探すこと。
人との関わりの密度が高く、
日々の対話や調整が欠かせない仕事でした。
一方で、フリーランスとして
イラストやデザインに関わる仕事を始めてからは、
これまで全く接点のなかったビジネス分野の方々と
共同で仕事をする機会が増えました。
介護現場で大切にしていた「人を支える」という姿勢は同じでも、
飛び交う言葉や求められる視点はまるで違います。
最初は戸惑うこともありましたが、
違いに触れるたびに、新しいことを知れる楽しさがありました。
自分の世界が少しずつ広がっていく感覚は、
働き方を変えたからこそ得られた大きな学びです。
違いを「優劣」で判断したとき、分断は始まる
大切なのは、違いそのものが分断を生むのではない、ということです。
人はそれぞれ異なる経験や背景を持って生きており、
意見が食い違うのは自然なことです。
分断が生まれるのは、その違いを怖れたり、
「正しい・間違っている」「上・下」といった
優劣をつけようとする時です。
相手を否定し、自分を守ろうとした瞬間に、
線が引かれてしまいます。
一方で、「なぜその人はそう考えるのか」と
一歩踏み込んで考えることができれば、
違いはむしろ自分を広げる材料になります。
分断を避けるのではなく、
違いとどう向き合うかが大事なのだと思うのです。
「アドバイス」する関係から、「一緒に考える」関係へ
分断を生まないために大切なのは、
関係性の持ち方です。
ラクアカでは最初に「わたしたちはアドバイスしたりされたりしない、
フラットな関係です」とお伝えしています。
「アドバイスしてあげる」「導いてあげる」という上下の感覚ではなく、
「対等に向き合い、一緒に考えてみる」 姿勢。
そうすることで、人は安心して
自分の意見や気持ちを出すことができます。
違いを優劣でジャッジするのではなく、
「そういう考え方もある」と受け止める。
このシンプルな姿勢が、
分断を越えて対話を続けるための小さな実践になるのだと思います。
今日からできる小さな実践
分断を避ける最初の一歩は、
相手を理解しようとすることではなく、
自分の反応に気づくことです。
たとえば、SNSで真逆の意見に出会ったとき。
すぐに「この人とは合わない」と切り捨てるのではなく、
まずは「自分は今どう感じたのか」を観察してみるのです。
「イラッとしたのはなぜだろう」
「不安になったのはどこから来ているんだろう」
そんなふうに立ち止まって、
自分の心の動きを丁寧に見つめることが、
違いと向き合う第一歩になります。
相手ではなく、自分の内側に目を向けるだけで、
世界の見え方が少しずつ変わっていきます。
まとめ
分断のない社会をつくるために必要なのは、
特別なリーダーや制度の改革だけではありません。
日常で出会う「違い」に対して、自分の反応をどう扱うか。
その小さな積み重ねが、分断を乗り越える力になります。
そしてその力は、誰か特別な人だけでなく、
私たち一人ひとりの中にすでに備わっているのだと思います。